📗【文書版】礼拝メッセージ『天にいます私たちの父よ』 新約聖書　マタイの福音書第6章9節前半　2024年5月5日

📗今日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
📗礼拝メッセージ『天にいます私たちの父よ』
 
新約聖書　マタイの福音書第6章9節前半　2024年5月5日
ですから、あなたがたはこう祈りなさい。
　『天にいます私たちの父よ。
 
　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。
 
　皆さんは、リンカーン大統領と息子のエピソードをご存じでしょうか？
 
　彼は4人息子がいたんですね。しかしそのうちの三人は早くに亡くなるんです。自分よりも先に死んでしまうんですね。
　長男だけが自分よりも後まで生きるのですが、次男三男四男は早くに亡くなります。
 　その四男はタッドという名前でした。この子は18歳で亡くなるんですけど、南北戦争が起こった時には8歳で生きていたんですね。
 
　この南北戦争は大変悲惨な戦争だったんですけど、南北戦争が起こった年に、お気に入りの三男が死んでしまう。リンカーン夫妻はがっくりして、それだからこそでしょうか、ますます一番末っ子のそのタッドという男の子が可愛くて可愛かったののですが、南北戦争がどんどんどんどん進んでいくにつれて　ホワイトハウスはピリピリピリピリした空気で、もうその執務室の中によっぽどの使命のある人じゃないと入れないという、すごく張りつめた緊張状態になっていました。
　めったなことで幹部以外はその空間に入り込むことはできないのに、ある時、その末っ子のタッドが会議の最中に入って来て「ダディ、ハグして」って言うんですね。
　リンカーンは「今それどこじゃない」って言っでしょうか？そうじゃないんですね。「よく来てくれた」と言って抱き上げたというエピソードが残っているんです。
 　一般国民の立場であるならば、たとえ大学教授であっても、大企業の経営者であっても、戦争中の大統領の執務室に入って行くことはできません。
　しかし息子であるなら、いつでもパパのところに抱きついて行くことができるわけですね。
 
　さぁ今日は、父よ、っていう呼びかけですね。「天にいます私たちの父よ」この呼びかけは、まさにそういう、息子タッドの「ダディ、ハグして」というのと、非常に通じるところがあるものなんですよね。
 
　今日から、主の祈り、に入って行きます。この主の祈り、私たちは礼拝ごとにお祈りしますね。毎日している方もいらっしゃるかと思います。暗記していらっしゃる方も多いと思いますので、早く祈れば、1分もかからない祈りですよね。ところが宗教改革者マルティン・ルターは、これをひとつの祈りを祈り、その重みをはかり、思いをめぐらすと、一つの祈りをするのに4時間かかるって言っているんですよね。そうすると、この主の祈りの中には、7つの祈りが入っていると数えられますので、7×4ですでに24時間でも足りないということになりますね。それくらい深い祈りであるということなんですね。
ですから本来、一つ一つのことばについて、1時間説教しても足りないと言えるのかもしれないんですけれども、せめてそのエッセンスだけでも、今日はその祈りの呼びかけの部分ですので、その呼びかけだけで1回のメッセージ、そして1週間ごとに一つの祈りを集中して解き明かす、主の祈りだけで、おそらく8回か9回のメッセージになると思います。あまり急ぎ足にならないで、じっくりと味わって行きたいと思います。
 
　そして今日は、さらに、父、ということについて集中していきたいと思います。それで天にいます、ということばがついていますから、もちろん地上のお父さんではなくて、天の父なる神さまのことですね。父なる神への呼びかけである。
　このことばは何でもないことのように思いますけれども、イエス様がこの祈りを教えられるその唇が動く時にですね、聞いている皆は耳を疑ったと思うんですね。そんな祈りは、パリサイ人や律法学者の口からは聞いたことがない！
 
