運動を憎む私とリングフィットアドベンチャー
運動が死ぬほど嫌いなのですが、うっかり気が向いて任天堂スイッチの「リングフィットアドベンチャー」を買いました。
そしてまんまとハマりました。
■リングフィットアドベンチャーなら運動してやってもいい
運動が死ぬほど嫌いで、むしろ憎んですらいたレベルの私でも、リングフィットアドベンチャーならやろうと思える。
あの憎しみは嘘だったの。
いや、そんなはずない。
だって毎回体育の時間は嫌な気持ちだったし、体育の成績は1か2しかもらえないし、
昔からずっと太ってる。
でもリングフィットアドベンチャーによって「肩こりが改善する」という成果が伴いました。
今私は
「運動っていいものなんだ」
「筋トレもやると結果が出たりするんだ」
というポジティブな気持ちでいっぱい。
今までの人生でこんなに運動に前向きになれたのは初めてと言っても過言ではありません。それもこれもリングフィットアドベンチャーがめちゃくちゃいいゲームだからです。
ところで、私はWebマーケターとWebディレクターとWebデザイナーを兼務して仕事をしています。()
普段の仕事の9割が
・サイト改善に伴う分析
・分析を元にサイトの改善企画
・企画の実行(サイトの制作ディレクション&デザイン制作)
で、この3つをやるときに必要なのが
ユーザーの気持ちの分析だったりします。
このユーザーの気持ちの分析が死ぬほど難しいです。
それが全てではないでしょうけど、かなり大事です。この業界のだいたいの人が大事って言います。
毎日のように
「なんでこの単語で検索したんだろう」
「この人が本当に困ってることってなんだろう」
「困ってる人がこのサイトにきたらどう思うんだろう」
という課題にぶち当たりまくります。
例えば、「脱毛 新宿」
で検索した人は何を求めてるの?
みたいなことを考えます。
すると大抵、「そんなの新宿で脱毛したいに決まってんだろ!」という答えしか出せなくて泣けてきます。
そんな仕事をしつつ、
私もまた一人の消費者で、毎日何かの意思決定をして商品を買っています。
■なぜリングフィットアドベンチャーは続けられるのか
私がリングフィットアドベンチャーを続けられるのはなんでなんでしょう。
ちょっと考えてみると以下のような点が思い当たりました。
・とにかく褒めてくれる
→ 時々わざとらしいが、嫌味には感じない
・「無理しないでね!」「大丈夫?」「もう休んだら?」と1動作ごとに声かけがある
→ いつでもやめていいんだ、と思える上、あとちょっとならいけそうと感じることができる。
・動作がわかりやすい
→ 常にお手本が表示され、4歳の娘でも理解できる。
→ 子供達と一緒に楽しめる
→筋トレ用語にイラつかない
・ストーリーばかりでなく、息抜きのミニゲームがある。
→ ミニゲームも軽い筋トレになっている
・運動負荷を上げたり下げたりでき、負荷を上げなくてもやるだけで褒めてもらえる。
・「身振りさん」が人間っぽい
→ ゲーム中に「身振りさん」というお手本のキャラクターが出てくるのですが、ポーズや方法のお手本のキャラクターなのに、時々「足をかいたり」「感情的な動作」をすることがあり、「お手本」と「人間らしさ」のバランスがめちゃくちゃちょうどいいです。
以上の点から、
「完璧を求めない」「強制しない」
がとにかく徹底されており、安心してプレイできます。
そう考えると、この真逆のことが求められることにより運動が大嫌いになったのではと考えることもできました。
例えば
・何らかのチャンスで確実に点を入れなければならない
・1番をとらなければならない
・全員が同じ順番で同じ動きをしなくてはならない
考えただけで嫌な気持ち…
■そもそも、なぜリングフィットアドベンチャーを買ったのか
リングフィットアドベンチャーは体験すれば確実にハマるゲームと断定できるのですが、「そもそもプレイしなきゃその良さはわからない」はずです。
じゃあなんで買ったの?というところですが、これは完全に「タイミング」でした。
タイミングといっても、『そもそも筋トレ始めようと思っていたのよね』という意味ではありません。
そこには考えに考えられ、巧妙に張り巡らされた戦略があり、私はその戦略に完全にハマる形で購入したからです。
「欲しい!」と思った瞬間、「ちくしょう!やられた!」と思いました。
2019年のクリスマス商戦。
各社がこぞって「クリスマスプレゼントにはこれが一番だよ!」という商品を打って出ます。
そんな浮かれた季節なのに、私のように運動嫌いの人間はクリスマスからお正月にかけて
自律神経が乱れに乱れ、随時体調が悪く、
かつそんな自分が嫌で自己嫌悪に陥ります。
しかも寒いし、年末年始の出費でお金もないので無駄なお出かけをしたくありません。
