紅い

 僕には何もできない、なんてことは言わないけど、僕がやりたいことに限ってできないことばっかりだ。

 人は自分の中の欲求をどこまで殺すことができるのだろうか。法律が許していれば、あの野郎をぶん殴っていたかもしれない、あのクソッタレを殺していたかもしれない。

 駅前には胡散臭い干し芋の移動販売、ビラ配り、宗教勧誘、弾き語り、ホームレス。

 ふふふ、紅いな。みんな血を吹きだして倒れてるんじゃないかな。

 ああ、あいつ干し芋食いながら切腹してる。

 ビラで足を滑らせてコンクリートに頭を思いっきり打ってるやつも。
 
 神よ! 神よ! って叫びながら血の涙を流してる、どうやってんの?
 
 喉がもう掻っ切られて血が噴水みたいになってるけど、どうやって歌ってるんだろうか。

 さて、あのホームレスは……ただ寝てるだけかよ。

 日陰者、一緒にあいつ等を見て笑うか? それとも笑われていようか?

 一緒に夕焼けから逃れて。

 どんな妄想をしたって法律違反にはならないんだから。

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