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言葉の下

 上か下か。燃えるような言葉を紡ぐ。世界を捉える視覚のその狭間に、形が生まれる。わかっている。自分の貯金残高と同じくらい正確にそのことについて知悉しているのだ。
 空になったペットボトルみたいに軽い言葉のようにも思う。質量を失ってしまう。だっすいしょう 上か下か。燃えるような言葉を紡ぐ。世界を捉える視覚のその狭間に、形が生まれる。わかっている。自分の貯金残高と同じくらい正確にそのことについて知悉しているのだ。

 空になったペットボトルみたいに軽い言葉のようにも思う。質量を失ってしまう。脱水症状になった地球みたいに。
 つむぎ出せば、いくらでも創造できる。子どもの言い訳のように、いくらでも。言葉は本当に自由だし、また、機敏だ。直角にしか動けないかと思えば、鈍角にも鋭角にも動ける。変幻自在で、雲のようにつかみ所のないものだ。
 だからこそ、不自由であるべきなのだろう。重力が世界を縛り付けるように、言葉にも縛りが必要なのだ。だから、僕らは落ちていく。世界のへそを覗き込もうとした少年のように。
 花火みたいに鮮やかな言葉を用いたい。しかし、それは儚さの裏返しでもある。
 伝わらない言葉でもかまわない。結局、分かりやすい情報は分かりやすい情報でしかない。複雑でいたいのだ。一二面のような己でいたい。指紋をなぞるように日々の喜びを湛えたい。
 アメンボみたいに、真理に触れていく。表面を、すっとなぞる。水面が、揺れて、光が泳ぐ。水の中に鳥が住んでいるようだ。界面がばたつく。光は、そのまま水底に溜まり、四方に分散していく。
 なんて自由なのだろう。間接が外れてしまったかのよう。手綱のないラクダのように、気ままに世界を振る舞える。地平線の向こうへ、空と大地のその隙間。
 空が圧倒的に重いから、大地がこんなに軽く映る。実際は、大地の方がずっと重い。用意周到なサンタの荷物のように。
 「隠」を見つめ、「陰」とつなげる。それが一つには大切だなと思った。安居に隠れた、真理をおびき出し、抱擁する。それが、観察者たる人間の勤めだろう。ぼうっとしていてはいけない。身近な世界に新しい価値観が潜んでいる。

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