この時期の外出はインフルエンザのリスクすらあります。
このゲームを買うことで
「外出しない口実」
「子供も楽しい(家族全員で楽しめる)」
「ゲームの購入コスト以上の費用がかからない」
「もしかしたら筋トレ効果があるかもしれない」
という色々なメリットを一度に叶えることができるのです。
ただ、もしこれだけだったなら『欲しいなぁ』と思っただけで購入には至りませんでした。
なぜなら、私は5000円以上のものを買うとき、大抵主人の賛同を得たいからです。(強制されていませんが、何となく軽い同意がほしい気持ちです。)
最初にリングフィットアドベンチャーの話をしたとき、主人は「どうせ続かないんでしょ」の一言でした。
主人は私のことを非常に深く理解しており、
「運動系をやらせると最悪」ということも十分承知しているため、私の提案を却下したのでした。
しかし、ここもまた任天堂は先手を売っていたのです。
購入前、運動嫌いの私が「自分が続けられるかどうか」を考えないはずがありません。
当然のように
・自分が続けられた場合
・自分が続けられない場合
両方の状況を考えていました。
・自分が続けられた場合
→ 筋トレ効果が多少上がって嬉しいかも
・自分が続けられない場合
→ 続けられなくてもなんらかのメリットがあればよし
を考えます。
この場合なら、仮に私が続けられなくても『息子やパパのお気に入りになるなら許容範囲』『お正月の間役に立ってくれればいい』と判断しました。
これにより、私は『主人を説得する必要性』に駆られました。
(ほら、もうやばい。だって、家族連れの心理がわかってないとこの後の戦略は打てないんです。)
私が取った行動は極めて簡単でした。
主人に「先行発売された海外のレビューがめちゃくちゃいい」と伝えただけでした。
私は前情報として、
「海外の筋トレガチ勢でも好評で、
プロテインを用意してやる人いっぱいおるらしい」という『海外のレビュー』をインプットしていたのです。
主人は(もしかしたら30代の人の多くが)時々ジムに行きます。そして、一定期間ジムに通って、目標にちょっと近づいた程度のところで通うのを辞めます。(めんどくさい上、少し成果が出たと感じたから)
つまり、主人は筋トレガチ勢に憧れがあるため、『筋トレガチ勢も認める』という一言で
「それなら試してやろう」と、まんまと任天堂の戦略に転がされたのです。
ここが我が家の『閾値』でした。
『CMがガッキーだから』は我が家にとってアドバンテージになりません。(ガッキーは好き)
『インフルエンサーが買ってるから』は特に重視しませんでした。
『品薄だから』は購入してから気づきました。
普段、マーケターが考えてそうな派手な施策としての
・ブランド(今回はガッキー)
・インフルエンサー(権威?ある誰かの紹介)
・希少性(今回なら品薄)
はいずれも私たちが購入の閾値を越えるのに一切関与していないのです。私たちはもっと基礎的で目立たないアプローチにより閾値を越えました。(もちろんそれらも数あるマーケティングの1つですが。)
■リングフィットアドベンチャーを購入して得たもの
かくして我が家は、
2020年の正月中、自転車で行ける範囲の外出しかせず、ほとんど毎日リングフィットアドベンチャーを起動して、私は体調を崩さず、家族は出費も抑えることができました。
8歳の息子は家族でゲームができて嬉しい。
4歳の娘は兄や私たちと同じことが出来て嬉しい。
お正月が過ぎてからも土日に起動して私や子供たちで遊んでいます。
これは明らかにユーザー(私)が想定していた以上の価値提供だとおもいました。
●リングフィットアドベンチャーから学べること
・ターゲットユーザーそのものでなく、その周辺の家族との関係まで巻き込んだペルソナ設定と、そこへのアプローチが秀逸
・そもそも運動しない人はなぜしないの?というところに視点(なぜ憎むに至ったか)をもち、プロダクトに完全な形で反映する
・販売するタイミングを精査している(GW前や夏休み前だったら絶対買ってない=他のレジャーがいくらでもある)→単なるクリスマス商戦ではない機会活用をした
他にもたくさゆありますが、リングフィットアドベンチャーはゲームそのものも最高でありつつ、考えれば考えるほどユーザーの心理を捉えることに全力を出しているな、と感じます。
ちなみに、もしもこの記事を読んでリングフィットアドベンチャーを買おうと思った方は分厚いヨガマットを一緒に購入することをオススメします。
ロールできる薄いやつではなく、折り畳み式の五センチくらい厚さのあるやつです。
是非一緒に筋肉痛を楽しみにしましょう(°▽°)
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