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ビジュアルノベルゲームレビュー⑥ (蒼の彼方のフォーリズム)

こんにちは
Markerです。

今回レビューするビジュアルノベルゲームは蒼の彼方のフォーリズムです。

数々のリメイクを出し、アニメ化もされた有名な作品です。

ビジュアルノベルゲーム好きなら一度は聞いた事はあるでしょう。

作品概要

spriteが発売した青春スポ根もののゲーム
PC版を原作として、PSvita版、Switch版、PS4版などに展開されている。
筆者はvita版でプレイした。
また、続編として(蒼の彼方のフォーリズムextra1・2)が発売されている。
ビジュアルノベルゲームとしては珍しい部活・スポーツを主題とした作品。
フライングサーカスというこの作品オリジナルのスポーツを中心として話が展開していく。
ヒロインは4人で、全8話構成。
1話から6話までは共通ルートで6話の終わりに個別ルートに分岐する。
個別ルートはヒロインが変わるだけではなく、展開もかなり変わり1話から6話までに伏線や謎が散りばめられ、個別ルートで明かされる。
個別ルートはそれぞれルートごとにスポーツや部活に関してのテーマがあり、その軸に沿ってストーリーが進んでいく。

明日香→真白→莉佳→みさきの順に分岐するが、
ストーリーやキャラの都合上この順番で攻略することが推奨であるが、前3人は誰から攻略しても物語の核心に迫る極端なネタバレはない為好きに選んでも構わない。(みさきはネタバレになる要素が多く最後を強く推奨)

(時間がなくて、1ルートしか出来ない場合でも明日香ルートを選択することがオススメ)

マネージャーの窓果は凄くいいキャラをしておりとても可愛いがバグにより攻略出来ない。

各ルートの概要

明日香ルート

テーマは「信頼と勝利」
少年漫画のような王道ルートである。
主軸としては才能がある明日香を強化指定選手にし、秋季大会で全国大会を目指すストーリー。
ライバル乾に勝利する為に、厳しい練習をしたり、選手とセカンドの信頼関係を深め、明日香との絆を営むルート。
明日香との絆や明日香自身の試合がメインである為、他のヒロインはサポートに回りこのルートに入るとかなり影が薄くなる。
明日香はメインヒロインかつ展開は王道である為本編ルートである。

真白ルート

テーマは「努力と約束」
主に真白の内面と努力、みさきとの関わりに着目したルート。
真白ルートではあるが、ストーリーにみさきが絡んでいることも多く、準みさきルートでもある。
このルートではみさきが部活を辞めてしまうが、みさきの復帰と真白の試合での初勝利を目標にストーリーが進んでゆく。
ストーリーや部活の方向性としては、
明日香ルートは才能をある人を伸ばし、チームや個人としてより高い結果に拘るルートだが、
こちらは技術的弱者を支え、努力による勝利の喜びを選手に感じさせるルートである為、前者と比べると部活的に優しいルートである。
因みに真白ルートは他のルートと比べると少し特殊で、FCよりも真白の個人に焦点を当てている為、秋の大会の目標は実質ないに等しい。
このルートの真白は凄く可愛いので必見である。
(余談だが、筆者の推しは真白である。)

莉佳ルート

テーマは「役割と成長」
莉佳の素顔と伸び悩みから脱却する為に試行錯誤していくルート。
ストーリーの展開としては、莉佳が自分を成長させる為に、志願して久奈浜学院で練習するが、黒渕というラフプレイの選手に出会い、その黒渕に勝つ為に特訓するというストーリー。
このルートはとにかく黒渕をライバルとして描かれる。ライバルの対策をしていく内に自分の突破点が見つかり、伸び悩みが解消されるというもの。
しかし、この黒渕に関しての設定が少し雑のように感じる。
莉佳が黒渕を大会で説得し改心するのだが、あれだけ狂人の様な姿からまるで全くの別人の様に変化するのは不自然である。
ストーリーや恋愛面でも良くも悪くもかなり王道なストーリーである為、少し面白みに欠ける。
他の3ルートの出来が良い為、必然的にこのルートの評価落ちてしまう。

みさきルート

テーマは「才能と挫折」
みさきが挫折を乗り越え前に進んで行くルート
また、このルートは主人公が自分と向き合うルートでもある為、昌也ルートでもある。
ストーリーの流れとしては、みさきは夏の大会で観た乾と明日香の才能の高さに挫折し、部活に来なくなる。
主人公がみさきを復帰させる為に執拗に追い回すが、みさきの心情と自分のトラウマが重なり、コーチの指導に身が入らなくなってしまい、部員や顧問から顰蹙を買ってしまう。
主人公昌也はみさきだけを才能のある乾、明日香に勝つ為に特訓させる。みさきのせいで挫折した自分の矜持とみさきの気持ちのためにも。
明日香ルートをスポーツや部活に置ける友情や勝利など正の面を強調した展開であるなら、こちらは才能による嫉妬や挫折などの負の面を強調した展開である。
部活やったことある人なら同じ地区に異次元の選手、優秀な後輩や初心者が入ってきた時、みさきの様な気持ちになる人はかなり多いんじゃないだろうか。(部活やっていて筆者もその様な気持ちになったことはある)
恋愛面に関しても友達の様な彼女であり、恋愛パートも面白い。
主人公自身のトラウマを解決するルートでもあるため、物語の核心となるルートでネタバレもかなり含んでいる。
エンド的にも事実上のTureルートと言っても良いだろう。
よって、先ほども述べたが最後に攻略することを強く推奨する。
非常に人間味溢れる展開でストーリー内容としては4人の中で1番面白いルートである。

