2023/4 日銀政策決定会合について

結果
①政策金利を-0.1%にYCCも±0.5%で現状維持
②フォワードガイダンスは、政府が5月からコロナの法的位置づけを格下げすることに伴い「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」という一文を撤廃。
③金融政策運営について、「1年から1年半程度の時間を掛けて」多角的にレビューを行うことを決定。

①も③も事前に植田総裁から情報提供がありましたので、完璧にその通りの会合だったはずなのですが、市場は円金利低下・円売りで反応しました。
海外勢の中には、そうはいってもいずれはYCCは撤廃の方向にあるということで軽い「日銀アタック」を仕掛けていたということでしょう。
今回の会合で、当面政策変更の可能性は低くなったと判断し、円ロングの巻き戻しだけでなく、絶対的な金利差(円金利が低い)が当面維持されることによる円売りも加わり、USDJPYだけでなくクロス円全てが上昇しています。

今後の展開予想
常識的に考えれば、市場で残っている6月のYCC解除期待はないと考えます。
本日発表された展望リポート内での物価見通しですが、2023・2024年度は上昇修正されましたが、中心値で見ると2023年が1.8%、2024年が2.0%と日銀のターゲット水準で、2025年には1.6%に低下する予想です。これでは継続的に2%とは言えません。
勿論、日銀は上振れリスクを述べていますが、その為には需給ギャップがプラス転する必要があります。需要が増えるためには、今年の春闘の結果が出てきて、更に来年も春闘が好調でということが重なって初めて30年デフレマインドに侵された日本国民が本当の意味でデフレ脱却する時なのかもしれません。

ただ、これとは違う観点から、少なくともYCC解除の可能性が出てくる場合があります。
それは為替のレベルです。
このまま円売りが続き、140円を超えた円安水準で揉み合った場合です。
まず、輸入物価が上がってきます。せっかくエネルギー価格は下がっても円安になれば、資源輸入貿易赤字国の日本では、意味がなくなってしまいます。賃金以上に物価が上がり、実質所得が下がってしまうと国民の不満が溜まり、政権は円安阻止を日銀に指示するでしょう。最近世界の中銀はインフレ抑制の為自国通貨高に誘導しようとするところが増えてますが、日銀も暗にそういった政策を取る可能性があります。そこで登場するのが、YCC解除です。
つまり、為替の水準次第ではいきなりYCC解除という可能性があり、その為に、今回③の検証をつけたのだと理解しています。一応1年から1年半と言っていますが、植田総裁の会見時には必要に応じてレビュー中にも政策変更は有り得るという発言もありましたように、今回の会合で政策の自由度は確保した上で、基本的には気長に需給ギャップが改善するのを待つということでしょう。
このまま135円程度で来年まで行くなら、2024年からYCC解除を皮切りに金融正常化、もしその手前で150円近くまで円安が進行してしまうのであれば、YCCを使って円高誘導、というシナリオを想定しています。

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