　このマタイの第6章は、山上の説教の一部でしたね。この山上の説教は、パリサイ人律法学者たちの、口伝えの律法、イエス様が「先祖たちの言い伝え」と呼んだところの「口伝律法」というものへの批判、と、律法の本来の心、というものが―本来の神のみこころ、と言った方がいいでしょうか―それが貫かれているのが、山上の説教だと言っていいんですね。
　ですから、この主の祈りがイエス様の口から出るまでの文脈としては、パリサイ人律法学者たちは、目立つようにわざわざ四つ角に立って祈ったり、尊敬されようとしてわざとらしくやるけれども、あなたがたはそれではいけない。むしろ奥まった部屋で、密室で、ひとりの時間をもって、父なる神さまとの親しい時間を持つ、という、そういう祈りをしなさい、そう主イエスはお語りくださったんですね。
　しかもその祈りの、神さまへの呼びかけ方は、当時の人からすれば、「えっ！？そんなんでいいの！？」というくらいの物凄い単純なものだったんですね。
　というのも、パリサイ人律法学者たちの祈りは、たとえば、
 
「天地万物の創り主にして、歴史をすべ治め、神の民イスラエルを選び出し、とこしえの栄光に輝きたもう全能なる神よ…」
 
　これくらいの呼びかけをしないと、神さまに対して無礼だと考えていましたし、民衆にもそう教えていました。
　ところがイエス様の祈りはですね、「父よ」から始まる祈りなんですね。「父よ」が最初に来る。それに、私たちの、そして、天にいます、と続くんですね。語順で言えば。
 
　でこの父よ、という神さまへの呼びかけで始まる祈り、これを、祈ることに、痛みや苦みを覚えられる方がいらっしゃるんですね。それはクリスチャンの中にもいらっしゃるし、牧師先生の中で、昔はこの主の祈りの呼びかけを呼びかけるごとに、心の痛みを覚えた、という正直な告白をなさる先生がいらっしゃいます。
　それは、一つは、先日私は共同親権の問題で、モラルハラスメントやＤＶ・ドメスティックバイオレンスから命からがら夫から逃げ出したシングルマザーやその子供が、この穴だらけの法案によって、さらに苦しめられるということを少しだけ以前の説教の序盤にお話しましたけれども、やはりその牧師先生がたも、そこまでは極端にはいかなくても、お父さんには殴られた経験であるとか、どんなに頑張っても認めてもらったことはないという経験であるとか、お父さんは気難しくて、気分によって感情がコロコロ変わり怒鳴られたことはあっても、ちゃんと向き合ってちゃんと叱ってもらったことはないであるとか、そういったことで、求道中や、信仰の初心者の時には、「父よ」と神を呼ぶだけでも、もう「父」という言葉自体を発する時に、嫌な感情がよみがえってくるというですね、一種のトラウマのようなものだと思うんですけれど(私もほんの少しだけ分かるような気もしますが)。実はこれは現代だけの話だけではなくて、500年前のルターも同じことを言っているんですね。ルターのお父さんは支配的で、子供を殴って育てる人だったから、やはり「父よ」と神に祈りにくかったそうなんですね。
 
　では、そういう場合はどうすればいいんですか？お父さん、父、という言葉のイメージを変えればいいんですね。それを現代では「親替え」なんていう表現をする牧師もありますけれども、父なる神さまは、地上のそういうお父さんとは全く違う、良いお父さんなんだ、っていうことなんですね。
 
