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私の問題

【写真】Tour Eiffel
学校の4階(フランスで言うところの3階)の食堂からは、エッフェル塔が見えます。直線距離で2.5kmくらいです。

私の問題

薄々感づいていたことではありますが、学校が始まって4週間経った金曜日の朝、私の問題点について、最年少の台湾人クラスメートから遂に指摘されることになります。
「カズ、クラスはどうだ?」
神妙な面持ちで聞かれます。
「授業は面白いけど、時々皆が話していることが分からなくて居心地が悪いことがある。」
コミュニケーションで不都合があったのは事実なので、感じている通りに応えます。
「そうだな。お前の場合、フランス語の前に英語が流ちょうでないとな。」
「分かってる。そうなんだけどね...。」
ここでロッカールームでの会話が終わります。

私の英語力は決してネイティブレベルではなく、それによってクラスメートとの連携に支障が出ることがあります。
クラスメートは11人で9つの国籍・地域から構成されますが、ひとりひとり見てみると、英語圏での職歴や学歴を持つネイティブが多いです。そのため英語に多少なりとも不自由する人は、私と(前述の台湾人とは別の)台湾人くらいです。しかしこちらの台湾人クラスメートも4年制料理学校、高級ホテル勤務を経ているので、言葉の不自由は調理場の動きでカバーできます。
ネイティブの会話の早さというのはえげつないもので、受験英語のリスニングのような親切さはありません。LineのようなトークアプリであるWhatsAppでクラスの会話があっても、一人の投げかけに私がウームウームと悩んでいる間にも100件近い発言が投げ込まれており、別の話題に移っていたりします。

しかし問題は単に英語力にあるとは思っていません。
より深刻な問題、それは雑談です。

私は雑談が苦手です。
廊下ですれ違った友人と「やぁ久しぶりだね。週末はどうだった?そうそう、先日の...」(アメリカドラマ風)といった具合のものです。それ自体用があってのものではないですが、その人とのその先の会話をよりスムーズにする役割のものです。

雑談ができないとどうなるか。
用がある時だけ話すことになるので、聞き方も答え方も定型的で、初対面の人と話すかのような、役所風の対応になります。

どうして雑談が苦手なのかは分かりません。
決して人見知りではないのですが、恐らく無意識のうちに、用があるときだけ人と接する方が自分のやりたいことを進められると判断してきたからなのかもしれません。
前述の会話の最後で「そうなんだけどね...。」と濁ってしまったのは、そうした問題を抱えていながらどうしようもできない感情が出たのだと思います。

今、チームでの円滑な作業に対して、私がどれだけ貢献できるかは、この問題にいかに取り組むかにかかっていると感じています。
プログラムが終わるまでに、どれだけ進歩できるでしょうか。手探りです。

調理場

さて、金曜日は前菜メニューの一つとして、"Légumes à la grecque"(ギリシャ風の野菜のマリネ)を作りました。

完成品はこちら。

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野菜はカリフラワーや小さい玉ねぎ、ズッキーニ、マッシュルーム、アーティーチョークです。シェフは特定の野菜が家にたくさんある時に作るのも良いと言います。
くし形のきのこのように切ってあるのがアーティーチョークです。調理するのは初めてでしたが、歩留まりの悪さに圧倒されます。芋に似たでんぷんの質感とほのかな苦みがあり、他の野菜には持ち合わせない特徴があります。

cruditéの回では生の野菜にヴィネグレットを和えましたが、今回は"bouillon"(出汁)で加熱した野菜を冷たい状態にして提供します。

作り方は3ステップ。
"bouillon"を作る、"bouillon"で野菜を加熱する、野菜を除いて"bouillon"を煮詰める、です。
濃度のある液体で野菜を煮ることで、野菜にも風味を残します。
また、レモン汁が入る液体をオリーブオイルで絡めるので、結果的にヴィネグレットをまとう仕上がりになります。

シェフは野菜の加熱の目安について、softだけどa little bit crunchy、と表現します。

皿にどかんと盛れば庶民の口休めプレートという感じになるし、もったいぶってちょこんと盛れば昼下がりのセレブランチっぽい感じになります。
色が明るいので、焼き込んだメインに合わせやすそうです。

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土曜日にキッシュと合わせました。
そうです、庶民です。

ロックダウン初日

この日は2度目のロックダウン開始日でもあります。
授業後に街に出ます。一応学校の帰路なので、警官に聞かれても答えることができます。

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カフェは開いていません。持ち帰り用に開けている様子の店もありました。

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14時半頃の地下鉄はガラガラでした。
皆さんやはり、ぶらつくというより、目的地に直行/直帰といった足取りです。

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"Rue de Rivoli"(リヴォリ通り)も人の気配がありません。
ショコラショーの機械が店頭で空しくグルグル動いていました。

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Opéra付近です。
ここに人気パティシエの店があります。
学校で教わるシェフが、(クロワッサンに5€はとんでもないと言う一方で、)この店の"pâte fruilletée"(折り込み生地)の層の美しさを絶賛していました。
来週にこのテーマで授業があるので、予習がてら入店。

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この時期でも少しはお客さんがいました。

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生菓子もあります。

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ヴィエノワズリ―は木の彫刻のような色合い、質感、層のきめ細やかさです。

右の菓子を購入しました。
上掛けのペーストについて、店員さんは「nutellaみたいなものだけど、もっとハイクオリティ!」と言います。

食べると強烈なうま味が直撃し、恐ろしく余韻が続き、頭から離れません。ナッツのうま味だけをかき集めたような、贅を尽くした一品でした。
nutella嫌いな方こそ、ぜひ。

【参考】
■Cédric Grolet
・Fleur de noisette 7€

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