【アークナイツ】『ミヅキと紺碧の樹』考察—「惑星改造計画」と旧人類について
統合戦略#3『ミヅキと紺碧の樹』(以下、「IS3」という。)のEND04では「惑星改造計画」なる単語が登場した。
この単語は、スカジがイシャームラとして覚醒し、シーボーンがテラの陸地を征服、人類が衰亡の一途を辿るなかで、シーボーンによってテラの緑化、気候の安定、源石及び天災の消滅が起こり、結果としてテラが楽園へと作り変えられたという文脈のなかで登場する。
本記事はこの「惑星改造計画」について現時点(2024年2月21日公開)で可能な考察を行うことを目的とする。
END04の確認
まず改めて「惑星改造計画」という単語がいかなる文脈で登場したのかを振り返るため、END04の内容を確認する。
IS3のENDINGは01~04まであるが、END02以降は全てスカジがイシャームラ(=「腐食された心」)として覚醒した後の世界を描くIFストーリーで構成されている。END04もIFの世界線であり、イシャームラが覚醒した世界で海の怪物がテラの大地を侵略した世界が描かれている。
END03はイシャームラの覚醒から海の怪物による侵略が始まるまでに、ミヅキとファーストボーンである「蔓延の枝」が融合してイシャームラを退け、もう一体のファーストボーン「始源の命脈」と融合して一時的に海の脅威から人類の延命を可能にした世界線を描いている。そのため、END03では海の怪物によるテラ国家の崩壊等は発生しておらず、人類が滅亡の危機に瀕しているという状況も発生していないが、海の怪物による脅威はなお存続している。
これに対し、END04ではミヅキが何千年もの期間をかけて「蔓延の枝」と同化し、自己を大群の先導者であるファーストボーン(=「イズミック、生態の源」、以下ファーストボーンとしてのミヅキを「イズミック」という。)へと進化させ、大群を率いてテラから宇宙へと飛び立っていった世界線が描かれている。そのためEND04ではイズミックにより大群がテラの外に移動するまでに、テラの国家は崩壊し、人類はケルシーが設立した都市以外では存在できない状況に追いやられ、滅亡の危機に瀕するまでに追いやられたが、海の怪物による脅威は根絶されたこととなる。
いわば対処療法的な結末のEND03に対し、END04は原因療法的な結末がもたらされることとなった。
上述のようにEND04においては、海の怪物による侵略の開始からイズミックが大群を率いて空へと旅立つまでの間には、何千年もの時が流れたとされている。
この何千年の期間に海の怪物は人類の数は相当に減らされ、人類は滅亡の危機へと追いやられることとなった。このような数千年というスパンをかけてシーボーンの脅威に対抗する計画はドクターが立案したものであり、それは将来的な種族全体の存続のため、現在から何千年もの間に生じる多数の人々の犠牲に目を瞑るというものであった。
このドクターの選択は特定個人の生命の価値を種族全体の存続という価値との関係で下位に置くものであり、皮肉にも海の怪物と同じように、人類という種の「存続」が至上命題とされている。
海の怪物による大地の変革
大地の変革
イシャームラの覚醒からイズミックに導かれて宇宙へと至るまで、海の怪物はテラの大地を埋め尽くすとともにその大地を作り変えたが、人類社会の崩壊以外に海の怪物による変革で大きなものが二つ存在する。源石の消滅と荒野の緑化である。
源石の消滅は天災の消滅をも意味するところ、源石の消滅はシーボーンが源石に適応し、これを食料としたことによるものとされている。海の怪物の適応能力はこれまでのイベントでも示唆されてきたことであり、源石への適応もあり得るとされていたため、これが現実化したということになる。
また荒野の緑化により自然環境が豊かとなったのに加え、END04の世界線における食物は元来あったものがシーボーンにより作り変えられたものだということも明かされている。
荒野の緑化については海の怪物が陸地に上がり荒野へと侵略を進めるなかで、おおよそ海とは似ても似つかない環境である荒野を、海の怪物にとって住みやすい環境に変化させた結果だと推察できる。
源石の消滅や荒野を緑化させるといった海の怪物の環境改変能力としてこれまでに登場したものには「溟痕」と「喰塵」が存在する。いずれも海の怪物の一形態であり、「始源の命脈」が海の微生物の集合体であることから、これと同様のものと解される。
溟痕も喰塵も陸地にまで海を拡張するという役割が強く、テラの大地を人類よりも海の怪物にとっての楽園と変える方向に作用している。このような方向での改変がより強く進んだ世界線がミヅキの追憶映写で描かれており、そこではおおよそテラの大地は人間にとって生存不可能なレベルにまで改変がされることとなった。
