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贈与税(令和5年度税制改正大綱について)・税理士がつぶやく相続の基本

今回は、令和4年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」について、贈与税関する部分を書いていこうと思います。
以前から、年間110万円の生前贈与による相続税の節税対策ができなくなると騒がれていましたがどうなっていくのでしょうか?

なお、今回発表された税制改正大綱は、税制改正の素案となるものでありおおむねこの通りの改正が行われることがほとんどですが、変更される事もありますのでご留意ください。

贈与税とは?

個人から財産をもらった時にかかる税金です。
給料や売上などと違い、対価を支払はずに譲渡されたときに課税対象となります。
また、あくまで個人から財産をもらった時に限り、会社などの法人から受け取った場合は、贈与税ではなく所得税の課税対象となります。
贈与税の申告は、贈与を受けた年の2月1たちから3月15日までに贈与を受けた人が行います。

贈与税の種類

贈与税の課税方法には、二種類あり「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。
贈与を受けた人は、贈与した人ごとにどちらかの方法を選択することができます。

暦年課税

1月1日から12月31日までの一年間で受けた贈与額の合計が110万円を超えた場合、申告と納税の義務が発生します。(贈与税には110万円の基礎控除額が設定されているため)
この制度は、贈与税の対策や相続税対策としての生前贈与で毎年110万円以下づつ贈与していくという方法がとられています。

しかし、相続税には、生前贈与加算という制度があります。
この制度は、相続税対策として亡くなる直前に財産を贈与しておく事に制限をかけるためにあります。
亡くなった方の相続人に対する生前の贈与に対し「亡くなる3年前までの贈与は、相続財産として加算する」としています。
もちろん贈与時に贈与税を払っていれば払った分相続税から控除されます。
毎年110万円以下の贈与をしていた場合、亡くなる前3年間分の贈与は、贈与税はかからないですが相続時に相続税がかかります。

暦年課税に関する改正大綱

今回発表された改正大綱では、生前贈与加算の3年を令和6年1月1日より7年に変更するとあります。
また、延長された4年分については、総額で100万円まで相続財産に加算しないとしています。

持ち戻し期間について海外と比較すると、ドイツ10年、フランス15年(アメリカは、シャウプ勧告という別の制度)となっているので日本の現行3年がいかに短いかがわかります。
生前贈与による相続税対策は、かなり見直しが必要になってきますね。

相続時清算課税

この制度を選択できるのは、60歳以上の父母または祖母などから18歳以上の子や孫などで推定相続人となる人への贈与時です。
相続までの贈与の総額で2,500万円(特別控除額2,500万円)までを贈与税の対象ではなく相続税の対象のにすることができ、相続する際に相続財産として課税されます。

注意点

  • 一度選択すると、暦年課税に変更できない

  • 贈与額にかかわらず、贈与するたび翌年に申告が必要

  • 贈与した額の総額が2500万円を超えると贈与税がかかる

  • 使えるのは相続人となる予定の人のみ

贈与税の税率は、相続税の税率より高くなることが多いので2,500万円までであれば贈与税を考慮しなくてよいので節税になりますが、暦年課税の毎年110万円まで控除が使えなくなり贈与額の総額で2,500万円を超えると20%の贈与税がかかります。
また、暦年課税の場合は110万円まで申告の必要がありませんが相続時精算課税を選択した場合、少額でも贈与を受ければ翌年の2月1日から3月15日までに申告をする必要があります。
なのであまり使い勝手がいいとは言えず、毎年の利用者も低迷しているようです。

相続時生産課税制度に関する改正大綱変更点

今回、発表された税制改正では、相続時精算課税においても毎年の110万円の基礎控除を設けるとしています。
つまり、相続までに贈与した総額(2,500万円まで)から毎年110万円までを引いた額が相続税の対象になります。

その他の改正

上記以外に「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」についても改正大綱が公表されていましたが、こちらを書いてると長くなるので別記事にしたいと思います。

税制改正の目的

高齢化が進み高齢者から高齢者への相続が増えている中で消費の多い若年層や子育て世代への早期資産分配による経済の活性化につなげる狙いがあるようです。

終わり

冒頭で書いた通り今回公表された改正大綱は、素案であり例年通りなら1月の国会に提出され4月以降順次、執行される予定です。
変更される可能性もありますのでご注意ください。

生前贈与への影響のある改正大綱となりましたのこの相続税の基本シリーズとして書いてみました。
当税理士事務所では、生前贈与のご相談も受け付けておりますので気になりましたら是非ご連絡ください。

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