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洋菓子入門

【写真】6区モンパルナス界隈 7時ごろ

10月25日の日曜日、フランスでは3月から続いたサマータイムが終わり、日本との時差は8時間(サマータイム中は7時間)になりました。
良く寝たわりに時間が進んでないなと思ったら、この仕組みのせいでした。手巻きの時計を持っている時代には、時間を調整する光景が定番だったかもしれませんが、今はスマホが自動で修正してくれるので時間が変わったことにも気が付きにくいのかもしれません。

さて月曜日、料理学校の授業が4週目に突入しました。
私が受講する料理コース(初級)は2月末までのプログラムで、授業があるのは実質17週間です。その後インターンがあり、秋には料理コース上級に移ります。

料理コースの授業は野菜や肉、魚などの料理に限りません。
月曜日は"patisserie"(菓子)の授業でした。初回のテーマは"tarte"(タルト)です。

完成品はこちら。各自がこの量を作り、持ち帰ります。

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右は"tarte aux pommes"(リンゴのタルト)。
土台は、"pâte brisée"と呼ばれる基本の生地です。
中には、リンゴのコンポートがあります。細かくしたリンゴをバターと砂糖でゆっくり煮詰め、バニラエッセンスで香りづけしています。
表面には、リンゴを薄くスライスしたものが並べられています。
焼いた後は、"nappage"というゲル状の液体を塗り、光沢を出します。

左は"tarte aux poires"(洋ナシのタルト)。
土台は、同じく"pâte brisée"です。リンゴのタルト余りの生地を利用して作ったので、一回り小さい直径12cmほどのサイズです。
中には、基本のクリームである"crème d'amande"(アーモンドクリーム)が敷かれています。
表面には、洋ナシを薄くスライスしたものが並べられています。トッピングにはアーモンドのスライスです。
焼いた後は、同じく"nappage"を塗ります。

どちらも食材は異なれど、構造は一緒です。
土台+フィリング(詰め物、具材)+装飾です。
ある意味、料理のポタージュとも一緒かもしれません。
ブイヨンが土台にあり、具材が土台に重なって味や食感を方向付け、具材の一部が装飾に用いられたりします。

3つの要素が調和して初めて完成度を伴いますが、パティスリーの人気ぶりは、しばしば装飾のキャッチーさに焦点が置かれることがあります。
しかし個人的な意見ですが、装飾に関しては一度決めてしまえば誰でも真似できてしまうように思います。(ピエールエルメのイスパハンまがいのものはたくさん見かけます。)

一方で土台の焼き上がりの具合やフィリングとの相性などは、職人の機転が試されるところです。なぜなら工程に変数が多く、日常的に調整と向き合う必要があるからです。

大事なことは、それぞれの要素をいかに安定して作り続けられるかです。失敗してもすぐに調整して立て直せる体制を築く必要があります。
クラスのシェフは繰り返し"私はあなたたちのconsistencyを見ている"と言います。この言葉には、各自の知識量の有無を問うているのではなく、一つ一つの行動に根拠があって動いているのかを問うています。
根拠を伴って行動することが、秩序ある体制を築き、安定した菓子、料理を作り出すことにつながるのだと思います。

ところで、「フランス菓子の構成は建築の意匠を継ぐものだ」的なことをいつかどこかの本で読んだことがあり、それ以来、ケーキは建物を眺めるような目で見るようになってしまいました。

確かに焼き菓子も生菓子も、断面を見てみると気泡を含んだ層、小麦粉が固い骨格を作る層、ゲル状の層など、様々な層が絶妙なバランスで建物を築いています。

私は欲張らずも味わい深い、茅葺屋根の家を建てたいです。

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【写真】一切れの"tarte aux pommes"
全体よりも一部を切り取った方が綺麗だなと思いました。理由を考えましたが、マスク美人効果的なものだろうということで、ひとまず納得しました。

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