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租税法律主義【やんわり租税法 No.1】

こんにちは、マークです。第1回目のテーマは「租税法律主義」です。いっしょに学んでいきましょう。憲法や税法に関心を持った方ならこの言葉を見たことがないとは言わせない、といってもいいくらい有名な原理ですね。

結論からいえば、租税法律主義とは「国民から税金をとるためには法律が必要」という原理です。また、裏を返せば「国民は法律に従って税金を納める義務がある」と言い換えることもできます。前者は憲法84条に、後者は憲法30条にその根拠となる規定があります。

前者は課税権をもっている「国」に対する、後者は納税義務者である「国民」に対する規定です。

一言でいってしまえばここで終わりです。

えーっと、せっかくなので、これを少し深めていきましょう。笑
私たちが生活していると色々と税金を払わなくてはいけないシチュエーションにぶつかります。物を買ったら消費税、働いたら所得税、お金をもらったら贈与税、温泉に入ったら入湯税と、挙げたらキリがないくらい。

あまり払いたくない税金ですが、歴史を紐解いてみるとこの租税法律主義とは先人たちが勝ち取った権利と考えることができるのです。

例えば、昔話の王様やお殿様を思い浮かべるとなんとなく自由自在に税金をとっているイメージがありますよね。それぞれの時代、場所によって負担感はいろいろな程度があると思いますが、少なくとも古代〜中世の庶民たちは偉い人(権力者)の決めた通りの租税を納めていたケースが主流でした(課税権者による恣意的課税)。つまり、権力者によってどのように課税されても革命でも起こさない限り国民たちは従うことが普通だったわけです。

そんな中、租税法律主義の誕生は1215年のイギリスにおけるマグナ=カルタ(大憲章)に見られます。当時のジョン王が戦争の相手であるフランスに敗戦したことにより弱体化すると、市民側の意見が反映されたマグナ=カルタにより、王様だけでは税金を取ることができないことや、財産や身体を拘束するには法律の根拠が必要(適正手続)であることが規定されます。王様→国民と、課税権が移ったことになりましたね。

また、我が国においても旧憲法である大日本帝国憲法第62条で租税法律主義の規定がなされています(2項に例外規定)。日本においても思ったより古くからしっかりと規定されていたんですね。中学生の頃の教科書は「明治は天皇主権!昭和は国民主権!」とリードされるようになっていて「なんて明治は不自由な時代なんだ」と思ったもんですが、こと税金については意外と民主的な考えがとられていたようです。

このように、課税権が国民にあるとすることとする租税法律主義ですが、法律で税金の徴収の条件を定めることで得られる機能があります。
つまり、あらかじめ法律で課税の条件が定められていることにより、税金が発生する前に国民それぞれが税金の発生する条件を知ることができるのです。

「そりゃ書いてあればわかるでしょ」と言いたいところですね。
確かに当たり前といえば当たり前なのですが、例をとれば12月31日に行おうとしていた贈与を1月1日にズラすことによって納める税金が少なくなることもあります。損をするにしても得になるとしても、国民がその行動を選ぶことができるのは租税法律主義の機能といえるでしょう(法的安定性と予測可能性)。

租税法律主義は一言で言ってしまえば冒頭のような簡単に説明できる原理ですが、その枝葉にも様々な理論があります。議論の展開は大切なことですが、この根幹にある考え方はそれぞれの枝葉の先から常に戻ってこられるように意識しておくべきですね。

《参考文献》(発行年順)
 田中二郎「租税法(新版)」有斐閣 1981年
 清永敬次「税法(新装版)」ミネルヴァ書房 2014年
 金子宏「租税法(第二十三版)」弘文堂 2017年
 谷口勢津夫「税法基本講義(第6版)」弘文堂 2018年

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