📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『魂の医者からの招待』新約聖書　マタイの福音書第9章9～13節

一昨日2023年6月11日(日)の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
✴️礼拝メッセージ『魂の医者からの招待』

新約聖書　マタイの福音書第9章9～13節
9　イエスはそこから進んで行き、マタイという人が収税所に座っているのを見て、「わたしについて来なさい」と言われた。すると、彼は立ち上がってイエスに従った。
10　イエスが家の中で食事の席に着いておられたとき、見よ、取税人たちや罪人たちが大勢来て、イエスや弟子たちとともに食卓に着いていた。
11これを見たパリサイ人たちは弟子たちに、「なぜあなたがたの先生は、取税人たちや罪人たちと一緒に食事をするのですか」と言った。
12イエスはこれを聞いて言われた。「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人です。
13『わたしが喜びとするのは真実の愛。いけにえではない』とはどういう意味か、行って学びなさい。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためです。」

主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

ある仏教の僧侶の方が、カルト団体からの脱会支援の活動をしていらっしゃる方ですけれども、この方がカルトからの脱会活動をするようになったいきさつについて、だいたいこんな内容のことを言っていらっしゃったんですね。
若いころに、ある仏教系の、○○宗○○会、というカルト化したグループに、勧誘されて入りまして、そのうちに、まぁ私たちのことばで言えば献身して、フルタイムのその団体のスタッフになったそうです。
それで、この方が、フルタイムのスタッフになって、何の仕事をさせられたかというと、いわゆるネット工作なんですね。ネットの記事で、その団体について悪く書かれている、批判的な文章を見つけては、削除依頼をメールなどで送る、と。そして、消さなければ、裁判にかけますとかなんとか言ってーなんとか法何条によりとかなんとか言うんでしょうけれどもーそうやって、ネット上でその団体の悪いイメージを払しょくさせるという仕事をしていらっしゃったそうです。
でも後に脱会しまして、今度は、仏教のまともな宗派の僧侶になった。そうしますと、どんどん相談に来られるわけですね。「私もカルト団体の被害に遭いました。家族がカルトにはまって困っているんです。」そんな相談を人々からどんどん受けるようになった。そうすると、自分もカルト化する危険を感じたんだそうです。
どういうことかと言いますと、カルト問題で困って相談してきた人々が皆、いや、助けてください先生先生、って言うわけですよね。もうアドバイスすると、一言も聞き漏らすまいとばかりに聞いてくれるわけでしょう。こうなると、「悪いカルト、そして正しい私」という図式がいつの間にかできて、いやその図式が聞き手の間にもいつの間にかできて「悪いカルトと正しい先生」というですね、そして、何か教祖みたいにあがめられるといったような危険を感じたのでしょう。
これが実は今日の一つのポイントでもありまして、「正しいコチラ側」と感じることに一つの危険というか、聖書のことばで言えば罪というのがあるわけですね。

正しい私、もしくはまともな私、と、悪いカルト、という図式で、私たちはともすれば考えやすいところがあります。私もですね、動画投稿などでもカルトの批判をしています。だからですね、まぁ一番この危険に陥りやすいかもしれません。
ある人が、カルトとまとも、の間には、深い溝ではなくて、そうですよ、報道なんかでも、いかにも特殊な世界であるかのように、おどろおどろしい音楽などをかけて、まとも側とバッサリ分けるような報道が多いんですけれども、カルトとまともの間というのは、深い溝ではなくて、薄い膜だっていうんですね。
そうだと思います。私たちは被害を受けている人々、弱者とされている人々の側に立って、その人たちを助けたり、その人たちの味方になったりするべきですし、構造的な暴力であるとか、差別や、抑圧などに対して、きちんと批判をしていく、という目線は必要です。入管問題などに対してもそうですね。
でも同時に、私たちは批判をするその時に「正しい私、正しいこちら側、あるいはまともな私、まともな私たち」そして「悪い向こう側」と思ってしまえばですね、その最初のお坊さんが言ったような、小さな教祖になっていく、という危険性があるということですね。ですから私たちは常に、批判的思考力というのは、周りを批判して自分は正しい、とするためにあるのではなくて、自分自身も間違っているかもしれない、というふうに批判的に、また複眼的にー別の角度からもということですねー自分自身をも見て行く、ということがとっても大事だと思います。

