2月米雇用統計とSVB(シリコンバレー銀行)について

まず雇用統計の結果
非農業部門雇用者数は前月比+31.1万人と予想の+22.5万人を上回りました。業種別では、小売業が前月比+5.0万人、娯楽・接客業が+10.5万人と増加、輸送・倉庫業が▲2.2万人と減少しました。
しかし、市場は失業率が3.6%と前回の+3.4%から悪化したことや平均時給が前月比+0.2%と予想の+0.3%を下回ったことを受けて米金利低下+USD売りとなりました。
しかし、失業率は悪化しましたが、労働参加率が予想の62.4%を上回る62.5%となったことが原因ですし、平均時給も前年比でみれば+4.6%と前月の+4.4%から伸びが加速しています。
最近よくある良いところ取りですね。兎に角市場はFOMCタカ派期待による米債ショートが溜まりまくっており、それが解消される材料を探していただけでした。

SVB破綻問題
そういう意味では、米雇用統計だけでなくこの問題も米金利低下の材料に使われました。この問題は、米株下落から始まり、リスクオフによる安全資産買いという流れで米債買い戻しにたどり着いています。
それにしても、余程米債ショートは溜まっていたのでしょう。想像以上に米債は買われ、金利が低下しています。ついこの間0.75%利上げが織り込まれたFOMC3月会合ですが、本日は0.25%の利上げも70%程度しか織り込まれていません。
SVBについては、週末に米財務省・FRB・米連邦預金保険公社(FDIC)が共同声明で預金者を完全に保護する方法で破綻処理を行う方針を公表していますので、基本的には問題が拡散することはなさそうです。
そもそも、SVBの問題は、粘着性の低い預金をバックに債券投資を行っていたのですが、その対象がMBSでしかも満期保有を前提としていたものを積み上げていたことが原因です。これが、FRBが利上げを続ける中で、含み損が拡大し預金の引き出しに対応できなくなったということで、SVBの甘いリスク管理が主因であり、他の大手銀行では考えにくい事象です。
しかし、市場は、SVB以外にも同様な銀行があるかもしれないということで、リスクオフの地合いが継続していますが、これも米当局が鎮静化させるでしょう。

しかし、この問題が大事にはならなかったとしても、明日CPIが発表となりますが、仮に強かった場合でも3月の利上げは0.25%でとどまる公算が高いと予想します。但し、金利の最終到達点(ターミナルレート)は上方修正されると思います。
今回の件は、FRBが意図しない引き締め効果を生む可能性があり、つまり、米銀の与信姿勢が厳しくなるかもしれないため、政策金利と合わせて市場への波及効果を見極める必要があるかもしれないため、0.25%に留まると考えています。
ただ、CPIが2%まで下がる見通しはまだ相当先の話であり、それまでは、市場の期待対比タカ的なスタンスを維持しながら、個人の購買意欲を抑制する必要があるため、ターミナルレートは上方修正すると予想します。

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