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欲情することのない、黒い森の混浴場

2020年に達成したかったことの一つ、ドイツへの炭酸泉行脚。初のヨーロッパ旅行のターゲットにドイツの温泉を選んだのは、他でもない、大好きな炭酸泉のある大分県竹田市と姉妹都市提携を結んでいるバートクロツィンゲン市があるからである。温泉サミットにいらしていた市長によると、近隣にはバーデン=バーデンというおよそ2000年前に発見された温泉街があるという。私は、そこで1週間ほどアパートメントを借りて近隣施設で外湯を楽しむ計画を立てた。

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シュヴァルツヴァルト(黒い森)の北側に位置し、フランクフルト国際空港から地下鉄で4駅、フランクフルト中央駅よりICEで4駅行ったところがバーデン=バーデン 。駅からは温泉街行きのバスに乗り、予約していたアパートメントへ。日本で、小さな温泉地の民泊エアビーにチェックインするほうがよっぽど迷うだろうというくらい、いたってシンプルで速くて合理的。空港で見かけた日本人も2人だけだったが、ここでは東洋人にすら、会わない。いわゆるヨーロッパ周遊メニューに組み込まれるワンデイトリップは多いらしいけど、1週間ここに丸々いるような日本人はいるんだろうか。

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宿に着くと、テレビの国際ニュースでパンデミックを起こした横浜のクルーズ船のニュースをやっていたが、人ごとのように観ていた。ドイツはむしろ季節外れのハリケーン「サビーネ」の話題で持ちきりだったくらいだが、3ヶ月たちこの有様である。といってもドイツは早くも出口戦略に駒を進めていて羨ましい限り。

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フリードリヒス浴場という、日替わりで混浴になる温泉施設が人気という。混浴はそこまで抵抗ないが、タオル、水着もなし、明るく天井の高い施設で混浴とはどういう状況なのかちょっと理解できないな…と思いながら好奇心100%で施設に向かった。男女の入口は別れていて、18くらいある健康増進オススメメニューを一つ一つこなしながら最後に辿り着くめちゃめちゃかっこいい大浴場が、混浴だった。途中のサウナやエステ、水風呂そしてマッサージを受けたあとの休憩所まで、基本的には同性しかいなかった。そして、忘れてはいけないのが平均年齢の高さ!アジア人ということでチラっと見られたりはすれど、中高年はおしなべてお腹が出ているし、身体が大きくショートカットの女性も多くぱっと見で男か女かなんてわからないので、局部をガン見とかはお互い無かった。マジで浴場では欲情しない。その荘厳なしつらえも相まってエロスなんて言葉が生まれる以前の空間のようだった。

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フリードリヒス浴場の荘厳建築に対し、クリーン&モダンな雰囲気なのがカラカラ浴場。中国とか、フィリピンからの旅行客がたくさん。かつて滞在した草津温泉のカラカラテルメはここをお手本にしたのだろうか? 妙なお気楽さも含め、水着で遊ぶリゾート温浴施設の教科書でした。
ただし、温泉みは草津の方が100倍ありました。

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このあたりから、ドイツの炭酸泉は湯あたりするほどの温泉みはないのかな?ということに気づいてきます。フリードリヒスで一番温泉みを感じたのは、一生見ていられるでおなじみ、温泉の結晶を眺めながら過ごすサウナでしたし。
温泉成分たっぷりのお湯をじっくり浸かりたかったわたしは少し物足りなく、ドロゲリー(※日本でいうドラッグストア的位置付けのお店)でクナイプを滞在日数分購入。余ればお土産にすれば良い。

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バーデン=バーデンの街並みには日本の温泉地と同様にとても和やかな雰囲気が漂っている。飲食店やスーパー、ショッピングセンターが美しく配置されているだけではなく川沿いに広く続く公園の中に美術館、オペラハウスや映画館、コンサートホール、カジノが点在していた。18〜19世紀には、ヨーロッパ中の王侯貴族や文化人がこの地を訪れたそうで、文化と娯楽に溢れた街並みに納得。
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日が短いなかで太陽の光を求め、犬の散歩や自分の散歩、ランニングなど思い思いに過ごす現在の滞在者は、ドイツ国内やスイスなど、近隣からの長期滞在者がほとんどのようだった。人工的で物足りないと言ってはそれまでだが、ある程度高齢となり、無理なく癒しと健康を求める人たちには必要十分である。ヨーロッパの観光客がある程度見込めるのに、日本の料理店が無いこともあり、こんなところでおばんざい屋などやれたら最高だなと夢を広げながら延々歩き、一日ごとに行動範囲を広げ、一人愉しく街場の雰囲気と会話した。

