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北海道フィールドワーク日記 その5

 3月の半ば、まだ冬が続いている北海道に調査に出かけた。その調査の裏側・・・起きた出来事、経験したこと、思ったことなどを淡々とまとめていこうと思う。

3月18日~19日 札幌~江別~新千歳空港 東京へ
 フィールドワークも残り2日となった18日は苫小牧から札幌を目指す。札幌では資料探しを目的にしていた。普通列車を乗り継ぎ、1時間ぐらいで札幌についた。札幌は道路に雪が残っており、それがスーツケースの車輪の動きを阻む。雪で車輪が止まりそうなところは迂回したり、そうして元おr無いといけないところはスーツケースを持ち上げたりして、なんとか道路の雪を克服した。
 その日の日中は資料探しを行い、夕方、ホテルにチェックインした。荷物を置き、一休みをした後、散歩がてら大通公園を目指すことにした。夕暮れ時の札幌のビル街を歩く。札幌駅周辺の高架橋をくぐり、人々の雑踏をすり抜けて、街のオアシスに向かう。大通公園についたころは、夜に変わっていく時間であったため、札幌テレビ塔はライトアップをしていた。テレビ塔は小学生のころに展望台に昇ったことがある。それ以来のテレビ塔である。今回は、一番上の展望台に上がることはしなかったが、地上からライトアップを楽しんだり、ショップでお土産を考えたりなどをして、テレビ塔での時間を過ごした。だが、なぜか携帯をホテルに置いてきてしまい、テレビ塔の写真を撮ることができなかった。

札幌テレビ塔 (2023年9月7日撮影)

 そのあとはホテルに戻り、周辺で夕食を食べることにした。夕食は、北海道大学近くのクラーク亭というお店である。ここは、ハンバーグのメニューが豊富で、私は、チーズハンバーグのライス大盛を注文した。フィールドワークの疲れがあったからか、ペロリと完食してしまった。

クラーク亭 チーズハンバーグ

 次の日は江別市にある北海道立図書館に向かう。この日は朝から雪が降っており、ホテルの部屋から外を見ていると、一面銀世界になっていた。もちろん、前日も道路に雪が残っていたが、上書きするように、雪が積もっていた。ホテルは駅から近く、移動に困難はなかったが、江別に着いてからが大変だった。まず、電車に乗り、図書館の最寄り駅である大麻に着いたが、図書館側と反対側の出入り口に出てしまった。そのため、重い荷物を抱えて通路を歩き、線路の向こう側に移動しなければいけなかった。それが最初の困難であった。そして、江別に着いたことは雪が強くなっていた。そのため、道路は新雪であり、スーツケースの車輪が昨日と同じように動かなくなってしまった。それでも無理やりスーツケースを引っ張ろうとすると、本体の下部が道に積もった雪をさらうように集めるため、よりスーツケースが重く感じた。そのような状況であるため、地図上では駅から図書館はそれほど離れているわけではないのに、その道のりははるか遠く感じた。
 江別は大学があり、若者が多いと感じる。実際、新札幌に行くバスに乗車したとき、若い方が多かったと記憶している。また、ここ江別はアイヌの歴史、北海道の近現代史でも重要な場所である。

樺太アイヌは、かつての樺太の南部で独自の文化を持って生活していましたが、1875年に日本とロシアが結んだ「樺太千島交換条約」によって樺太で暮らしていた841人が強制的に移住させられました。
移住先は江別市の対雁地区で、コレラや天然痘の流行もあり300人以上が故郷に帰ることなく亡くなった歴史があります。

NHK HP 北海道 NEWS WEB 2023年6月17日
「江別 移住を強いられ亡くなった樺太アイヌをしのぶ墓前祭」
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230617/7000058446.html  2024年6月12日閲覧

このように江別は、日本とロシアという二国間の動きによる樺太アイヌへの侵害に関わりのある土地である。正直なところ、このことを意識して江別に行けばよかったと後悔している。近代国家が誕生していく中で、中央政権の思惑による先住民族への加害は、今を生きるうえで忘れてはいけないと思う。その反省と、今でも残る加害や差別をなくし、どんな人も対等に生きられる社会をつくっていかなければならないと思う。

北海道道立図書館のエントランスより

 資料探しが終わり、バスで一旦、新札幌に出向く。ここでランチを済ませた私は、快速「エアポート」で新千歳空港に向かい、東京への帰路に就くことにした。この時は「おそらくしばらくは北海道に来ないだろう。」と思っていた。なぜなら、ほぼすべての調査が終了したからだ。あとは分析をして、論文にするだけである。だから、次、ここに来るときはそれらがすべて終わったころだと思っていた。そんな私を「エアポート」は順調に空港まで連れて行ってくれる。北広島のあたりでは、進行方向右側に北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド HOKKAIDO」が見えてくる。2023年から使用を開始した12球団で最も新しい球場である。今年はプロ野球のオールスターゲームの開催地であり、東京六大学野球のオールスターも行われる。とても楽しみなイベントが多い。中継などでグラウンドや観客席を見たことがあるが、近未来的な雰囲気があり、行ってみたい球場の一つだ。

エスコンフィールドHOKAIDO (2023年9月7日撮影 特急「おおぞら」車内より)

 列車はやがて最後の途中駅の南千歳に着いた。ここ3、4日間で何回かお世話になった駅だ。特急「おおぞら」や札幌に行く「エアポート」の乗り換えはここ南千歳だった。そして、列車は南千歳を後にして、地下に潜っていき、新千歳空港に着いた。新千歳空港では、お土産を探したり、お茶をしたりと北海道での最後の時間を過ごした。チェックインの時点で、飛行機が遅れることが分かったため、かなりゆとりをもって空港内で過ごすことができた。やがて、日が傾く時間帯になり、荷物をまとめて保安検査場を通過することにした。若干の名残惜しさを抱えながら、吸い込まれるように検査場に入っていった。この日は午前中の大雪が影響したらしく、私が登場する飛行機が大幅に遅れ、東京に着いたのは夜が深まるころであった。(終わり)

新千歳空港のターミナルより

出典 NHK HP 北海道 NEWS WEB 2023年6月17日
「江別 移住を強いられ亡くなった樺太アイヌをしのぶ墓前祭」
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230617/7000058446.html  2024年6月12日閲覧
 

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