我流園芸家の12ヶ月(仮題) 3月

3月、といっても春を期待してはいけない。雪の降る3月の始まりに園芸家は何度も失望を強いられる。しかし、ある日突然のように陽は18時になっても薄明るく、昼間は湯気が立ちそうに暖かくなる。昨日まで家の中で震えながら外に出る日を待ち望んでいた園芸家がこの上なく忙しくなるのだ。草木は植え替えを待ちきれずに芽を動かしてしまう。昨日まで死んだようにしんとしていたのにだ。剪定の済んでいない樹木も新芽をぐっと伸ばしてしまう。室内は次から次と咲き始める蘭の置き場に困って部屋の中を鉢を持って歩き回らなくてはならない。・・・・


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