　良いお父さんと言えば、またちょっと緒方正人さんの話をしますが、水俣病患者認定運動の最前線で闘った方ですね。
 
　この方のお父さんは、水俣病で苦しんで亡くなるわけなんですけれども、緒方正人さんは非っっ常にお父さんのことを尊敬しているんですね。水俣病で亡くなったので、多少美化しているところがあるかも知れませんけれども。
　緒方さんのお父さんは、父性とは何かという見本のような人で、漁師で、網元で、まさに聖書で言えば族長のような方で、仲間の漁師であるとか、そういう人びとの良きまとめ役として、大変優れた方だったそうです。先見の明があって、他の漁師たちの誰よりも何重にも何重にも深いことを考えていて、一族郎党を守るという良きリーダーとしての才覚が素晴らしかったそうなんですね。
　軽々しくしゃべる方ではなかったそうなんですけれども、漁に関する目線というのは、非常に鋭いところがあって、漁師たちが話し合っていても、お父さんが、一つ咳をするだけで、皆が即座に黙るっていうんですね。その次にお父さんの口から出る言葉にどんな重みがあるかと、その一言を待つわけですね。そういう威厳と権威があって、皆が尊敬して一目置いているわけですね。
　そして、漁師には珍しく、山を所有していた。そして、木を植えなさいと指導していたっていうんですね。それは、理由があって、一族郎党が50年先100年先も食べていけるように、そんな先の子孫たちや漁師たちの子孫たちが生きて行けるようにっていう、そこまで配慮している方だったっていうんですね。
　そして、曲がったことが大嫌いで、たとえば一族郎党の中に、子供の障害者がいると。それを他の子供たちが、からかったり、いじめたりする。そうすると、いじめている子に向かって、お父さんが火箸を投げたっていうんですね。もちろん当たらないようにですけれども、それも今であったらＤＶって言われるかもしれませんけれども、私はある意味で、弱者をいたぶるような曲がったマネはするなと、悪いことに関しては徹底的に厳しい、ある意味で、一族の警察のような役割も果たしたお父さんという、そういう面があると思います。
　そして息子であった正人さんをとっても愛していてですね、おでこをすり寄せるっていうんですね。そして、「俺の魂を分けちゃる」っていうようなことを言うわけですよね。
　私はそれを読んでちょっと創世記を思い出しまして、神は人間を創られた時にいのちの息、霊、というものを吹き込まれたと聖書にありますから、人間である限り、聖書を持たない民であっても、本能的に、人間には、霊とか魂とか、そういうものが宿っているということが、どの民族でも分かるわけなんですけれども、だからお父さんは魂って言うわけなんですけれども、奇しくも、自分の魂を分け与えようと息子にひたいをすり付けるお父さんの姿は、神の子として作ったアダムに、ご自分の霊を吹き込むという父なる神さまの姿を彷彿とさせるような気がします。
　ま、そういうふれあい、をもって、一族を愛し、子供を愛するという、お父さんの姿は、―私は普段、家父長制・パターナリズムというものには多くの問題が潜んでいるなと思う者ではありますけれども、それでも―こういう良き父性、お父さんの姿、というものには、やはり素晴らしいものがあると、思っております。
　
　そして聖書が言う「父」というイメージは、これが物凄く近いんです。そしてさらに、聖書に出てくる父、信仰の父アブラハムなどは、エジプトの王様に対して自分の妻を妹だと偽って差し出して、自分を守ろうとするという情けないところがありましたけれども、父なる神は、そういう欠点が無い。地上の父親のように、立派な面もあれば自分勝手な面もある、というのではなくて、完全な方なんです。
 
　「完全な方」そう言うと、何か抽象的だなと、理論とか観念の世界だな、と思われるかもしれませんけれども、具体的に、父なる神のお姿を知るというか、父なる神と親しく出会うという体験をすることができます。どうやってか、それはイエス様ご自身が、
 
わたしを見た人は、父を見たのです。
 
　と、ヨハネの福音書第14章9節でおっしゃっている通りに、父なる神がどんなお父さんか知りたければ、イエス様のお姿を見ればいいんです。イザヤ書の第9章6節では、イエス様は「永遠の父」と呼ばれています。イエス様は父なる神と全く同質の存在であり、永遠の父であるお方でもあるんです。
　では永遠の父でもあるイエス様はどんなお方ですか？福音書のみことばに触れていく中でこのイエス様のお姿を見て、イエス様と私の出会いを繰り返して行けばいいんですね。イエス様は、優しくて、賢くて、忍耐深くて、何でも知っていて何でもできて、頼もしくて、それなのに全く威張らず、謙虚で、気配りをしてくださって、しかもちゃんと向き合ってくれて、曲がったことには厳しく叱ってくれて、人間として尊重してくれる。あなたのことを決して見捨てることは無い。あなたのことを全部知った上で、それでもあなたに対する愛を決して変えることは無い。そして、あなたのために犠牲を払うことを、何一つ惜しまないんです。その究極がどうなったでしょうか？犠牲を惜しまなかったからこそ、天のお父さんとの断絶があった私やあなたの為に、その断絶を回復させるために、イエス様は命を捨てて下さったのです。あの十字架の上で。子のために命を捨てるほどに愛する父親がいるでしょうか？6～7年前だったか、東北地方で大寒波の中で、小学生の娘さんを自らの体を挺して寒波から守って、娘の命を救い、死んでいったお父さんがいます。それもすさまじい愛の話ですが、イエス様のあなたへの愛は、それにもまさって、すさまじいのです。
 