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トリンクハレ(飲水場)には、現在飲水浴のできる施設はなく、お湯が沸く場所に歴史資料が飾られ、カフェが併設されているだけ。しかし多くの人が訪れる理由は素晴らしい建築外観。特に朝の陽射しを浴びた風情は圧巻。自分がもしプロモーションビデオを作るならここで撮影したい。


バートクロツィンゲンへのショートトリップ

イギリス・フランス・ドイツに襲いかかってきた、季節外れのハリケーンにより、ICEやアウトバーンは早々に運行停止。いつまでも判断をグダグダ迷ってないで、スパッと決めて市民も対応。ドイツここにありという感じ。この流れは相当インテリジェンスだなと陶酔した私は、計画していたベルリン行きをスパッと諦める踏ん切りがついた。バーデン=バーデンを離れるのは VITA CLASSICAをはじめとするバートクロツィンゲンへのトリップだけにしよう、そして、今後旅行中の天気はあまりよくなさそうだから、なる早で翌日訪問してみようということになった。

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電車が大好きで、ずっとヨーロッパの鉄道に憧れがあったわたしにとっては夢のような行程で、車窓からバシバシ写真を撮っていたらICEはあっという間にバートクロツィンゲンに到着。そういえば、鉄ヲタ(撮り鉄)的な人はまだ見かけていない。わたしがもしドイツに産まれていたら、テクノとチーズとソーセージと鉄道によってすくすくと脳が育まれとんでもないヲタクの女に仕上がってそうだ。

バートクロツィンゲンの駅に着くと、出がけに降りそうだった雨がしっかり降っていた。駅前は緑が広がり、整備された遊歩道を少し行くと温泉施設や温泉図書館がある。途中川も流れ、こんな雨模様でなければ自転車やら犬の散歩やテニスに興じる人手が出ていたであろうことは想像に難くない。

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宿泊棟の可愛らしいホテルの並びに微笑んでいたら、程なくVITA CLASSICAに到着。高級スパ施設感ムンムンで、お値段もそれなり。水着を借りる。国内だと乙女心を悩ませるサイズ問題も、ここでは余裕のSサイズ。これで水着エリアをのびのび泳ごうと、ニヤニヤしながらデポジットを支払う。入り口近くの貴重品ボックスに寄り、階段を登るとあれ?おじさんしかいない? 間違えたのかと聞いてみると、なんと男女共同更衣室だという。脱ぐところから共同。マジか。これはなかなか抵抗あるし、ハラリシーン狙いのおっさんとかいるんじゃないのか?とキョロキョロするも、ほぼ90%が老夫婦のため、皆マイペースで特に周りに目をくれるそぶりはない。

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大きなプールエリアの温泉は、滝や流れなどちょっとした仕掛けがあるもの、歩行浴のためのもの、そして炭酸泉とさまざま。基本的に深さがあり、立って入るタイプのお風呂だ。十分な深さと浮力を受けながら炭酸泉に大の字で浮く行為はこの上なく、この瞬間がずっと続けばいいのにと思う。
サウナエリアは水着を脱ぐ。きめ細かい温度設定で複数のサウナがあり、そこそこ狭いサウナにも男女交えて隣り合って座っていた。湯気があれども、結構見えるし密接。しかし、ドイツ、オーストリア、スイスの客でほとんど占められる施設ゆえ、視線を向けられるのは性的な理由ではなく、黒髪のアジア人が珍しいだけだということにすぐに気づいた。

日本風なしつらえのレストルームがあるというので行ってみる。良き雰囲気の中、竹製のリクライニングに横たわり、毛布をかけて休息を取れるしつらえ。足の先に見えるのは水風呂としての大きなプール、それを囲むようにログハウスが点在。フィンランド式サウナなんだろうか? 老夫婦がガウンを着てサウナへ入っていき、程なく全裸で水風呂に飛び込む。その様子をレストルームのリクライニングベッドから眺める。なんとも原始な風景。落ち着かずシエスタに落ちることもなく、レストルームを出た。
VITA CLASSICAは食堂も併設していて、海辺のビーチハウスのような雰囲気の一角も。おじいさん、おばあさんたちの食べるものはヘルシーで、お酒を飲み騒ぐこともなく品がいい。良いんだけど、なんとなく雰囲気に飲まれそうな気がしたので、そろそろBBの街に戻ることにした。

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温泉保養地よろしく、療養やリハビリで来ている人も多い。歩道では杖を使う方、車椅子を使う方がとてものびのび自然に移動しているのが印象的なバートクロツィンゲンだった。

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帰りのICEでゆっくり食事とコーヒー。昼寝から目覚めた車窓の奥には、虹が出ていた。

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2020年じゅうは再訪は難しいかもしれないけど、来年はドイツ側から呼ばれて行くぐらいになりたいですね。













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