END04の世界線では、これら海の怪物による環境変化が人間にとって有益な方向で行われ、結果としてテラは先民らにとって楽園となったとされている。END04ではミヅキが「ファーストボーン」となり海の怪物を導く存在となっているため、ミヅキの意思により人類存続のためという方向での改変が行われたものと思われる。
以下ではこのような大地の変革について、「ファーストボーン」の権能とその目的との関連から見ていくこととする。
「ファーストボーン」の権能と役割
海の怪物は「ファーストボーン」を最高位に置き、シーボーン、恐魚、幼体の発達段階に分けられる。
ファーストボーンは全ての海の怪物の始まりであり、イベント内で「アレ」や海神として表記されてきたものである。イズミックを除いたファーストボーンは四体存在している。「始源の命脈」「蔓延の枝」「腐食された心」「不溶の氷山」である。
「始源の命脈」が存続を象徴するように、四体のファーストボーンにはそれぞれに以下の権能が与えられている。
腐食された心:「移住」 - 領土の開拓と資源の略奪
蔓延の枝:「成長」 - 養分の提供と資源の生産
始源の命脈:「存続」 - 養分の収集と資源の分配
不溶の氷山:「繁殖」 - 効率的な繁殖と資源の消費
またそれぞれの権能は以下のように大群の呼び声2つずつと対応関係にある。
移住:探索と紛争
成長:徒長と適応
存続:改造と栄枯
繁殖:給養と衆我
これらの対応関係についての詳細は先行して考察された記事が存在するためそちらを参照されたい。
これら四つの権能は「プロジェクト:存続」と記載されているように、何かしらの計画の内容であることが推測できるが、この点については後述する。この章でより重要なのはそれぞれに割り当てられた目標であり、「資源」というキーワードで繋がる目標を辿れば略奪、生産、分配、消費のサイクルを成すこととなり、他方の目標をみれば開拓、収集、提供、繁殖となる。
これらの要素に着目してみると、海の怪物による行動がこれらの指針に沿ったものであることが分かる。
まず、「移住」を司るファーストボーンの「腐食された心(イシャームラ)」による大地への侵略は、分かりやすく領土の開拓と資源の略奪であり、それは海の怪物による大地の探索と陸地の種族との紛争を意味する。
また「成長」を司る「蔓延の枝」は死してなお本能に従い生長しながらシーボーンの幼体たちの餌となり、海の怪物を育む役割を担っている。これは自己を資源としたものとみれば、養分の提供と資源の生産に当たることが分かる。同時に「蔓延の枝」が意識を失いながらも枝を伸ばし続けていること、また源石を食料としたのと同じように、マグマに適応しこれを食料としていることはそれぞれ徒長と適応に当たる。
「存続」を司る「始源の命脈」はイベリアを襲った『大いなる静謐』の元凶であるが、これは海の微生物の集合体であり、海そのものである。「始源の命脈」が他のファーストボーンを全て呑み込んだ世界線において、それはあらゆる生命を生みの怪物の資源へと変換し、その包容と管理を行い、結果としてテラをシーボーンの理想郷へと改造した。これらは養分の収集と資源の分配に当たり、そのための改造と結果としての栄枯があることが見て取れる。
「繁殖」を司る「不溶の氷山」は何も情報が明かされていないため割愛するが、これまで見てきたように、ファーストボーンによる行動は暴走状態にあるとはいえ元々定められたプロジェクト目標に沿ったものといえる。こうした暴走状態が抑えられたのがEND04の世界線であり、暴走状態が解消されなかったのが追憶映写の「幼年期の終わり」の世界線であろう。
以下ではファーストボーンを筆頭とした海の怪物を用いて行われるはずだった「惑星改造計画」について、旧人類との関係を整理するとともに、本来何を目的としていたのかについて少しばかりの妄想を行いたいと思う。
「惑星改造計画」と旧人類について
旧人類との関わり
海の怪物は本来「惑星改造計画」として旧人類が生み出したものであることはいくつかの情報から推察されるため、まずはそれらの情報を整理することとする。
まず直接的に「惑星改造計画」という単語は先述のように、イズミックが海の怪物を率いて宇宙へと旅立ったこと、その結果としてテラの大地が人類にとっての楽園となった文脈で登場する。そのため、ここにいう「惑星改造計画」が海の怪物を示すことは明らかである。