　それで父なる神は、このイエス様と、同質の方ですね。全く同じお方です。三位一体ですから。ヨハネの福音書第1章12節には、イエス様のお名前について。―これは名っていうのは聖書では本質とか全存在っていう意味なんですけれども―
 
ヨハネの福音書第1章12節
 
しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとなる特権をお与えになった。
 
　と語られています。イエス様は神のひとり子ですが、それと全く同じ、神の子とされる特権が与えられたんですね。十字架によって罪がゆるされて、天の御国をイエス様と共同相続人として、御国の世継ぎとされたんです。どんなに物凄いことなのか地上のことばで言い表せないと思いますね。
　だからこそ、ここもこの十字架と復活、というのが、背景として語られています。福音書というのは４つとも、じつに、どの聖句も、十字架と復活を背景にして書かれている、そういう性質の書物なんです。だから、父よ、と祈る時にも、十字架と復活によって、全能の神を、天の父よ、と私たちは、心痛まずに、呼べる者となったんです。
　
　父よ、ということばに、「私たちの」がついています。これは、一人で祈るだけではない。教会の中で祈る時に、教会の兄弟姉妹、仲間、信仰の友と一緒に祈るということがあります。主の祈りを礼拝の中で一緒に祈るのはそのためですね。
　それと同時に、私たちの、とは、もっと広いんです。教団教派を越えて、この世界大の、教会の皆と共に祈る。そういうスケールの大きな祈りである、ということを覚えて感動することもできます。
　でももっと大事なことは、私たちの、というのは、人間だけを考えなくてもいいんです。ある人はこう言いました。この祈りの呼びかけで、私たちはイエス様と肩を並べて祈ることができる。つまり、神と共に祈る、っていうことなんです。私たち、っていうのは、私と神さまと一緒に祈る。そういう豊かな、神さまの交わりの時なんですね。(アシュラムでも言う)密室っていうのはそういうことでもあります。
 
　そしてさらに言えば、ここでイエス様がおっしゃった「父よ」っていうことばは、聖書学者が口を揃えて言うのは、アラム語の「アバ」っていうことばなんです。「アッバ」と言われることもありますけれども、よく言われるのが、かしこまった、お父様、父上、ということではなくて、「おとうちゃん」「パパ」こういう言い方である、ということですね。
　そしてさらにある聖書学者だったと思いますけれども、こういうことも言っているんですね。アバというのは、一応アラム語だけれど、本当はアラム語でも何語でもないんだ。赤ちゃんが親を見て、そしてそのお母さんやお父さんに信頼して「あばあばあば」っていう言葉にならない言葉を発する、その時の声のことだ、って言うんですね。
　そんなにですね、幼児がお母さんお父さんを信頼しているように、天のお父さんを、信頼して、呼んでいいんだよ、って、今日イエス様は、あなたに呼びかけておられます。天の父なる神さまは、神の子とされる特権を与えられたあなたに「あなたはわたしの愛する子、わたしはあなたを喜ぶ」って、声をかけておられます。
 
　むすびに、少し長いですが、ヘンリー・ナウエンの「愛されている者の生活」という本の中から、一つの文章を抜粋しながらご紹介したいと思います。この本は、ある一人のジャーナリストの方に向けて語るように書かれた本です。でも、私たち一人一人に語られていることばとして、聞き取るように促されている文章でもあると思います。
 
自己拒否は、霊的生活の最大の敵です。それは、私たちを「愛する者」と呼んでくださる聖なる声に反することです。愛されている存在であることは、私たちの存在のもっとも中心的な真理の表現なのですから。
 
私は自分は愛されているという確証を与えてくれる人や何かをいつも求めていました。それはまるで、「あなたはわたしの愛する子、わたしはこれを喜ぶ」と、自分の存在の深みから語りかけてくる声を拒み続けてきたかのようです。
 
その声はいつもそこにあったのに、私は、次のように呼びかけてくる大きな声を聴くことの方に、はるかに熱心だったのでしょう。「自分に価値があることを証明しなさい。時流に乗り、注目を浴び、威勢のよいことをしなさい。そうすれば、 あなたがそんなにも欲しがっている愛は得られる」。そのうち、私の心の沈黙 (silence)と静まり(solitude)に語りかけるやさしい穏やかな声は聴き取れなくなり、あるいは聞こえたとしても、説得力を欠くようになってしまいました。
 
