2024ONTAKE100~ポジティブな視点から~



「はじめに」

目次代わりに楽曲タイトルなど充てているものがあります。
実際のその時聞いていた曲もあれば、綴るにあたり後から充てたものもあります。
全体の詳しい歌詞や意味が分からず、一部の歌詞やタイトルあっているものがあります。あらかじめご了承ください。

「Automatic」

物陰でインナーを替える。
毎回足首に水膨れができるので、擦れ防止のクリームを塗り込む。
足が濡れているので5本指の靴下が入りにくい。
スタート前に貼った足裏のキネシオテープは問題なさそうだった。

後半を走るのかも決めていないのに、流れ作業のように準備を進めている。

手元にはレギュレーションに沿った薄手のレインウェア。
デポバックには、フッ素化合物がどうとかで製造中止になった生地を使っているやや厚めのレインウェアを用意してある。
さて、どうするか・・・

考えているのが、億劫になってなってきた。
「やめたくなったらDNFすればいいじゃん」


「できっこないをやらなくちゃ」

とにかく出よう。

濡れ物を突っ込んだデポバックをスタッフに預ける。
結局、レインウェアは薄い方を選んだ。

親時計は午前7時を経過している。エイドには25分くらい滞留したようだ。

腹痛は残っているが我慢できないほどではない
もう一度戻って来れるように祈るような気持ちでゲートをくぐる。
「こっから逆転できたらよくないか?」


「Raise your flag」

松原スポーツ公園の坂を下る。
自分自身大したことないタイムなのに、1周目を終ろうとするランナーに声をかける。
…はて?一瞬でテンションが上がり始めているのが我ながら可笑しい。

エールを返してくれる人。
こいつ何言ってんだ?的な視線を向けてくる人…

橋のあたりで、Uさんが声をかけてくれる。
すれ違い様、差し出されたグータッチにハイタッチで応えるアホっぷりだったけど、一人声を出して笑えるくらいまで気持ちが切り替わっている。

雨は止まないけど、気持ちは晴れた。

残り50㎞強、冷静にカラダや精神状態を確認する。
50代半ばのポンコツなアタマが答えてくれた。

「いいからいけるところまで行けよ」


「マリーゴールド」

距離にすると1~2kmだろうか、ロードの登りがはじまった。

普段のジョグでも入りはキロ7分なんてざらにある私にとって、スイッチオンから即高出力なんてありえない。
パワーウォークをしながら徐々にペースを上げる。
雨なのに麦わら帽子のようにつばのある帽子を被っていた先行者を抜こうとしたら、話しかけられた。

「雨やまないですね」
「確か今頃がピークだったはず」

「登り早いですねー」
「今だけですよw」

なんて会話を交わし少しだけとりとめもない話をした後、徐々にペースをあげパスさせていただいた。速いとは言えないけど、思うように脚が動きだして嬉しい。

耳元に流れてきた曲を思わず口ずさんでしまう。

「恋はドッグファイト」  

相変わらず脚は動いてくれている。
あちらこちらと痛むところはあるけど、この程度なら問題はない。

トレイルのなかでも林道は一番嫌いなはずなのに、(自分比)それなりのスピードを保って動けている。
数時間前まではどん底で止めることしか考えていなかったのに、この差は何だろう

レインを脱いだ。いつの間にか雨は止み晴れ間が見えた。

厚い雲を抜けたような気分だった


「Bling-Bang-Bang-Born」

晴れ間はほんの数分だった。

脱ぐ前のレインは、雨の侵入なのか私の汗なのか内側もかなり濡れていた。
さっきザックのポケットにグイと押し込んだそれをもう一度引き出すのは…

躊躇していると雨は強くなった。

もう全身ずぶ濡れなのでレインは諦めることにした。

珍しく選んだやや長め丈のランパンが、雨で脚に貼りついて気持ちが悪いが、この区間の好調を覆すほどではない。

水たまりをよけるのが面倒になってきて、バシャバシャと直線的に進む。

コースは下り基調になった。

30㎞以上残っているので、下りでもペースを6分を少し切るくらいに調整する。

ペース調整のためにややブレーキをかけたような走り方をすると、シューズが滑る気がした。正確にはシューズの中で足が滑るといった感じか。

一歩踏むごとに滑るのでさすがにおかしいと思いつつも、水溜まりに突っ込んでいく。小石や砂が足裏に入ったのか少し走りにくい。

しかし滑るな…

グリップしねーならカレーライスにして食っちまうぞ!
※このネタわかる人いる?

