四乃森蒼紫

 『るろうに剣心』新アニメシリーズをdアニメで追っている。その第12話にみる四乃森蒼紫が戦闘を求めているのは、戊辰戦争にあってその戦乱に参加することができないまま幕末を終え、御庭番衆の威厳を明かしもできず、明治の世にあって部下たちの技量を活かすことも叶わない屈辱のなかで、せめて幕末最強と謳われた人斬り抜刀斎との闘いに勝つことによって御庭番衆に「最強」という花を手向けることにあった。
 四乃森における幕末から明治への転換期に抱いた心理は、軍国少年としての吉本隆明の戦後や学生運動華やかなる時代を大菩薩峠監禁によって革命闘争に参加できないままそれ以後を生きてしまった押井守の心理と通じる。時代の空気を吸った少年期が描いた夢を果されることのないまま、価値の転換したそれ以後の時代を生きてしまっているという屈辱だ。
 私はドラゴンボールに顕著な戦うこと自体を楽しみ、最強をそれによって判断するというものが苦手だが、四乃森の背景のある「最強」への拘りには興味がそそられるらしい。ということをこの話によって思った。

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