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人気パティスリーの"chausson aux pommes"

【写真】Le monde紙
週末号の1面は外出禁止令についてです。
以下のように書かれ、制限に対する世論の反発に加えて、今週、前首相や保健相などに家宅捜査があったことを引き合いに出し、首相には"double pression"(ダブルプレッシャー)があるとしています。
"Sous la pression de l'opinion et de la justice, l'exécutif se démène pour justifier un nouveau degré de restriction des libertés publiques."
カステックス首相は国民に求めます。"chacun chez soi"(みんな家にいること)これが取り急ぎの処方箋のようです。

さて、日曜朝は近所の人気パティスリー(菓子店)へ。
イートインで"petit déjeuner"(朝食)を注文。待っている間、例のごとく名前と連絡先を書かされます。

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【viennoiserie】 n.f.
Ensemble des produits de boulangerie fabriqués avec une pâte fermentée enrichie de sucre, de lait, de matières grasses et d'œufs.

ヴィエノワズリーは日本でもよく耳にしますが、油脂を含んだ発酵生地であることがポイントのようです。

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ヴィエノワズリ―には好物の"chausson aux pommes"を選択。日本でもフランス風パン屋ではだいたい置いていると思います。
飲み物は"café"を選び、"court"(エスプレッソ)か"long"(エスプレッソを湯で割る)か聞かれ、後者を選択。
ジュースにはOrangeを選択。

"chausson aux pommes"。これは新しい発見です。
相場は半円で膨らんだ形状で、葉のデザインが施され、中にはリンゴのコンポートがぽってりと詰まっているものです。
こちらのお店では厚みが2cmほどの板状に押しつぶされ、表面は粒の大きい砂糖がまぶされた無骨なデザイン、コンポートは齧っても見えないほどの5mm程度に薄く引かれています。
常識とは逆行するような構成です。

この構成はコンポートの魅力を伝えるためにに行き着いたように感じました。

薄く引かれたコンポートは淡い黄緑色で、ほぼ液状です。甘さやスパイスが前面に来るわけでもなく、純粋なリンゴの酸味だけが控えめに主張します。
生地はコンポートの水分を受けて馴染み、適度な一体感を出します。
それでも全体としてフニャフニャになるわけでもなく、表面の砂糖がカリカリと食感をもたらします。

押しつぶしたような形状は、この一体感のために敢えてそうしていると思いました。
この生地は焼くと、折り込んだバター層の水分が蒸発し、その力で高さが出るのが普通です。そのため高さを出さないためには、生地を折る回数を減らすか、焼いている間に物理的に押しつぶす工程を挟むか、をする必要がありそうです。層を見る限り、後者に思えました。

全てのパートが連動し、この完成度を作り出しているのだと思いました。
とてもおいしかったです。参考までに単品2.5€です。

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ここはパティスリーなので生菓子もあります。
グラサージュの質感や飴の光沢には主張しすぎない美しさがあります。
しっかりと焼き上げられた土台の色合いも気に入りました。焼き菓子の色が心の琴線に触れるようなお店に出会えると気持ちが高ぶります。

学校では料理コースを専攻していますが、上述のように、菓子の分野からは学ぶべきことがたくさんあります。色味、構成、プレゼンの仕方など。

そんなこんなで他の"chausson aux pommes"も試したいと思い、街をぶらつきます。

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買い物用のゴロゴロ(おばあちゃんがよく引いているやつ)を引く人たちに付いていくと、賑わう商店街に到着。この辺りで"chausson aux pommes"を探してみます。

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買ってきました。
初めに食べたものが気鋭のパティシエのものなので、対比として、ベーカリー(左、bio認証推しの地元ベーカリー)とスーパー(右、MONOPRIX)のものを買ってみました。
左は1.9€、右は2個入2€。1日に4個、事案です。

いずれもよく見るような、半円に膨らんだ形状、葉のデザイン、ぽってりコンポートの三拍子です。
ベーカリーのものは、焼き色が濃く、生地が堅く、全体に重みがあります。
スーパーのものは、焼き色が薄く、生地が柔らかく、全体が軽いです。

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齧りました。
ベーカリーのものは、ザクザクとした歯切れの良い食感です。コンポートは濃く赤みがかかり、シナモンなどのスパイスが感じられます。
スーパーのものは、にっちりとした生地の食感です。コンポートは独特の甘みが最初に感じられます。

この2つを比較して特に感じたことは、生地の食感の違いです。
ベーカリーのものはザクザクとした食感とコンポートの食感の対比が感じられます。バターをふんだんに使っているからでしょうか、香りや口溶けも心地よいです。
ちなみにバターの代わりに、経済的にお得な植物油脂のショートニングを使うと口に残る感覚があります。(バターより融点が高いため。)

そしてベーカリーのものと、初めのパティスリーのものとを比較して特に感じたことは、コンポートの味わいと、形状の違いです。
コンポートの味わいについては、ピュアなリンゴの酸味を取り出した前者に対し、後者は定番のスパイスの組み合わせで味覚を納得させます。
形状については、密に重なり、適度にコンポートの水分を吸った層が全体の一体感を生み出す前者に対し、後者はザクザクとぽってりとの対比が感じられる構成になっています。

ここで優劣をつけたいということではありませんが、初めのパティスリーに独創性を強く感じ、他のヴィエノワズリ―、菓子もどのように組み立てているのか体験したいと思った次第です。

以上、ただただ"chausson aux pommes"を食べ続けたという記録でした。


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