負のループを呼ばないように、全く関係ないことや楽しいことを考えるように脳にしむける。

にしても、足元が気になって不安が芽生えてくる。

小さな不安がトラブルに代わる前に、タイミングよくウォーターエイドに滑り込むと、座り込んでシューズとインソール・ソックスと足回りを確認した。

ソックスの穴が開いたところにできたマメがつぶれて…

「Brave」

ここから登り返した後に長い下り。
細かいことは気にしていないけど、大まかにコースレイアウトから脚の具合を考えたりしながら、黙々と進む。

思いがけないタイミングだったけど、10年以上前に情熱大陸で放送していた某トレラン選手の回で流れていた曲が再生された。

当時のイメージと重なって、今でも走っていると脳内で再生されることの多い曲だ。
「僕らならできるって 思いながら闘って♪」と続きを歌い、自分を鼓舞する。

一瞬、どうして一周目でこうやって切り替えることができなかったのか考えるが、考えすぎてもリズムが狂いそうなのでやめた。


「空色デイズ」

少し先に白いウェア?レイン?がみえる。

松原スポーツ公園に入る前にすれ違ったYさん…体調が悪いのかペースが上がっていないようだ。

さほどかからずに追いついた。
「おつかれさま!」と声をかけると、
「あっ」っと、おっさんもう追いついてきやがったのかい!といわんばかりの顔だった。

男女差があるにしても、約30分のビハインドを20㎞程度でひっくり返されたんだから驚いて当然だろう(※自画自賛の超ポジティブモードである)。

「俺を誰だと思っていやがる!」
グレンラガンなセリフが口をついて出てしまったw

「まるさんw」…カミラかよっ!と突っ込んでほしかった(泣)

恥ずかしいやらなんやらで、ちょっとだけ速度を上げてその場を後にした。

…その後の彼女は確認していないけど、ちゃんとゴールしたみたい

「夏色」

さぁここからは競争だ…と言ったのはフル・フロンタルだっか。
そうめんエイドまでの長い下りが始まる。

主に登り向けに使っていた筋肉を切り替える。
残念ながら僕はメーテルに会えていないので、機械の身体は持っていない。下り向けの脚の使い方に切り替えるというのが正しい言い方かもしれない。

…長い。

四頭筋にダメージが入りすぎないように、ペースは控えめにして丁寧に足を着くよう心がけて進む。

ゴールすればいいのだから欲張らなくていい。

ゆっくりゆっくり進んでいく。

そうめん♪そうめん♪と一人口ずさんで走る。
エイド前の平坦場でまた一人パスした。
…そういえば、2週目に入ってから誰にも抜かれていない気がする。

実は結構いいペースで進行している?

そう思うと脚は軽かった。

お疲れ様です!
バナナとオレンジいただきます!
あ…そうめんはいいですw
お世話になりました。行ってきます!

カラ元気で礼をいい。エイドを飛び出した。
滞在時間は2分程度。
そうめんもおにぎりもいただかなかった。
ボトルへの補給はしなかった。

ここから約8km程の登りである。

飛び出した直後なのに、ズーンと重いものを感じた。

約1時間くらい前から補給も水も受け付けなくなっていた。

「渋谷で5時」

補給が摂れないのは楽ではないけど、思ったよりも脚が動いてくれる。
アタマもおおむねしっかりしている。

鼻歌ではなく普通に歌っていた。
こんなおっさんが声を出して街中で歌っていたらちょっと困ったものだけど、ここはONTAKEである。

今日ですか?この時間で間に合うんですか?

