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日本語でできないことは英語では勿論できない

私は仕事柄、外国人の日本語を聞く機会が多い。
ほとんど毎日、何十年もそう言う生活を繰り返している。外国人の日本語よりも日本人の日本語の方がわかりにくい時がある。と言う話は以前の記事にも書いたが
今日はその原因に気づいたきっかけの話を少し。

私がその原因の存在に気づいたのは横浜のブラフアパートメントで
欧米人女性のグループレッスンをしていたときだ。
ブラフアパートメントは横浜に古くからある、その外国人向けアパート。
そこに住む日系ブラジル人男性の
生徒さんからオランダ人女性を紹介されたのがきっかけだった。
彼女が日本語の先生を探しているからレッスンをしてもらえないかと。

彼女の名前はマリーケさん。素敵な絵を描くアーティストだった。
早速彼女に会いに行った。オープンで明るく、知的な女性だった。
私たちはあっという間に意気投合。彼女によると日本語を学びたい友人がいるからグループレッスンはできないだろうかという話だった。そしてマリーケさんのご自宅を会場に大きな円卓を囲んでグループレッスンが始まった。
メンバーは5人。オランダ人、スウェーデン人2人、ポーランド人、アメリカ人。
当時流行り始めだったfacebookでグループを作り、宿題や質問を共有したり、
とても楽しいクラスだった。ブラフLadiesがグループの名前になった。

ある日みんなでお茶をしましょうとお誘いがあり、
いつもの円卓を囲んでお茶とお菓子を頂きながら、おしゃべりが始まった。
おしゃべりの話題は各国の保険制度についてだった。
(欧米女子はお茶を飲みながら、こんなことを話すのかぁ)と
少しワクワクしながら、私も話を聞いていた。
このメンバーで英語が一番上手いのは、もちろんアメリカ人女性。
オランダ人のマリーケさんもかなり上手い。私の英語力は二人ほどではないが一番下手と言うわけでもない。でも、私は途中で気づいた。会話に入れない。
何を話しているのかは全部わかるし、面白いとも思う。だが、自分の中に
言いたいことが構築できないのだ。そんなに英語が得意ではないと思っていた
少しご年配のスウェーデン人女性も、話題に時々参加できている。

今ならその時、どうしてそうなったかはっきりわかる。
私の日本語力がその程度だったのだ。英語力の問題ではない。
同じような会話が日本語でなされていたとしても、私は発言できなかったに
違いない。まず保険制度について深く考えたことがなかった。自分の引き出しの中は空っぽ状態。それでは意見や見解はおろか、質問ができるかさえ怪しい。
この経験は私の後頭部をガツーンと殴った。私には圧倒的に何かがない!
孤独のグルメの井之頭さんが「腹が、、減った」と言う時に似ている感じで
「私には、、何かがない」と立ちすくんだような気持ちだった(笑)

程なくして、私は偶然「言語技術教育」と言う言葉に出会う。
英語の上達のために英語を勉強しているだけではダメだと気づいた。
ブラフLadiesの黒い大きな円卓お茶会は、私の語学の転機になった。
私の日本語はこの頃から変わり始めた。

ラジオでも話しています。あれはもう何年前なんだろう。



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