私は、成功による報酬や称賛も受けたことがあります。しかし、なぜかそのような愛のしるしはすべて、愛されていることのしっかりした確信を与えてくれませんでした。自信に溢れているように見えても、その裏ではいつもある問いが残りました。「私にこれほどまで注目してくれる人々が皆、もし私の本当の姿を見て、それを知ったとしても、それでも私を愛してくれるだろうか」と。
 
この悩ましい問いは、心の暗い部分に根を張って私を脅かし続け、「愛する者よ」 と 呼びかける静かな声が聞こえる大切な場所から、私を追い立てました。
 
私がここで何を語っているか、分かってくれるでしょう。というのは、あなたも私と同じように、「誰か」が、あるいは「ある出来事」によって、ついに自分の願っていた幸福感が与えられる、と願っていないでしょうか。「この本が、この考え方が、この手段が、この旅が、この仕事が、この国が、この人脈が、私のもっとも深い願望を満たしてくれるかもしれない」と、よく期待するのではないでしょうか。
 
しかし、そのような神秘的な時を待ち続けているかぎり、つねに不安とあせり、 欲望と怒りに捕らわれて、決して満足することなく、あたふたして走り続けるしかありません。これこそ、ひっきりなしの忙しさに私たちを追い立てる強迫観念であり、同時に、長いあいだ走り続けても、どこに行き着くか分からないために、私たちを悩ませるものです。

(中略)

私たちは愛されている者です。両親や教師、結婚相手や子供や友人が、私たちを愛したり、傷つけたりするはるか以前から、私たちは深く愛されています。これが私たちの人生の真理で す。その真理を、あなたも受け取っていただきたい。それは、「あなたはわたしの 愛する子」という言い方で語りかけてくる真理です。
 
しっかりと心の耳を澄ませてその声に聴き入ると、私の存在の中心から、こう語りかける声が聞こえてきます。
 
「わたしは、はるか以前からあなたの名を呼んだ。あなたはわたしのもの、わたし はあなたのもの。あなたはわたしの愛する者、わたしはあなたを喜ぶ。わたしは、 あなたを地の深いところで仕組み、母の胎の内で組み立てた。わたしは手のひらであなたを形造り、わたしの懐に抱いた。わたしはあなたを限りないやさしさで見つめ、母がその子を慈しむ以上に、親しくあなたを慈しむ。わたしはあなたの頭の毛のすべてを数え、あなたのすべての歩みを導く。あなたがどこに行こうと、わたしはあなたと共に歩み、あなたがどこで休息しようと、あなたを見守り続ける。あなたのあらゆる飢えを満たす食物を与え、すべての渇きを静める飲み物を与える。わたしはあなたから顔を隠すことをしない。あなたは自分のようにわたしを知り、わたしは自分のようにあなたを知る。あなたはわたしに属する。わたしはあなたの父であり、母であり、姉妹であり、兄弟であり、恋人であり、配偶者であり……………そう、 あなたの子どもですらある。あなたがどこにいようと、わたしはそこにいる。わたしたちを引き離すものは何もない。わたしたちは一つである」
 
　私たちが「父よ」と呼びかける前に、天のお父さんの方が、あなたにそう呼びかけてくださっているのです。お祈りをいたします。
 
アバ父よ、天のお父様。愛する天のお父様
あなたを信頼します。あなたは限りない愛をもって、そして素晴らしい父性をもって、母性ももって、もしかしたら子供としての愛をもって、無条件の愛で私たちを愛してくださり、その愛が極まって、ひとり子主イエス・キリストを、この世に送ってくださるまでになりました。私たちの神との限りない断絶という罪から、そのような恐れ多いことは断じてできない関係であったにもかかわらず、神と愛し合う関係へと私たちを取り戻すために、十字架と復活のできごとがありました。この愛によってあがなわれた私たちは、日々、父よ、と親しく呼びかけながら、愛する子よ、という呼びかけを日々聞きながら、その愛にいつも満たされて歩めますようにお一人一人を祝福して世に遣わしてください。主イエス・キリストの御名によって祈り願います。アーメン。