橋本治『生きる歓び』
橋本治『生きる歓び』
以下、引用。
「私は、恋をしていたことがあったんだ」と、志津江は大きくうなずくように思って、塩漬けの桜の花のついている方のあんぱんを、口許に運んだ。
その塩漬けの桜の花びらは甘くてからくて、それはそのまま、ほとんどそれ以前の自分の人生を嚥み下してしまうようなものだった。
「私は恋をしていて、それだからこそ、今までの人生は、すべて夢になってしまってもいいのだ」と思って、志津江はその四半分のあんぱんを、ゆっくりと食べた。
引用、終わり。
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