そのことが、今日、ご一緒に神のことばとして聞きましたマタイの第9章の9節から13節に登場する、2人のイエス様に出会った人物と、深くつながっているんです。

2人、というよりも、二種類の人物、と言った方が正確なんですけれども、ここにパリサイ人「たち」、とありますね。でも、発言は一人分の発言ですから、何人かいたパリサイ人たちの中の1人にスポットライトが当たっていると言っていいでしょう。イエス様の弟子たちもいますが、そのパリサイ人から質問を投げかけられるだけで、何も答えていません。イエス様がお答えになっています。ですから、今日舞台で主にスポットライトが当たっているのは、発言をした、パリサイ人の中の1人と、イエス様と、そして、もう一人、取税人のマタイですね。この短い今日の箇所の中ではもちろんイエス様が一番ですが、マタイとパリサイ人とがが、主役級に、スポットライトが当たっていると思います。

このマタイという男、取税人と言いますが、教会ではこの取税人についての説明を何度も聞くと思います。ザアカイさんの時が多いでしょうか。でもザアカイさんに限らず、とにかくこの当時の取税人というのは今の税務署職員とは違って非常に嫌われ者でした。
今の税務署の職員さんは、ほとんどの場合、嫌われ者ではないでしょう。きちんとした、どちらかというと立派な仕事というイメージがあると思います。しかし、この当時のユダヤの税金を取る仕事は、全ったく事情が違います。
ちなみに実は給料ゼロだったんですね。えっ！？ゼロ？どういうこと？実は役人ではありません。
　どういうことかというと、ローマからの請負だったんですね。委託でして、入札制だったんですね。ローマは属国にはいつもそうしていましたが、税金を取る権利をオークションにかけまして、属国のユダヤ人から募集する、そしてユダヤ人の中で最高額をつけた者が、まぁ5000万円とか、そういう値段で落札しまして、そして、その税金を取る権利を買うわけですね。
　そうすると、後は、取税人はローマからの給料はゼロであっても、税金を取って行く中で、もう腕次第で、いくらでも上乗せして、その上乗せした金額を自分のふところに入れてしまえるわけですね。ローマには、決まった金額を納めればよろしい。後は、取税人はいくらでもふっかけて儲けることができてしまうわけですね。マタイは通行税を取っていたようでして、一説には、関所みたいに、どこにでもその通行税を取る収税所を置くことができたそうで、ガリラヤ湖を通る船からも税金を取ることができたようですね。それで、住民が、そんな横暴な！と声を上げたとしても、マタイが働いていたカペナウムの町にはローマ軍の駐屯地があって、マタイたち取税人に逆らえば、ローマの兵士たちがすぐがちゃがちゃと「なんだなんだ？」とかけつけてくる、と、そういうことで、マタイは、ローマの権力をかさに着て、いばっては、悪どく儲けることができたわけですね。ですから、多くの牧師先生はおっしゃいますけれど、税務署の職員ではなくて、マフィアとか、暴力団をイメージすれば一番近い、って言うんですね。
　おまけに、この税金が、自分の国のために、この場合はユダヤ人はユダヤの国のために使われるのならまだユダヤの住民は納得はいったでしょうが、全額、ローマのために使われます。そういうものだったんです。当時は。納めた税金を他国に流してしまう。同じユダヤ人なのに。しかもローマ人という、当時のユダヤ人が、まことの神を知らない穢れた異邦人と呼んで軽蔑した人々と絶えず収税所で接触し、さらにはそのけがれた異邦人の国ローマにわれわれのお金を流すという、恥を知らぬ売国奴、と呼ばれて忌み嫌われていたわけですね。メシアが来られたら、真っ先に滅ぼされるのは、この取税人である、と、当時のユダヤでは考えられていたような、同族から忌み嫌われていた人々、それが取税人だったわけです。
　
　一方、パリサイ人というのは、それとは逆のタイプの人間と言ってもいいと思います。私たちはパリサイ人たちは、イエス様のかたき役のように聖書に登場することがほとんどなので、悪役のイメージが強いかもしれませんが、彼らは立派な人たちです。とにかく、当時のユダヤでは、人々が堕落して、モーセの律法もきちんと守ろうとせず、ローマの植民地になって以来、進んでお金のために、ローマの兵士になってみたり、進んでそうやって取税人になったりする人々が出てきたりと、生活面でも信仰面でもどんどんユダヤの国が堕落していっている中で、これではいけない、と、高い理想をもって、自らに厳しい、清貧を重んじる生活を心がけたり、特に一所懸命、自分たちは律法をきちんと守るんだ、まじめで正しい生活をするんだ、とやっていた人たちです。パリサイ人ということばの語源は、分離と言う意味だそうですね。自分たちは取税人のようなあくどい人々とは違う、と自らを分離してですね、まじめで一所懸命な人たち、そしてそれゆえに、民衆から尊敬をされていた人たちです。

