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レストランのデザート

▲学校の厨房
どうやら撮影中のようです。MOFシェフが中央にいます。

さて、レストランは必ずしもデザートのためにパティシエを雇うとは限りません。
デザートを注文する客の割合が一般に60%と言われる中で、専属でパティシエを雇うのは金銭的にも時間やスペースの使い方としても、経営上宜しくないからです。

代わりに外注するか、料理人で拵えるのが解決策です。

金曜日はレストランが提供するデザートの授業でした。
(担当シェフは欠席のため、プログラムの予定外の授業)

完成品4品から。

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"Soufflé au chocolat avec sorbet aux poivrons rouges"

チョコレートのスフレにパプリカのソルベを添えます。その下にカカオ豆の焼き菓子。

ローストしたパプリカの、深く柔らかな甘味はチョコレートと同じ方向を向いています。

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"Oeuf au plat à la mangue et noix de coco"

黄色のボールはバニラ風味のマンゴーピュレ。ゼラチンで覆って形を保っています。下にサブレ。上からココナッツのエスプーマとカリフラワー。

マンゴーとココナッツは、出身が地理的に近い定番の組み合わせ。カリフラワーもココナッツの風味に乗っかる意外性があります。

深皿に盛り、エスプーマにマンゴーのボールが浮いた、目玉焼きのようなプレゼンテーションをするはずでしたが、私は皿がなく平皿に。
合ったお皿を選ばないと無残になる例。

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"Arachides à la banane"

"dulcey"(ブロンドのチョコレート)のムースの中にアーモンドとチョコレートのビスキュイとピーナッツのクリーム。ピーナッツの焼き菓子やバナナのゼリーと。

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ピーナッツのカリカリ感やビスキュイのサクサク感、クリームのとろーり感など、異なる感触が重なります。

元はバナナでなく"Quince"(カリン)のレシピでしたが、急ごしらえの授業のため、手近な材料で代用。

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"Foin de riz impératrice"

下から、バニラとカルバドス酒と山椒で風味付けしたリンゴのロースト、牧草で燻製にした牛乳のライスプディング、コブミカンのソルベが層になります。コブミカンとアーモンドの焼き菓子で覆い、キャラメルとバニラのソース、ローストしたヘーゼルナッツ。

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燻製した牛乳にちなみ、提供時にも牧草の煙に包むプレゼンテーションです。

以上4品は、最終的な形はキャッチーでありながら、作業効率を良くする工夫がなされています。それは料理人が拵えるデザートの2つの特徴でもあります。

一つは、形を保たないものであること。
保存が効くデザートはパティスリーで買うことができます。レストランでは、その瞬間にその場所で食べる人がいる前提だからこそ、異なる温度帯のものを組み合わせるなど、不安定なデザートに挑戦することができます。
写真の時点で既にスフレがしぼんでいたり、クリームが溶けだしていることからも、いかにその場限りのデザートであるかが分かります。

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"Vite, vite, vite!" はやく~

もう一つは、仕上げの直前まで下準備ができること。
冒頭に書いたように、専属パティシエがいない場合には料理人が作業の合間を縫って用意することになります。生地を一から用意する時間的余裕はありません。例えばクレームブリュレは、注文を受けてから表面を焦がす工程なので、効率的に仕上げられる典型と言えるのではないでしょうか。

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ここまで終えれば、あとはパーツを組み合わせるだけです。

以上2点の特徴は、ジレンマでもあります。
職人としてのこだわりがある以上は、手の込んだ、誰にもマネできない、繊細なものを作りたいという意思が働きます。一方で際限なく労力を割くことは家庭料理ならまだしも、経営面では自滅に追い込むことになります。

いい塩梅の折衷点を見つけることが一つのポイントと言えそうです。

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