誘拐

ある日、人種の違う3人の子供がそれぞれの国から誘拐された。4歳の女の子が1人、そして男の子2人だった。

時空を飛び越え、清潔な施設で子供達の共同生活が始まった。両親と会えず、 不安そうな子供達だったが、3人で仲良く暮らしていた。

痩せて泣き虫のくせに我の強いフーシェン、太ってお調子者だが抜け目のないデビッド、眼が大きく大人しそうだが芯の強いアリーヤ。

3人は仲良く暮らした。たまにおもちゃの取り合いで喧嘩になっても、アリーヤが仲裁するとすぐに仲直りした。時々何処からか聞こえてくる声が絵本を読んでくれたりして、3年が過ぎた。彼らは7歳になりそして声がこう告げた。

「これから君たちを元のウチに帰そう。パパもママも他の家族も友達も、みんな元気だから安心しなさい」

不思議な体験をした3人はそれぞれ別々の人生を歩き始めた。

そして60年が経った。

天候不順による飢饉、資源の奪い合い、国益をかけた企業の暗躍、騙し合い。 そして戦争。世界は2大勢力に分割され、アフリカのごく一部を除いてそれぞれの陣営に分かれた。そしていよいよ最終決戦の時を迎えようとしていた。

あの時の子供たちはそれぞれの陣営のトップになっていた。

そしてまた、彼らは子供時代を過ごしたあの場所に誘拐された。

「あんた達、いい加減にしなさい!」アリーヤに一喝されて、両陣営のトップであるフーシェンとデビッドはしばらく睨み合っていた。

「アリーヤ、シェンが食糧や資源を独り占めにしようとしたんだぜ?」

「何言ってる、人民のために最善を尽くしただけじゃないか、デイブ、お前の方こそ・・・」

腰に手を当て、二人を交互に見据えてアリーヤは言った。

「あたし達子供の頃、なぜ誘拐されたか分かる?あたし達が未来の鍵だからなのよ!」

はっと気付いたようにフーシェンとデビッドは考え込み、頭をかきながら握手した。

こうして最終決戦は回避され、地球は死の星にならずに済んだ。


おわり





新しいことは何も書けません。胸に去来するものを書き留めてみます。