　ですからよく言われます。パリサイ人はどんな人か知りたければ、教会の長老・役員さん、あるいは、牧師を見ればいい。しかし、こう見ることは、ちょっと気をつける必要があると思うんです。
　というのは、教会の中である人がパリサイ人、ということではないと思うんですね。あの人はパリサイ人であの人は取税人と分けるのは、まさにパリサイ思考であり、私たちはもちろん、聖書を読む時聞く時に、自分をイエス様以外の登場人物に当てはめるわけですが、誰もが、イエス様以外の全員にあてはまる。誰であっても、ある時にはパリサイ人であり、ある時には取税人である、いや、むしろ、私やあなたという人間の中に、パリサイ人も取税人も住んでいる、と言った方がいいでしょう。

　私はですね、今日のみことばの中で【12～13節スクリーンに映す】、

「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人です。

わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためです。」

　ということばが愛唱聖句にするほど大好きなんです。なぜ大好きかというと、それは自分が病人だと思っているからです。自分が罪びとだと思っているからです。こんな者に、イエス様は声をかけてくださって、私をも救うために来てくださった。そして見つけてくださった、と感動するからですね。マタイに自分をどこかで重ねているわけです。

　マタイは、別名をレビと言います。これが元の名前だったようですが、シモンにペテロというあだ名をイエス様がお付けになったように、レビにマタイという名前をイエス様がお付けになったことは十分考えられます。
レビという名前は、祭司の家系の名前です。由緒正しい家系でしょう。入札で勝てるほどですから、お金持ちの家だったはずです。どんな子供時代を送ったんでしょうか？成長する中で、どこかで深い大きな心の傷を受けたのかもしれません。でも大人になってうまいこと利権を手に入れた。人に嫌われようがなんだってかまうもんか。人生結局頼れるのは金だけやろうが。といって、孤独と、むなしい人生を送っていた。

　収税所に座っていた、と言います。そう、むなしさと、こんな人生に意味があるのか、という思いの中で座り込んでいたでしょう。

　私も、むなしい、人生に意味がないと、22歳までは思っていましたから、なんとなくこのマタイに自分を重ねる部分があるんですね。
　こんなマタイを、見出して、声をかけて、食事を共にしたっていうことは仲間になったっていうことですから、こんなありがたいことはない。愛される価値なんてないと思っていた者にイエス様の愛が注がれたのです。
　そして、こうイエス様は言ってくださった。

「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人です。

　すぐにマタイは思ったでしょう。病人とは私のことだ。しかし、マタイは別に体の病気ではありません。ここでは心の病気のことでもありません。魂の病、つまり罪という病のことを言っているのだ、とすぐにマタイにはわかったわけです。

わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためです。」

　とイエス様は言ってくださいました。これはマタイにとっても、私たちにとっても深い慰めです。

　マタイは、「立ち上がってイエスに従った」とあります。この「立ち上がって」ということばは、「復活して」とも訳せることばです。ですからマタイはですね、新しく生まれ変わったんです。罪の中に座っていたところから、イエス様との出会いによって、新しい人間として再創造されたんですね。ここに私たちの救いの型があるという言い方もできるのではないかと思います。