「惑星改造計画」を海の怪物と同視した場合に、IS3で登場したいくつかの海の怪物に関連するものが「ドクター」との関係を示唆していることに、旧人類との繋がりをみることができる。
まず先述したように「ファーストボーン」の権能と目標を示した機械は「存続」や「移住」といったものをプロジェクトの名称として示した。加えてそれは機械を作動させたものを関係者と呼んでいる。
この機械は別の場所では「未知の機械」と呼称され、操作方法を知っているものはいなかったことが示唆されている。そのためここでは「ドクター」のみがこれを操作できることが分かる。
またEND03において「蔓延の枝」がある実験室は顔認証システムにより「ドクター」の顔、正確にはその特徴を認識したことで封印を解除するに至った。「ドクター」の顔ではなく顔の特徴という文言から、「ドクター」個人ではなく旧人類の顔の特徴を実験室の封印を解除する鍵としている可能性が考えられる。
またEND03に至るために必要な「紺碧の心」、END04に至るための「紺碧の回想」と「紺碧の樹」のように、IS3においてシーボーンの核心に迫るENDへの到達には「紺碧」と名の付く秘宝を手に入れることが必要となる。この「紺碧」という言葉に「ドクター」は親近感を覚えていることも明かされている。
またイベント『孤星』において、「ドクター」と同じ旧人類であるトレバー・フリストンの人格を映した「保存者」は海の怪物について「暴走した」と述べている。これは正常な状態を知らなければ到達できない発想であり、海の怪物が旧人類による創造物であることの根拠となり得る。
これらの情報から海の怪物、もとい「惑星改造計画」が旧人類による計画であるということが比較的容易に理解できる。そして、こうした整理を基にすると、海の怪物と源石との関係についてもある程度まとまった整理をすることができる。
源石との関係
テラの世界に天災をもたらすとともに、先民の生活を支える根源的な物質が源石である。
源石と海の怪物との関係に着目するとき、最も特徴的なものはシーボーンの細胞を取り入れたエーギルである「アビサルハンター」が源石の影響をほぼ受けないことにある。
源石を媒介とするアーツの適正が一律に欠落していること、また血液中源石密度が0.01u/L程度と低い数値となっていること、鉱石病に感染したスペクターの源石感染の進行度が極めて遅いことも含め、総じて源石の抑制がなされているのはアビサルハンターの「シーボーンとしての部分」によるものであることが明言されている。
ここで問題となるのは、なぜ「シーボーンとしての部分」が源石を抑制できるのかであるが、これも『孤星』において明かされた情報からうかがい知ることができる。
すなわち、『孤星』において源石もシーボーン同様旧人類による創造物であることが示唆されたところ、シーボーンが本来的に源石の存在を織り込み済みの上で作られたとすれば、シーボーンに源石を抑制する機能が備わっていることの合理的な説明が可能となる。
順を追って見ていく。まず『孤星』で「保存者」は「ドクター」がロドスとして鉱石病の治療と感染者問題という源石に由来する問題に立ち向かっていることに矛盾があると述べた。
これは、テラにいる生命と共存することのできない源石をテラにもたらすことの始まりとなったのはプリースティスであり、そのプリースティスと深い関係にあった「ドクター」が源石の問題を解決しようと動いていることに対する指摘である。
このように旧人類であるプリースティスが源石の問題をテラに生じさせた張本人であることに加え、同じく旧人類であるフリストンも本来の源石の形態を知っていること、記憶喪失となった「ドクター」も本来であれば源石について知識を有していたことが分かるが、現在の源石はもはや旧人類が創造した時点のそれとは大きく異なる形態となっていることが明かされている。
源石が旧人類の遺産であるという前提に立つと、源石がテラの先民の姿を変え、あるいは鉱石病を分け隔てなくもたらす原因でありながらシーボーンがこれに対する耐性を備えていることは、両者が旧人類の創造物という点で共通するときに、先に源石が造られ、その後にシーボーンが造られた関係にあることを示すものとみることができる。
としてもフリストンがいうように源石は当初の形態から既に変化している。こうした変化は源石がティカズあるいは他のテラの在来生物と融合し(=鉱石病)、源石に本来旧人類が予期していない物質が混ざったこと、これに加え源石が自己増殖・複製する性質によるものと考えられる。
そのため、シーボーンは源石への耐性を持ちつつも完全に変化後の源石には適応できておらず、END04において源石を食料にするまでに新たな適応が必要となったと解される。
