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少女達の狂想曲

本来ならば
あの替え歌だけで
感想を留めておくつもりだったが、
数多くの疑問とそれに対する個人の見解
他に感じた事などを
書き連ねたいと思ったため
部外者なりに書いていく。

※この先、
前作(3年目のデビュー)と
本作品(希望と絶望)の
映画の内容のネタバレを含む。

第1章 シラナイ

「えー…ちょっとこの2年間はあんまり見てほしくない」


本作品を鑑賞する前に
初めて佐々木 久美のこの発言を聴いた時に

「苦しむ姿をファンの人達に見せたくない」

そんな思いからの発言だと思った。

しかし、
映画を鑑賞した後に
その解釈は大幅に変化し、
新たな疑問が生まれた。


佐々木 久美の
「ストーリーとして見てほしくない」という
発言を聴いた時に解釈の違いに気付いた。

そしてその時に
「彼女が望むべきものとは?」
「そのためにファンはどうすれば良いのか?」という
2つの疑問が生まれた。


そんな疑問を抱きながら
作詞をしている時に
「あれを"真実"だと思わないでほしい」
「真実を『知った』と思わない方が良い」という見解に達した。


これらの見解について説明しよう。

私は
本作品を鑑賞した時に
前作(3年目のデビュー)には感じなかった
妙な違和感を覚えた。

やがて
それは疑問へと変化し、
一切の偽りは含まれていない
「継ぎ接ぎの真実」である事に気付いた。

では、「本当の真実」とは何なのか?

それは、
今まで彼女達が
活動を通して目にした全てものである。


つまり、
映画を公開する時間の枠に収めるために
切り落とされた時間や
カメラには映らなかった…
正確に言えば
カメラには映せなかった時間を含めて
「本当の真実」と言えるものが
そこに存在すると感じた。

しかし、
残念ながら
「本当の真実」を知る術は存在しない。

そのため、
彼女の望みを叶えるには
今後も真実を知らない人間で在り続ける事
現状での最適解であり、
私もそのように立ち振る舞おうと思った。

第2章 過ちのエンジェル

本作品では
2021年5月に発売された5枚目の楽曲で
センターを担当する事になり、
プロ―モーションや
ヒット祈願の企画のために
ストイックに奮闘するが、
激務の影響で疲れ切った
加藤 史帆の様子が描かれている。


彼女は
早い段階で心身ともに
限界を迎えていた事を自覚していたが、
「『しんどいです』って言ったらお仕事が減らされると勝手に思い込んでいた」という理由でヒット祈願の時まで辛さを堪えていた。


その結果、
"健康"とは言い難い状態で臨んだ
ヒット祈願のシーンを観ていて
パフォーマンスの質の低下と
表情の翳りが見えた時に
別の形で全ての仕事が無くなると感じた。

かといって、
そのリスクを把握した上で
彼女を休ませる事ができたとしても
それが却って
精神的ストレスを与えるきっかけになるため
身近なメンバーでさえ、
その判断に迷う事も納得がいく。

ただ、
「仕事が減らされる」という
最大のストレスを与えないで
今日まで活動できている事が
不幸中の幸いであると思った。

あの時の事を振り返って
「もう考え込みたくないですね」という
発言を聴いた時に
あんな無謀な行為を
繰り返す事はないだろうと
信じる事ができるような要素が
そこにあると思った。

第3章 力

気温が30度を超える状況で開催された
2021年の「W-KEYAKI FES.」の公演後に
メンバー達は
スタッフから厳しいコメントを受けており、
「今以上の体力作りの準備をしてください」と言われていた。


それに対して佐々木 久美の
「体力とかでどうにかなるものなのかなってちょっと思っちゃいました」という発言を聴いた時に
「体力をつけた事によって生じるメリットとは何なのか」という疑問が生まれた。