　マタイは、立ち上がってイエス様について行きました。その時におそらく持って行ったものが二つあるんです。それはペンと、インクです。
　マタイは、税金の帳簿をつけていました。緻密に書くことが得意な神さまからの賜物をいただいていました。マタイは使徒のひとりとなりましたが、その後はセリフなどは福音書にも使徒の働きにも出て来ません。きっと何かあればすぐに口を開くペテロとは対照的な性格だったでしょう。寡黙な人だったかもしれません。けれども、心の中にたくさんのことばを持っていた人だったと思います。
マタイは口で雄弁に福音を語る代わりに、持っていたそのインクとペンで、福音書を書きました。ちょうど画家が自分の顔を自分の作品にこっそり書き込むように、そっと短く自分の証しを書き込んだんです。その福音書が、やがて書き写され印刷されて、全世界で今も何億人もの人が読んでいる。マタイはそれを予想だにしたでしょうか。
マタイということばは、「神の賜物」「神の贈り物」を意味します。その神から与えられた「書く」という賜物が用いられて、今でも全世界の人を救いに導いているのは、どんなに素晴らしいことでしょうか。


　では一方、パリサイ人はどうでしょうか。先ほど、私はイエス様が、

「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人です。
そして、
わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためです。」

　とおっしゃったと申し上げました。
では、パリサイ人は丈夫な人であって、正しい人であって、魂の医者であるイエス様は必要ない人間で、イエス様に招かれる資格がない者なんだろうか？という問いがあるわけですね。
もちろんこのイエス様のことばは、パリサイ人に魂の癒しが必要ないと言っておられるのではないし、パリサイ人に救いが必要ないと言っておられるわけではありません。ここを深く読まれる方はお気づきになると思いますが、ここにはイエス様の招きがあるわけです。パリサイ人に対して。あなたがたが本当は病人であることに気付け、とおっしゃっているわけです。

魂の病が、罪ということを申し上げましたが、自分が罪という病をもった病人である、ということはマタイにはすぐ分かるわけです。
今でも、刑務所に伝道に行かれる教誨師の働きをしていらっしゃる牧師先生は、おっしゃるんですね。刑務所で福音を語る時には話が早い、と。
それはどういうことかというと、あなたは罪びとです、と言ってもですね、一般の人になかなかピンと来ないけれど、すぐに受刑者たちには分かると。それは当たり前ですね。犯罪を犯しているわけですから、あなたは罪びとです。と言われてもすぐ分かるわけですね。そしてその罪のゆるしがある、というのもスッと心に入るわけですね。まぁ法律違反の罪と、聖書の語る罪が同じかと言えば、少し異なるわけなんですけれども、大まかな意味では重なるところがあるわけですね。

　しかし、自分は正しいと思っている人にとっては、自分が罪びとであることがなかなか分からない、ある意味で、法律に抵触することなど生まれてこのかた何にもしたことがない。私は真面目に生きてきた、という人にとっては罪が分かりにくいんですけれども、それこそイエス様という医者に癒していただかなければならないほど魂は病んでいない、と思うんです。でも、最初にカルトから脱会したお坊さんの話をなぜしたかと申しますと、「自分は正しい、あれは悪い」と見る時点で、自分が小さな教祖になり始める。ということを申しました。
その「自分は正しい」と思いたがること自体が、人間であれば全員の心に刻み込まれていることであり、それこそが魂の病なのです。
それは、神との関係における病、自分を正しい、とすれば、神はいらなくなる。神を除外して生きることこそが、神との関係の破れこそが、聖書が語る罪の一番本質的なことです。そして、自分が小さな神となってしまう。
その生き方に出て来るのは、裁きなんです。パリサイ人たちは、

「なぜあなたがたの先生は、取税人たちや罪人たちと一緒に食事をするのですか」と言った。

　と言いました。これは、単なる質問ではないですね。非難ですね。裁いているんです。取税人たちや、罪びとたちというのは、前科のある者ではありません。ここでは下層民という意味で、貧しい人々、生活も律法を軽視した人々、生活態度が不道徳、不品行な者を指し、たとえば性風俗の仕事に従事せざるを得なくなっている人、盗人、―取税人も入ります―、高利貸し、博徒、十分の一税を怠る者、休耕年の土地や果樹から収穫する者、こういった人々が罪びとと呼ばれていたわけですが、そうやって見下されて軽蔑されていた人たちです。そーんな連中と、仲間となることを意味する一緒の食事をするとは、あなたがたの先生であるイエスという方は、けしからんことをしゆうがやないがですか？
　この食事会に招かれたマタイを含む取税人や、罪人たちと、テーブルマスターであるイエス様と、両方を裁いているんですね。私たちは正しい、あんたたちの先生は間違っている、と神である主イエスさまを裁きさえしている。