「惑星改造計画」の顛末について
最後に「惑星改造計画」の顛末について薄弱な根拠を搔き集めた推測を行っていこうと思う。
「惑星改造計画」の目的は抽象的ながらミヅキのモジュール「紺碧の種」で明らかにされている。
この記載から「惑星改造計画」の本来の目的はEND04で海の怪物が行ったように、テラの大地を作り変えて生態系全体にとって動植物が豊かで暮らしやすい環境を作ることにあると分かる。
これは恐魚の生命がそのような生態環境の作成に用いられていることはEND01の記載からもみることができる。
このような「惑星改造計画」がなぜ必要とされたのかは現状資料がないために推察することはできないが、例えば源石が天災を引き起こしたことによるテラの環境悪化や、そもそもテラの大地には荒野が広がっており人類による生存に適していなかったことなどが考えられる。
こうした環境整備のため、旧人類は「惑星改造計画」として四体の「ファーストボーン」を造り、テラの大地を人類が生きるのに適した環境へと変えようとした。
しかし、「思いもよらないものが天から降り注いで」きたことで計画が破綻、「ファーストボーン」を筆頭とした海の怪物たちが暴走を始めることとなる。この天から降り注いできたものが何かも明言されていないが、ミヅキの追憶映写で空には「何か」があるとの描写がされており、これと同様のものの可能性がある。
いずれにせよ当初の計画が破綻し、人類は大地も海も制御することが難しくなった。追い詰められた人類が最終的に至った解決策が、END04でミヅキが行ったように、人類を「ファーストボーン」と同化させ、本来の計画目標通りシーボーンたちによるテラの環境整備を行うことだったのではないだろうか。
すなわち、秘宝「紺碧の回想」には以下のような記載がされている。
これのみでは上記の結論に至ることはできないものの、もう一つの秘宝「紺碧の心」には次のような記載がされている。
「紺碧の心」のフレーバーテキストで「これと同化できるのはシーボーンだけだが、そこにある感情を理解できるのは人間だけ。」とされていることから、「ファーストボーン」と人間の繋がりを見ることができ、これを「紺碧の回想」の「皆が例外なく今では許されないようなことに手を染めていたはずだ。」との記載と併せて考えれば、人間が「ファーストボーン」と同化した可能性に行き着くことができる。
しかしこうした同化は必ずしも成功するわけではない。ミヅキやハイモアがキケロによってシーボーン化された際に、ミヅキは人としての姿を維持できたのに対し、ハイモアがシーボーンの姿に変貌した要因には、「人間性」という要素が関わってくる。
同化しようとする者がシーボーンとしての本能に飲み込まれればシーボーンと化し、人間性を保持する意思がシーボーンの本能を上回ればミヅキのようにシーボーンとなりながらも人間の姿を保つことができる。
これはそのままEND04に到達するための秘宝が「決心」「観望」「躊躇」の3つに分かれる原因にもなっている。
END04でミヅキがイズミックとして人類のために「惑星改造計画」を作動させることができたのは、ミヅキが長い間思考し、「それ」(=イズミック)に人としての自我を受け入れさせたことによる。
こうした情報をまとめると、旧人類については推測であるが、旧人類と「ドクター」及びミヅキはいずれも人類とファーストボーンを同化させることで「惑星改造計画」を元の在り方に戻そうとした点で共通し、これが失敗したのが旧人類、成功したのが「ドクター」達だと考えることができる。
その違いがどこにあるのかは、おそらく「人間性」に加え、上記3つの秘宝のフレーバーテキストや、ミヅキとイズミックの思考の行き着いた先、そしてEND04のラストのように、異種族である人類と海の怪物を互いに受け入れることができたか否かなのではないだろうか。
結び
以上「惑星改造計画」という言葉を一つの軸として、海の怪物と旧人類との関係について考察を行った。海についてはIS3によって多くの情報が開示されたものの、今後も『潮汐の下』『狂人号』に続くイベントにより新たな情報が開示されることが予想される。
本記事が今後の海に関する考察の一助になれば幸いとして、本記事の結びとさせて頂きたい。
記事内で使用した「アークナイツ」の画像はYostar様及びHypergryph様の著作物です。 ©2018 Yostar, Inc ©2017 Hypergryph Co., Ltd
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