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地味すぎるがゆえに忘れがちな投資において最も大事な視点

元証券マンの私が、営業する側から見てもこれは買いたくないし勧めたくないなぁという商品がいくつもありました。例えば、
・あらゆる種類の変額年金
・南アランド・トルコリラ債
・アクティブ株式投信
理由は「コストがクソ高い」からです。証券会社や銀行で打っている変額年金の類は、多分1割くらいコストです。販売側である証券会社に5%とかが手数料として支払われているんで、多分同じくらい保険会社側でも取っているはず。つまり、元本9割から運用スタートしているようなもんです。変額年金がターゲットとしている層は、運用に積極的ではないもしくは知識がない人です。そういう人には投資信託とか株といって近づくよりも保険といって近づいたほうがお財布を開けてくれます。よくできています。ただし、保険の顔と運用の顔をどちらももっているとはいっても、結局どちらも中途半端。そもそも9割から始まって、引き出しも解約もできない期間があります。換金したくてもできないリスクを流動性リスクといいますが、個人的にはこれは一番避けるべきリスクだと思います。9割スタートで最初何年も解約できない、もしどうしても解約したいならかなり損をします。そういうものはやめておいたほうがいいし、同じリスクを取るなら流動性もあってコストももっと低いものがいくらでもある。そのなかであえて変額年金という商品を買う理由は一つもないと思います。

南アランドとかトルコリラ債も流行しました。その理由はたった一つで金利が高いからです。金利が高いと、証券会社は債券の価格で利益を抜きやすいですし、抜いてもまだ高金利を見せられる。一時期は8%とか10%とかあったような気がします。まあそれはいいんですが、為替のレートを抜かれすぎて取り戻せません。片道で5%、往復で10%くらい抜かれます。2年とか3年ものの債券が多かったので、1年でトントン、2年でやっとかな。満期になった時に(厳密には満期ちょい前に売却するんですけど)為替レートが負けてたら円に変えずにまだトルコリラで持ちたいとおもうので、また違う債券を外貨のまま買うことになるので、証券会社からみると大変に収益を作りやすい商品なわけです。これも、流動性とコストという観点ではナシです。

最後にアクティブ投信の話。投資信託という仕組みそのものに善悪があるわけではないのですが、投資信託はどうしても運営上のコストがかかります。コストには2種類あります。
・投資信託の運営上どうしても必要なコスト
・ファンドマネージャーが頑張るぶんのチップ
そして世の中には2種類の投資信託があります。
パッシブ運用:日経平均などのインデックスを再現するように機械的にポートフォリオを維持する運用。べつに頑張らない。最低限の運用コストだけかかる。
アクティブ運用:ファンドマネージャが、ベンチマークよりも利益を出します(を目指します)ので、そのかわり運用資産の○%をいただきますという運用方針。

ベンチマークというのは日経平均であったりとか、SP500とかの株価指数に対してということです。つまり、機械的に計算している平均株価よりもいい銘柄を選ぶことで、日経平均株価を買うよりも儲かりますというんですね。そのかわり、年間で2%とか3%の信託報酬が運用資産総額から引かれていくのです。ここで問われるのは、2%とか3%っていうのは結構な金額ですよということです。いま金利は0ですよね。もしくはマイナス。それなのに2%とか3%とかのハンデを背負って、日経平均に勝つことを目指すわけです。日経平均より最低3%上回ってやっとトントンというところからスタートなわけです。これ、なかなか勝てないですよ。実際に、アクティブファンドを追跡調査した結果では6割から7割のアクティブファンドがベンチマークに負けているとのことです。そりゃそうですよね。

もちろん優秀なファンドマネージャーがいてベンチマークに勝っている実績がある人もいるのは事実ですが、問題は投資者からみて高いコストを払ってまでそのリスクを取りに行く経済合理性があんまりないんじゃないのかなぁということです。資産運用のほとんどはアセットクラスの選択—ざっくりどの資産にどの割合で投資するか―が大事なので、同一アセットのなかでの銘柄選択についてはコストをかけてベンチマークを上回るわずかな可能性に欠けるよりは、素直にローコストなパッシブ運用だけにしとけばいいじゃないと思うのです。

投資において見るべきものは結果だけです。いくら儲かったか、損をしたのか。カスタマーエクスペリエンスなど、極めてどうでもいいのです。結果だけを見る必要があります。その点において、コストを下げるということは一番確実にあなたの資産の勝率を上げてくれます。コストを掛けたからといってその分勝率が良くなるわけではないのです。営業担当の説明が心地よくなったっり、きれいな運用レポートなどが届くようになったりするかもしれませんが、勝率は上がりません。むしろ下がります。コストを下げるといっても、別に値切ったり交渉する必要はありません。もともとコストの低いものを選ぶだけです。それをコストの安いネット証券で買うだけです。

投資、資産運用についての個人的な意見にすぎませんが、少しでも参考になれば幸いです。投資についての意思決定は自分でやる、理解したものだけをやる、最小のコストでやる。それだけでだいぶ良くなる気がします。



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