また一人パスしようとしたら、はぁ?という顔で話しかけられた。

こういう時に自分の年齢を思い知らされる。

疲れが込み上げてきたような気がする。
山頂手前のWAまでもう少しか?
疲れは気のせいと脳に鞭をいれさせる。

ところで、この曲の終わりに菊池桃子が、ごめんね?待った?怒ってる?怒ってないよね?…という件があるのだけど、そこすごく可愛いのでおっさんは是非聴いてください。


ONTAKEの山中で○○を叫ぶ

エイドが見えた。

お疲れ様です!
まだ手前だったけど、気持ちを切り替えたくて大声でエイドボラさんに向かって声をかける。

「あー。まるさんお疲れ!Nです。」

声が返ってきた。
松原に入る前に声をかけてくれたNさん(ランナー)だ。

追いついた。
残り15kmくらい。あとはあの人に追いつければ…

水も残っている(飲めない)
エイドにはよらばかった。
気持ちだけはガツガツと登る。

直前のコース変更でレイアウトがよくわからないけど、ピークを越えたあたりで急に脚にチカラが入らなくなり、左脚全体が攣ってしまう。
バランスを崩して変なチカラが入ったのか右脚まで。

悶絶してコース脇に座り混んで重炭酸ローションをすり込む。

やっと立ち上がって歩き出すと

「はい、いくよー」

Nさんは、涼しく声掛けしながら私をパスしていった。

後半で初めて抜かれた…ついて行きたいのに脚が痛い。一歩毎がツラい。

「脚が痛えぇー」私は叫んだ。

周囲にいた人が皆振り返った。

騙しだまし降りるしかない…登りで抜いたはずのランナーに抜かれて始めている(泣)


「とにかく笑えれば」

林道は終わり、ロードに出ると「残り3キロ」の看板が見えた。

たった3キロ。歩いてもゴールできるのは間違いない。

長い長い下り坂では、痛みを紛らわすために、歌ったりぼやいたり、今夜は何食べるかなーなんて思っていたけど
もうすぐゴールだな…と、時計に目を落とす。

おもったよりいい出来だけど、
結局Tさんには追いつけなかったし、一度は抜いたNさんにも置いていかれた。
平凡なタイムだし反省点しかない100キロだった。


でも、笑って終われそうでよかった。


スポーツ公園の坂をトボトボと登る。

残りの平坦は少しだけがんばった。

左に曲がってゲートがみえる。

脚にチカラが入らないまま、ゲートをくぐる。

フラフラしながらコースに一礼した。

「あざしたッ!」


リザルト

総合記録 13:33:58(160位) 男性149位
St1→CP1 6:41(区間順位310位)
CP1→CP2 3:50:45(区間順位82位)※松原滞留25分含む
CP2→Fin 3:01:14(区間順位119位)

装備等

ウェア:PATAGONIA スリーブレスキャプリーンクールデイリーシャツ
インナー:finetrack ドライレイヤークールタンクトップ
パンツ:T8 Sherpa Shorts
インナー:インナーファクト シームレスインナーパンツミドル丈(通称:変態パンツ )
ソックス:インナーファクト ラミーソックス5本指(くるぶし丈)
シューズ:HOKA ONE ONE  SPEEDGOAT5(履き古していてグリップなし)
キャップ:PATAGONIA ダックビル・トラッカー・ハット
テープ類:GONTEX 膝貼足2・足裏貼足4・ロールテープ50㎜&75㎜
ザック:PAAGOWORKS RUSH5R
ランプ:Ledlenser H8R SE・MILESTORNE MS-J1
皮膚保護剤:Protect J1・BODYGLIDE
ケミカル:PR Lotion

補給

セブンイレブンわらび餅シリーズ 合計8個
乃し梅シロップ(乃し梅本舗佐藤屋)合計150cc
ume power plus 適宜(半袋くらい)
甘酒パウダー2袋(合計20g)
MAGMA 12袋(1時間毎)
…エイド補給等なし

水分
麦茶・乃し梅シロップを溶かしたもの( 合計1.5リットル程度)

その他(デポにて)
たらみ どっさりミックスヨーグルトデザート 半分くらい
凄十(精力剤?ww) 1本

Special Thanks

GONTEX
INNER FACT
乃し梅本舗 佐藤屋

応援&ここまで読んでくださったみなさん























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