まとめるとスポーツや部活に関しての教訓は
明日香ルートは「勝ち進むための練習、対策」
真白ルートは「努力の大切さ」
莉佳ルートは「伸び悩みからの脱却」
みさきルートは「挫折からの復活」
と言ったところだろう。

どのルートにも入らないとノーマルエンドになる。
おそらく、4人をクリアした後に出るFINALエンドはノーマルエンドの続きである。

作品評価

ストーリー  5 ☆☆☆☆☆

ビジュアルノベルゲームとしては珍しいスポ根物であり、部活を軸にストーリーが展開され出来が良い。全体的なストーリーは王道であり、学生青春を楽しめる。
物語の中心となる作品オリジナルスポーツであるFC(フライングサーカス)はルールや理論、グラジュの仕組みなど、どれも細く丁寧に設定いる為、架空スポーツとしての完成度は高く、科学的に可能ならば1つのスポーツとして確立できるレベルである。
共通ルートで夏大会、個別ルートで秋大会までとなっており分岐とエンドの区切りが良い為、1つの個別ルートをクリアし、他の個別ルートを進める際、スムーズに話に入ることが出来る点は◎
ゲームの都合上仕方のない部分だが、個別ルート中盤で(全体で見るとかなり終盤)で告白するため恋人関係になってからの進展が早い。
それにより、恋愛に関しては若干不自然に感じる所がある。
(ルートによっては告白した翌日に行為したり、告白前とは想像もつかないほどイチャイチャになる。)
しかしながら、基本的にFCがストーリーの軸を構築しており、ぶれない為、物語が綺麗に纏まっている点は言うまでもないであろう。

表現力 5 ☆☆☆☆☆

作画は非常に綺麗で人を選ばない。
キャラの輪郭や表情が丁寧に描かれており、完成度の高さを感じる。
スポーツを題材とした作品で試合中の動きを表現する為に、CGの多さはノベルゲーでもトップクラス。このCGの多さのおかげで、試合中の描写もわかりやすく表現出来ている。
また、試合中以外でもCGが豊富でほんの少しの表情変化でも1枚のCGを使っており、多様な表情変化をCG中に見ることが出来る。
次回予告はアニメの様に次の話がどうなっていくかを端的に説明する為、プレイヤーをわくわくさせる。
文章も主人公とヒロインの心理描写が上手に表現できており、国語的な面でもレベルの高い文になっている。

キャラ・登場人物 5 ☆☆☆☆☆

登場人物は多く、キャラは立っている。
共通ルートで正体やよくわからなかった人物は、個別ルートできっちり回収してくれる。
ヒロインは大まかに正統派寄りだが、みさきのようなノベルゲーでは珍しいような個性派ヒロインもいる為バランスは取れている。
ライバルや悪役はいるが根からの悪人はいない為、心地悪くはならない。
マネージャーの窓果はとてもキャラが立っていて印象的である。(極論いうとヒロイン4人よりキャラが立っている)

音楽・BGM 4 ☆☆☆☆

全体的に爽やかなBGMが多い。告白した際に流れるBGMやFCの試合の際に流れるBGMは熱く印象に残る。
また、グラシュの電源の音など印象に残るSEも数多くあり聴いていて心地が良い。

難易度 5 ☆☆☆☆☆

共通ルートはほぼ一本道。個別ルートは6話終了前の選択肢だけで分岐する為、非常に簡単である。
因みに個別ルートに入れなかった場合ノーマルエンドとなる。

ゲームテンポ・ストーリー長さのバランス 4 ☆☆☆☆

共通ルートは日常パートが若干蛇足な点はあるが基本的にテンポが良く展開がサクサク進む。
気がつけば6話の夏の大会まで辿り着けるであろう。
個別ルートは若干短めで秋の大会が終わるとエンドになる。
そのため恋愛要素も急展開であり、3年の夏の大会までのストーリーがあっても良いと感じた。
共通ルートから1つのルート自体は短いが、4つのルートクリアするまでの時間は25時間くらいでそこそこ。

やり込み要素 1 ☆

4つのルートをクリアするとやることがなくなる。
強いていえば共通ルートの選択肢集めだがほぼ展開は変わらない為集める意味はない。
(PS4はミニゲームもあるがおまけ程度)
よってやり込み要素はなし。

ゲームシステム 4 ☆☆☆☆

ゲームシステムは充実しており、自由に進めることができる。
しかし、BGMをおまけで聴けないことは良BGMが多いだけに痛い。
選択肢とシナリオの区切りでクイックセーブされる為、個別ルートプレイや特定の場面が見たい場合便利。
また、お気に入りの発言や好きなボイスを登録できる為、再び印象に残るセリフを聞きたい時重宝する。

総合評価 9.5/10

総評

ストーリーの展開が少し早く強引な所もあるが、全体的に見ると非常に完成されていてストーリーを楽しむ分には全く気にならない。
また、ストーリーだけではなくCGや文章力などの表現力の高さもこの作品の完成度を高くしている。
この作品で世間の評価を更に高めたものはみさきルートの存在であろう。
みさきルートは今までの3ルートと違い、部活をすることでの嫉妬や挫折、葛藤などの負の一面を強調したことで、蒼の彼方のフォーリズムプレイした全体として話の重みや感動をさらに深めるものになった。
私はこの点を非常に評価したい。
総合的に見ると間違いなくビジュアルノベルゲームを代表する名作である。
ビジュアルノベルゲーム初心者から玄人まで万人にオススメできる作品で、この作品をプレイする事で学生時代を思い出す人も多いであろう。


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