青春に取り逃がしたもの(「夜明け告げるルーのうた」感想)

青春に取り逃がしたものがたくさんある、キラキラした友情とか恋愛とかそういうもの。それに手を伸ばすことを躊躇ってばかりの人間が主人公だが、歌をうたうとやってくる人魚ルーに心を動かされ、純粋な気持ちに立ち返り、キラキラしたものを掴みに行こうとする話だ。そしてそんな日々の終わりの話。

カッコいいJPOPのアレンジがビシバシ効いてきて、それで画面は画面でとんでもなく派手なことが次々と起こる。その目まぐるしく展開が進んでいく中で、大人の利権によってルーが狙われることに。最初は歓待ムードだったのが、紆余曲折を経て化け物扱いになる。でも人魚たちの性根はちっとも変わってないのだ。海に棲む人間と歌が何より好きな種族。

子供を生き生きと、きたない大人はより汚らしくアニメーションで対比できるほどの差をつけているのも面白かったし、ルーのはしゃぎ具合がなんといってもかわいい。

ラストの唐突すぎる展開を見て、呆気にとられた。まだまだみんななかよししていたかったのに。主人公三人はすっと現実にかえってきて、未来を見つめるようになる。なんだかかなしい、青春の終わりだ。青春に取り逃がしたものがあるから、きっとその空洞を他のもので埋めようと、人は変わるのかもしれない。

小さな町の人魚が、主人公の周りの人物に愛に気づかせてくれる、その美しさだけでも、この物語は良かったのだ、と思わせてくれるものだ。




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