　イエス様はこうお答えになりました。「彼らは罪という魂の病を、癒される必要のある病人だから、魂の医者であるわたしが必要なのだよ。丈夫な人、正しい人には、医者はいらないのだよ」とおっしゃいました。パリサイ人たちには当てつけに聞こえたでしょうか？そしてパリサイ人に対して、厳しいことを言われます(13節)。

13『わたしが喜びとするのは真実の愛。いけにえではない』とはどういう意味か、行って学びなさい。

　行って学びなさい。もう一回律法の学校に行って学んできなさい。『わたしが喜びとするのは真実の愛。いけにえではない』というのはどういう意味か。これは旧約聖書のホセア書第6章6節の引用ですが、真実の愛、というのは、前の翻訳では「あわれみ」と訳されていました。

　ですから、もしパリサイ人の1人が、ちょっと素直になってですね、ちょっと反省してですね、「うーん、確かに言われた通りだ。」と。「ちょっと憐みが足りなかったかなぁ」と、思って、「今までは食事会をする時には、パリサイ人仲間、民の長老、祭司長たちとばっかり招いていたなぁ。じゃあこの型破りな教師であるイエス先生の言うとおり、私もひとつ型破りになって、こういう罪びとたちにもあわれみをかけて、今度は食事会で、取税人も招こう、罪人たちも招こう。」ということで勇気を出して、分け隔てない食事会を開いた上で、もう一回イエス様のところに戻って来て、「イエス先生、私、やりました。ホセア書のあれれみをもう一度学んできました。」と言ってもですね、皆さんはもうお分かりになったと思いますけれども、イエス様に「そういうことじゃないんだよ」とでも言われるでしょうね。お分かりになったかと思いますが、「自分は頑張ってあわれみをかけました」って「自分の正しさ」を証明しようとしているに過ぎないからですね。そうやって、自分の力で「正しくあろうとする」という、人間の目には良いと思われること自体が、聖書のいう「神をいらないとする」神に対する罪なわけですね。これが一番神さまを悲しませることなんです。

　つまりイエス様は、パリサイ人たちに対しても「あなたが本当は丈夫な者でもなく、正しい者でもなく、罪人であることに気付け、病人であることに気付け。マタイとは逆方向かもしれないけれど、それはコインの裏と表で、【自分は正しい】という罪の机に座りこんでいた病人だと気付け」ということなんです。その病の症状としては、正しい者と正しい者が出会えばケンカするということです。お互いがお互いの正義を振りかざして(個人レベルでも、国と国同士でもそうですね。その国同士の正義のナラティブ・物語があります。ロシアだってexアゾフ大隊)。そして、悪いヤツ認定した者たちを見下したり裁いたりするということです。こればっかりはどんなにしたって治らないですよ。人間である限り。だからどうしようもない。だからこそ、私たちは、私は罪人です。主よあわれんでください、と言って、主イエスの食卓への招きに、答えるということが必要なんです。主イエス様と一緒に食事をする。天国の食卓への招待です。

