2023/3 FOMC結果と今後の展開予想

FOMCは概ね予想通りでした。全会一致で0.25%政策金利を引き上げて4.75-5.00%としたほか、メンバーの金利予想DOTSに関しては2023年末の中央値5.125%と12月から据え置かれ、2024年は4.125から4.25%へ僅かに上昇、2025年は3.125%で据え置かれました。長期均衡金利も2.5%で据え置きとなりました。また、地銀の破綻を受けて金融市場に混乱が見られるため、利上げ停止についての議論があったことも明らかになりました。
GDP成長率見通しは、2023年は0.5%から0.4%へ下方修正、2024年も1.6%から1.2%へ下方修正されました。
インフレについてはPCEデフレータ予想を、2023年末は3.1%から3.3%へ、コアPCEデフレータ予想も3.5%から3.6%に、それぞれ上方修正しました。
一部リスクシナリオとして考えていたQT休止(バランスシート圧縮)については、現行のペースで進められることが決定されました。
パウエル議長は、FOMCが引き締めを継続する理由として、コアインフレの高止まりと労働市場の逼迫という、これまで出てきた数字通りの説明をしました。また、直近の金融不安については、現行の資金供給機構があれば、十分だという認識を示しました。しかし、流動性は大丈夫だったとしても、例えば金融機関の今後の与信判断が厳しくなったりなど、ある意味引き締めの効果が出てきているとも考えられるため、注意が必要だという認識を示しました。

市場の反応としては、いわゆる『Dovish Hike』という形となり金利低下、株上昇となりました。しかし、イエレン財務長官が「預金保険の適用範囲、大幅な拡大は検討せず」と前日までの発言を若干覆すようなことを述べたため、一気にリスクオフとなり、金利低下はそのままに株が切り返してマイナスとなりました。
為替では、金利低下=USD売りと株下落=USD買いが相殺されあまり動きが見られませんでしたが、USDJPYとEURUSDだけは、米金利の要素が強く、USDJPYは下落、EURUSDは上昇で反応しました。

今後の展開
ざっくりとした感覚で考えれば、年後半辺りに出る予定だった引き締め効果が思わぬ形で早期に出現したと考えればよいのではないかと思っています。
確かに現時点ではインフレは高止まりしていますが、銀行が預金流出を懸念して、例えば既存貸し出しを早期に回収しようとしたり、顧客の資金需要に対する貸出スタンスが引き締まったりするのであれば、実体経済を抑制することに繋がり、個人消費減退による物価低下に繋がることになります。
つまり、当面FRBも物価抑制のためのタカ派的なスタンスと金融不安を抑え込むためのハト派スタンスのバランスを取らなければならない時間帯であり、例え直近物価が上がったからと言って即利上げということにはならないということであり、注目が物価ではなく金融不安の行方に移ったということになると考えます。
従って、金融不安のヘッドラインで動きますが、最終的に、政府が救済の姿勢を見せている以上、今回の騒動は大事件にはならないと考えます。極論をしますと、政府はいくらでも通貨を想像できるわけで、銀行だけでなく救済しようと思えばどの企業であろうと救済できるわけです。
そこに、モラルの問題だったり、通貨を発行し過ぎてインフレになるという問題はありますが、救おうと思えば救えるという意味です。そこで、政府だけでなく世界中にリーマンショックの記憶があり、経済循環の中心である銀行の連鎖倒産などが起こった時のダメージが最もひどくなることが分かっているため、銀行の連鎖倒産は確実に回避してくるでしょう。
従って、悪いニュースが出てリスクオフのUSD買いになったところで、淡々とUSDのショート他通貨ロングポジションを積み増していく方針です。

ただ、中期的には、中小銀行の問題が落ち着き、株が上がってしまったりすると、個人消費が復活し、ただでさえ粘着性が高いサービス価格などが全く下がらなくなる恐れもあります。
仮にそうなった場合には、年後半にFRBが再び引き締めスタンスを強化してくるというシナリオも頭の片隅において、その場合には即USDロングに転換できるように柔軟に対応したいですね。


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