その事について考えた時に
「全ての行動において余裕が生まれ、救える心が増える」とい見解に達した。


この見解について説明しよう。

2020年下半期から
2022年上半期まで
4人のメンバーが休業を発表した。

これが
定められた運命であるならば
それは悲劇だとしか言いようがないが、
その悲劇によるダメージを
少しでも軽減させる術は存在している。

時系列を遡る事にはなるが、
2020年の下半期に
松田 好花と宮田 愛萌が休業した。

その事態に直面した渡邉 美穂の
「もっと早くSOSに気付いてあげれば良かった」という発言を聴いた時に
「彼女がそのような後悔の念を抱く事になった原因とは何だったのか」という
疑問が生まれた。

しかし、
その疑問は先に述べたスタッフの言葉と
佐々木 美鈴の
「みんな"自分"を生きる事に必死になっていた」という
発言のおかげで解決した。

彼女が
そのような後悔の念を抱く事になった原因は
"自分"を生きる事に必死になっており、
無意識のうちに周りの視野が狭まっていた。

つまり「体力不足」である。

体力がある事のメリットとして
パフォーマンスの質を向上や
表現の振り幅を
広げられる事などが挙げられる。

しかし、
それ以上に
体力がある事によって
ある程度の心の余裕が生まれ、
より詳しく周囲の状況を
把握する事が可能になり、
異変に気付きやすくなるという
メリットが秘められている。

さらに
最初から休業する運命を辿る事が
定められているメンバーにも
体力があれば
1秒でも長くSOSを発する事が可能になり、
他のメンバーが気付く確率を
高められるというメリットも秘めている。

それらの事を踏まえると結果的に
体力とかでどうにかなってしまうのである。

もちろん一概に
あのコメントが正しいとは言い難く、
2022年9月7日に宮田 愛萌が
アイドルという案外ハードな仕事に
自身の体が少し前から
ついていけなくなっていた事を理由に
グループからの卒業を発表している。

だが、
あの時の状況と
後に来る6枚目の楽曲の事を考慮すると
最適解ではあったと思った。


私は既にその循環に
到達していると思いたいが、
まだその循環に到達していないならば
それもアイドルならではの
醍醐味として捉えて
到達に至るまでの過程を
楽しませてもらおう。

第4章 擦痕

本作品では
2020年~2021年にかけて
メンバー内で
意識や思想のズレの発生が
描かれていたが、
この映画には
もう一つのズレが発生していると感じた。


それは
日向坂のメンバーとスタッフの
考えのズレ
である。

本作品内で
そのようなシーンは
ハッキリと描かれていなかった。

しかし、
佐々木 美鈴の
「スタッフさんに相談したらセットリストを調整してくれた」という発言や
佐々木 久美の
「メンバー内で意見を纏めて代表して私が報告しに行く」という発言などを
聴いた時に違和感を覚えた。

その違和感こそが
日向坂のメンバーとスタッフの
考えのズレであったが、
先ほどの2人の発言からして
もう既にそのズレは
改善されていたと思った。

第5章 見つけたもの

ここからは
2022年8月の中旬に
前作(3年目のデビュー)を鑑賞した時に
気付いた事であるため、
その作品の内容を交えながら説明する。

前作では
けやき坂46の活動の様子を踏まえつつ、
日向坂46がデビューした時期である
2019年~2020年がメインで描かれている。

その中で私は
松田 好花が
「"日向坂"が何かって自分達さえも分かっていない」という発言を聴いた時に
本作品のとあるシーンでの
発言を思い出した。

それは
2021年の9月に広島県で開催された
全国ツアーのライブ後のシーンであり、
Seed & Flower合同会社代表である
今野義雄が
その時のライブの
パフォーマンスの質の低下を指摘していた。

その中で
日向坂46の長所として「『この子達はこんなにも無防備に行っちゃってこんな大変な事になっちゃうけど大丈夫か!?』って思ってもそれでも行っちゃう凄さがある」と発言し、
それが弱っている事を伝えた。

前作を鑑賞しながら
今野義雄のあの発言を思い出した時に
彼女達はこの2年の間に
「"日向坂"が何か」という問いに対して
その答えを見つけたと思わせる要素が
そこにあると感じた。