　先ほど、真実の愛、とは、前の翻訳では「あわれみ」となっていたと申し上げましたけれども、これは豊かーなことばです。ホセア書では、ヘブル語のヘセドということばで記されています。ヘブル語のヘセド、これはとっても大事なことばで、恵み、愛、あわれみ、いつくしみ、慈愛、誠実、などと訳されますが、その本質は、「契約に対する忠実さ」なんです。「契約に対する忠実さ」。まぁ契約と言っても保険の契約のように、冷たい書類のやりとりのようなイメージではなくて、またお金が払えなくなったら切れてしまうような契約では無くて、神様の一方的な、無条件の愛の契約なんです。結婚のイメージなんです。しかも、永遠までも愛し続ける、という契約、約束なんです。その約束は、神さま側の誠実さによって、保たれます。
　ホセア書は、イスラエルの民の不忠実、不誠実を、姦淫の女性ゴメルという人物になぞらえて語ります。神さまは、預言者ホセアに、姦淫の女ゴメルを娶って妻にせよ、と言われるんですね。なんでそんな苦労しなきゃいけないのか。案の定ゴメルという女性は、他の男性に走っていくわけですね。けれどもホセアは、その妻の裏切りにも関わらず、ゴメルを愛し、ゴメルに誠実を尽くし、ゴメルとの結婚関係に忠実に生きたわけですね。この預言者ホセアの愛が、神の愛を表しているんです。神はイスラエルの民が、偶像礼拝、つまり他の神々に走って行って、霊的姦淫と言いますけれども、まことの神に背を向けて裏切りを続けるんですけれども、幾度もイスラエルの民が神を裏切り、不誠実で、不忠実であっても、関係なく、何度でも何度でも愛し続ける。愛することをやめない。誠実に愛し続ける。それが、神がイスラエルの民に向けるヘセドであり、あわれみであり、いつくしみであり、真実の愛なんです。永遠の愛なんです。その愛で、マタイも、取税人や罪びとたちも、パリサイ人たちでさえ、そして私やあなたも、愛されている。
　
　「行って学びなさい」この「学びなさい」ということばは、とっても強いことばなんだと言われています。どこへ行くのでしょうか？これはこういう取り方をすることも許されると思います。「行って学びなさい」このことばは、パリサイ人にも、マタイにも、他の取税人や罪びとたちにも語りかけられている。どこへ行って学ぶのか？あの十字架のみもとに、です。そこで神のあわれみが、あなたにかけられたことを学びなさい、そして魂の安息を学びなさい。

　「わたしが喜びとするのはヘセド、真実の愛、いけにえではない。」そうです。神さまが喜びとされるのは、旧約聖書の規定通りの動物のいけにえを、規定通りに、私は正しく捧げました、ということではありません。規定通りのいけにえを捧げることが、「自分は正しい」と証明するためのアリバイ作りの材料にされたら、神さまはそれをお喜びにならないでしょう。でも唯一、神さまがお喜びになるいけにえがあります。それは何でしょうか？
　それは十字架の上でほふられた神の小羊なるイエス・キリストのいけにえ・犠牲です。このイエス・キリストの十字架の犠牲のいけにえによって、自らを正しいとする、私の罪も、あなたの罪も、完全に赦されました。この十字架の向こうには希望があります。復活の希望です。死から三日目におよみがえりになった主イエスによって、私たちにも復活のいのち・永遠のいのちが与えられました。天国の確かな約束が与えられました。そればかりでなく、この地上においても、マタイが再び立ち上がったように、何度失敗しても、幾度も幾度も、繰り返し、主に立ち上がらせていただきながら歩んでいくのです。そして神からいただいたヘセド、愛、恵み、あわれみ、いつくしみ、慈愛、誠実、それらを世の中の人々に分かち合う旅路に、今からも、共に歩んで行くのです。

お祈りいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神。
ここに、主イエスの食卓に招かれました、2人の魂の病人の物語があります。それは、両方とも、私たち自身の物語です。愛に飢え、その代わりに物質で満たそうとして、人生にむなしさを覚え、捨て鉢になったこともありました。また反対に、自分は正しいと自分の努力や成功を誇ることもありました。いや、現在進行形で、良い素晴らしい仕事をする中や、弱者とされている人々を助け、味方をしていく中においてもさえも、こびりついてくる「私は正しい」という思い、頑張っていないように見える人々を見下す思い、そのような罪がこびりついています。しかし主よ、あなたは、十字架のみもとに行って魂の安息を学べ！とおっしゃってくださいました。私の罪が完全に永遠のかなたに葬り去られたこと、そして幾度も幾度も、あなたに立ち上がらせていただいて、あなたの愛を、人々と分かち合って歩む旅に、共にみことばの周りに集う仲間と共に、歩ませていただけますことを心から感謝申し上げます。
主イエス・キリストの御名によってお祈りをいたします。アーメン。