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第14週(4/1~4/7)

▲増水するセーヌ川、オルセー美術館向かい

3日水曜日、業務の合間に向かうのは、パリ市内にある家族経営のキャビア専門店です。先日、職場で大量購入した縁で、店を仕切る夫人から招待を受けます。一行は、"économat"(エコノマ;調達・在庫管理担当)の同僚2人、上長の料理人、そして私の計4人です。
この訪問は、退職を控えた私が記念となるように、エコノマの同僚がシェフに提案したものでした。彼の言う「君が思い当たったんだ」という意味合いでの"j'ai pensé à toi"という表現には、裏のない、まっすぐな気遣いを感じます。

店内で1kgサイズの大きなキャビア缶が目を引きます。上長料理人と夫人はそれが嗜まれる30年以上前の"epoque"(時代)を回顧し、それを知らない私を含む同僚世代は経済や価値観の違いを踏まえつつ、一同はそれが過去の遺物であることに一致します。試食には主力のキャビアのみならず、真空圧縮したクロックムッシュ用キャビアシートや、香辛料のように用いる乾燥キャビア、さらには魚卵や燻製の知見を活かした"tarama"(タラマ)や"saumon fumé"(スモークサーモン)が紹介され、純粋で心地よい、深い味わいを感じとります。

夫人は製造工程を率直に説明し、彼女の顔つきからは自身と寛大さが伝わってきます。
ブリアサヴァランの格言"Dis-moi ce que tu manges, je te dirai ce que tu es."を思い出します。食べ物が身体だけでなく、人となりにも関わっていること。それだけでなく、逆に人となりが食の選択に影響していることを感じます。

行く手を阻むセーヌ川

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