第6章 節目

ここでは
2つの作品を鑑賞した時に気付いた
共通点について述べるため
再び前作の内容を交えながら説明する。

前作(3年目のデビュー)の後編では
4thシングルの
カップリング楽曲の
振り入れの際に初めて「青春の馬」を聴いた
メンバー達の様子が描かれており、
ほとんどのメンバーが涙を流していた。

その後、
メンバー達との会話で丹生 明里が
「何か日向の進む道が決まった気がする」
という発言をし、
インタビューでは
「1個、光が見えた気がしました」
と発言しており、
他のメンバーも
「確かに」と共感していた。


ここから時系列を2年ほど進めて
本作品に触れていく。


第2章で
『佐々木 美鈴の
「みんな"自分"を生きる事に必死になっていた」という
発言のおかげで解決した。』と述べたが、
私はあの発言を聴いた時に既視感を覚えた。

そして
東京ドームのライブで披露した
「僕なんか」のシーンが流れた時に
その楽曲の歌詞の一部を思い出した。

その時に私は
佐々木 美鈴の発言を聴いた時に感じた
既視感の正体を理解し、
あの歌詞の中にもそれと似たような要素が
含まれていると感じた。

このように
2つの作品において
その時の彼女達の現状を表すような
楽曲が存在している事に気が付き、
改めて
作詞家である秋元康の凄さを実感した。

3つ目の
ドキュメンタリー映画の公開が決定した時は
それらの可能性を視野に入れて
その時期の近辺に発売されている
楽曲の歌詞に注目してから
鑑賞する事も良いかもしれないと思った。

第7章 噂のMighty Woman

本作品の後編で
東京ドーム公演のリハーサルの様子が
描かれていたが、
正直、
もう時系列的に大きな動きは無いだろうと
勝手に決めつけていた。


しかし、
本番5日前に
濱岸 ひよりが体調不良で
途中でリハーサルを抜けて
検査を実行した時に
陽性である事が判明して
東京ドーム公演の出演が
不可能になった事を
告げられた時の渡邉 美穂の反応に
衝撃を受けた。


彼女は
卒業を控えていた事もあって
人一倍メンバー22人全員で
約束の彼の地に立つ事を
強く望んでいたが、
その望みが圧倒的な不条理によって
打ち砕かれてしまった。

その影響で
「何でなの」と言いながら
幼い子供のように
泣きじゃくる渡邉 美穂の反応を観た時に
私は一種の興奮を覚えた。

まさか
物事を俯瞰で見る事ができるほどの
冷静さを兼ね備えた女性から
あんなにも透明度の高い
感情の発露を観る事ができるとは
思わなかったため、
私は体が熱くなるほど興奮した。

あの感情の発露が
忘れられなくなった私は
大きなスクリーンで
そのシーンを観るために
もう一度、
映画館に足を運ぶ事を決意した。

その後
もう一度、
そのシーンを観た時に
彼女のギャップに惹かれていた事と、
卒業を控えていなければ
推しメンと公言していた可能性は
あったかもしれないと
そんな他愛もない事を思った
自分自身にちょっと驚いた。

第8章 まとめ

今回、
前作が公開された
2020年8月の時点で
既に撮影をしていると
予測をしていた事もあって
以前よりも期待値が高まっていたが、
見事にそれを超えて来たこと。

本来ならば
彼女達にも
本作品の制作を拒否する権利はあり、
それを行使する事は可能であったはずだが、
協力してくれたこと。

これらの事を踏まえて
ドキュメンタリー映画として
素晴らしい作品が誕生したと思ったが、
それが故に
今後も佐々木 久美は
冒頭に述べられたようなジレンマ
悩まされ続けるだろうとも思った。

しかし、
彼女ならば
上手く折り合いを付けて
そのジレンマと
向き合う事ができると信じておこう。


本作品で
私の世界観を広げてくれた
21人のメンバーと
7月31日に卒業した1人、
それを応援するファン達、
そして
最後までこの記事を読んでくれた読者に
心から感謝する。


では、また気が向いた時にいつか。

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