2003/4 日銀政策決定会合予想

今週の最大の注目イベントですが、これまでの植田総裁の発言から混乱はなさそうだという見方でコンセンサスが固まってきたと思っていましたが、昨日週末に産経新聞から「日銀、デフレの四半世紀を検証へ」と何か緩和政策を検証するかのような印象の記事が出てきたため、俄かに期待感が高まっています。
そこで様々な観点から、日銀会合を予想してみたいと思います。

①植田総裁率いる日銀
直近の衆議院予算委員会での発言では、基調的な物価見通しが一段と改善していく姿になっていく場合にはYCCを見直すと発言し、一段と改善とは、半年・1年先・1年半先の見通しがかなり強く2%前後になって、しかもその見通しの確度が高まってくると認識できた時と述べています。つまり、現時点では仮に短期的に2%を超えたからと言ってすぐにYCCを見直すということにはならないということです。
そういう意味では、今回会合時に発表される4月の展望レポートにて物価見通しが2%を超えてくるようであれば、今後一つの可能性としてYCC見直しの可能性が高まることは考えられますが、直近発表された需給ギャップがまだマイナスであることを考えると、まだそこまでの上昇とはならないと思います。
物価を見ていくうえで重要なのが恐らく7月辺りに春闘の最終結果が出てくると思いますが、それを受けて今後個人消費が強まりそうだとう確信がもてなければ、緩和を修正することには繋がらないと考えます。

また、内田副総裁の検証に対する考え方として、FRBやECBが1年や1年半かけてレビューを実施した例を出し、長期的検証について述べていますので、仮に今回検証するということがあっても、早期YCC解除に含みを持たせて金利が急騰するような反応にはならないように対処してくると考えます。

②政局
週末行われた衆参5つの補欠選挙では中身はともかく自民党が4勝1敗となり、補選前から3議席追加する形となりました。来年9月に岸田総裁は任期を迎えることになっていますが、支持率がアップといいますか、対抗野党が弱いうちに5月の岸田首相地元の広島サミットが終わった段階で解散という確率が高まっています。
日銀は、名実とも政府の子会社ですから(政府が55%の株を保有し、中銀の独立性という観点では方針ではなく手段の独立と世界では認識されている)、基本的には政府方針に従うことになりますので、もし解散総選挙となれば、政策の連続性を考えた場合に、選挙の結果が出る前に政策の変更は実施しにくくなります。過去にも国政選挙近辺では日銀は政策変更を実施していません。

予想
これらを考えると、もし日銀がYCCを修正するなら今回しかないということになります。巷で予想されている6月などはむしろ選挙の真っ最中で可能性は低いのではないでしょうか。
しかし、今回YCCの修正するには、これまでの日銀や植田総裁の発言から矛盾点が多過ぎ、そもそも現在の時点で、海外基準のコアCPI(日本のコアコアCPIは生鮮食品とエネルギーしか除いていないが、海外は食料品全般を除いている)を見てみると2%を下回っている状態で、需給ギャップもマイナスでは展望レポートでも物価見通しを大幅に上方修正することは難しく、緩和を止める理由がありません。
従って、今回変更がないだけでなく6月も、もしかすると今年一杯変更はないかもしれません。ただ、一応状況が変わった時の為に、長期検証の意味で、緩和政策の点検を開始するといったことで、政策の自由度を確保するという形になると予想します。

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