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PL学園硬式野球部1年(罰ゲーム編)
5限目が始まる前、僕はトイレの個室にいた。練習用のユニフォームを持って。
グラウンド1番
グラウンド1番。これは硬式野球部の中での一年生に課す罰ゲームだった。その罰ゲームはその名の通り、いかなる事があってもグラウンドに1番にいかなければいけない、という理不尽で意味不明な罰ゲームだった。
この罰ゲームを僕に課したのは一つ上のZ。Zは僕のことを嫌っていた。理由は分からないが理由もなく理不尽なことを僕にしてくるのだ。
ある時は、僕が風呂に入りに風呂場に行くと、Zが、
「何しにきたん?誰に許可もらってきたんや?」
と言って、頬に平手打ちをしてくるのだ。そんな事が日常茶飯事なので僕もZのことを避けていたのだ。
しかし、状況は悪化した。避けていた事態が起きたのだ。とある日のミーティングでZに名指しで呼び止められた。最悪の気分でZのところに行くと、
「明日から、グラウンド1番な」
と言われる。
グラウンド1番は数ある罰ゲーム中でもかなり面倒くさい部類の罰ゲームだった。何しろ毎回グラウンドに1番に行かなければいけないのだ。
グラウンド整備の用事があったり、ボール磨きが残っていたり、単純に足が速かったり、一年は全員が走ってグラウンドに行くので、ただでさえ1番にグラウンドに行くのは難しいのだ。
僕はそこまで長距離が速くないので、準備をするしかなかったのだ。
本当は校則で禁止されているのだが、先生にバレないように小さく、小さくまとめたユニフォーム一式を持って僕は、5限目が始まる前の休み時間にトイレに駆け込んだ。
制服の下に、ソックスを2枚履き、スライディングパンツ、アンダーシャツ、練習用ズボンを履いてその上から制服を着て5限目の授業を受けていた。
5限目の終わりを告げるチャイムが鳴るとダッシュで寮に帰り、制服を脱げばそのままグラウンドに向かう。
全力で走って誰もいない参道を抜けて、グラウンドに到着する。
時刻は午後4時。グラウンドのバックスクリーンに夕暮れの太陽が陰っている。
誰もいないグラウンドに1人、することもなく、グラウンドの周りにボールが落ちていないかの確認をしていた。
毎日、毎日、毎日同じことの繰り返しで、本当に日にちが進んでいるのかすらももはやわからない。この厳しい3年間が本当に終わるのかと僕は猛烈な不安を感じた。
誰もいないグラウンド、夕暮れ。僕は三塁側のベンチの裏で泣いた。涙が止まらなかった。嗚咽をしながら泣いた。
どれほど泣いたのか分からないが、しばらくすると一年がグラウンドに向かってる走ってきた。
僕は安堵した。1人じゃないんだ。鏡は見ていないが目はパンパンに腫れていたと思う。
涙をボロボロのアンダーシャツで拭う。
なんとか今日一日だけ頑張ろう。。
そう心の中で呟いた。
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