布施の実践(実験?)

布施(dāna)とは、「与えること」。英語ではgift、charityなどの意味になる。

与えるものは食事、衣服、住居、医薬品、金銭などの有体物に限らず、知識、労働力(ボランティア含む)、良い雰囲気、感謝の言葉などの無体物も含まれる。ただし、対価や見返りを得る目的で行う行為は布施にはならないと考えた方が分かりやすい。

とにかく、世間一般の常識では、「ただ与える」ことは、とても不合理に見られる。損な事として扱われる。

しかし、ではどうして仏陀は布施を重視するのだろう。それを確かめるためには、何はともあれ実践(実験)してみるのがよい。案ずるより産むが易しというわけで・・・

上記の通り、対価や見返りを得る目的無く、様々な「与えること」が可能だ。しかし、何らかの収入があったら、その収入を得るのに忙しいのであったら、やはり金銭を与えるのが最もやりやすい。例えば、寄付することで実現できる。

というわけで、実験してみる。どんなときに、どのくらいやるのが良いだろうか。自分はこんな時にやってみたというのをまとめてみる。

どんなときに?

・自分の財産に不安を感じたら、金銭を与える(以下同様)
・自分の将来の収入に不安を感じたら
・仕事でうまくできるか不安になったとき
・他人の収入の額を聞いて羨ましいor嫉妬したとき
・世間の価値観が嫌だと感じられるとき
・腹が立ったとき
・困っている人を無視してしまったと感じたとき(なお、困っている人を直接助けることは当然布施になる)
・災害があったとき
・戦争があったとき
・募金箱を見かけて、財布に100円玉、500円玉または1000円紙幣があって、寄付したくなったとき
・寄付を求めるメールマガジンを受信したとき
・給料日(ボーナス支給日)
・臨時収入(中古の本の売却など)があったとき
・自分の収入の多さに不安を感じたとき
・自分にこんなにたくさんの金銭は不要だと感じたとき
・人生が面倒だと感じられたとき

どのくらい?

・手取り収入の5%~10%(定期的になるので便利)
・臨時収入の10~100%(こちらはかなり任意)
・財布にある100円玉、500円玉、1000円紙幣を都度

効果

自分で感じられた分だけまとめる
・自分の財産への不安が無くなる。むしろ余っている気がしてくる。
・将来の不安がなくなる。なぜか通帳の残高が減らなくなる。(なお、本当に残高が無くならないか、すなわち「功徳」があるか否かについては、引き続き「実験中」)
・気前が良くなる。食事をおごること、プレゼントすることにためらいがなくなる。ケチ(macchariya)に基づく思考、行動の制限がなくなる。
・怒りがおさまる、不眠がなくなる
・銀行等の手数料に腹が立たなくなる。手数料をケチるために、手続きを後回しにしなくなる。
・ちょっと安く買うだけのために別の店に行ったり、調べたりするなどの苦労しなくなる。
・他人の収入を羨む/妬むことがなくなる。「自分はこれで十分」と思いこむ必要はなくなる。
・幸福感を得られることがある(ゲームに5時間熱中するよりも、たった15分でできる口座振込の方が楽しい)。そして幸福感が持続する(音楽を聞いて感じられる喜びの感覚のうち最高クラスのものが1時間くらい続くイメージ)。
・金銭の管理から解放される
・承認欲から解放される
・仕事の不安から解放される(自分が良い仕事をしていると思える)
・よく分からないモヤモヤした不満から解放される(楽しみ、娯楽を追い求めることや、「最高の」「究極の」体験を求めることは不要になる。適当に楽しければOKになる。)
・仕事に迷いがなくなる(儲けることではなく、人の役に立つことをしようとするから、どんな仕事をすべきか明確に分かるようになる)
・稼ぐ、儲かることへの罪悪感がなくなる(さらに与えればよいのだから)。その結果、収入が増えることがある。
・金持ち、権力者、成功者の苦労を見たり聞いたりする度に、自分がそこから解放される術を知っているという安心感が得られる(金銭だけでなく、自分のネームバリューの管理からも解放される)
・仏典を理解しやすくなる
・法話を聞いても、耳が痛くなりにくくなる

蛇足

「税金」、「健康保険」、「年金」等は、収入に応じて支払う互助関係になっている。しかし、これらで取られた分は、元々自分の自由な財産ではなく、収入ではない。断ることもできない。主体的ではないため、気分良くならない。そのため、「税金を払っているから、善行為をしている」とまでは言えないように思える。

参考

心のプログラムを書き換える「与える」生き方|スマナサーラ長老の初期仏教新春講演会(15 Jan 2023 日暮里サニーホール) (youtube.com)

『ブッダの実践心理学』(アルボムッレ・スマナサーラ)第七巻 施捨随念 pp. 87-88

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