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「政治を身近に」という最近の風潮における誤謬と芸能人の政治発言について

第1回記事です。

 「政治を身近に」このような言説を巷で耳にすることが増えたような気がします。
これに呼応するように芸能人の政治発言も増えてきました。



もちろん芸能人の政治発言に関しては賛否両論が噴出する訳ですが、賛成側の人間がこのキャッチフレーズを曲解して使っている例が多く見受けられたので、ちょっとここで語らせてもらおうかと。



 まず、ここで反対側が問題視したのは、簡単な相関図(後に誤りがあることを指摘された)が拡散され、それにあわせて芸能人の政治的発言が増えたということです。



本当に勉強して発言したのか?相関図だけ見て判断しているのではないか?というある種の疑念が反対側の主張です。


それに対し賛成側は、正解でなくては発言してはダメなのか!もっと身近に発言することが大切だ!と猛反発した訳です。



 私はこの議論を傍から見ていて、少し両者の間に齟齬がある、話が噛み合っていないように感じられたので、ここについて少し考察してみた結果、これはどうやら賛成側が反対側の主張を屈折させて見ているのでは、という結論に至りました。



 そして、具体的に掘り下げる前に1つハッキリとさせておきたいことがあるのですが、これまで芸能人の政治発言が慎まれてきたのは、「イメージを売りにしている仕事柄、左右どちらかの支持を失うと利益が低下するから」という極めて営利的な理由が存在していたということです。



故に、何処からの圧力があった云々という議論は不毛です。



 話を本題に戻しましょう。先ず反対側の主張ですが、これは私個人の見解から言うと、正しいように思われます。



ただ、1部の極端な人達を除いてですが。



「芸能人は政治的発言をするな」という主張は論外ですが、その「芸能人の発言」に対し、ちゃんと勉強したのかどうか疑念を持つこと自体は決して不当ではないでしょう。



 現に、誤りが指摘された相関図を鵜呑みにして拡散していた訳ですから、知見を疑われるのは致し方ないように思えます。



これに対する賛成側の主張はというと、先程紹介した通り、正解でないと発言してはいけないのか!というものです。



屈折があると私が指摘したのはこの部分で、別に反対側はそのようなことは主張していません。



1つの意見を鵜呑みにして、政治に参加したつもりになるのは如何なものか(この主張の正誤に関しては別途議論が必要)、というのが反対側の主張なのですから「正解でないと発言してはいけないのか!」という反論は的外れであると言わざるを得ません。





 最後に、「政治を身近に」という風潮について私が思うことを書きたいと思います。


上の文で「簡単な相関図」の話がでてきましたが、多くの人が履き違えている点があります。それは、身近さ=簡単さ ということです。



 我々の脳は、より簡単で単純化された情報を好むように作られています。これを単純化本能というのですが、今回の相関図拡散の件もこの本能が大きく関わっているように思えます。



「政治を身近に」、民主主義社会においてこのような風潮は歓迎されるべきものでしょう。



しかしこれを機に、イデオロギーも何も分からない人間が、身近に政治を考えようとすると何が起こるでしょうか?



答えは火を見るよりも明らかであり、単純化本能に押し潰され、よりわかりやすい情報即ちプロパガンダに利用される可能性が高くなります。



私達は断固としてこの履き違いに異を唱えていかねばなりません。「政治はとてつもなく難しい」こう世間に訴えていく必要があるのです。



簡単な政治を身近に思うことは当たり前です。簡単なのですから。しかし現実は違います。



難しくて、考えて考えて考え抜かないといけない政治を、身近に思えるよう努力することこそが「政治に参加する」ということなのです。



簡単な相関図だけを見て理解した気になることを、「政治に参加する」こととは言いません。それは「参加している」のではなく「踊らされている」のです。



 最近多く見かけるタイプとして、勉強しなくとも自分が思ったことを発信していくのが大切、と仰られる方(例 橋下徹)がおられますが、それははっきりと申し上げて間違いです。



民主主義はそんなに完璧な制度ではありません。「民主主義は最悪の政治形態らしい。ただし、これまでに試されたすべての政治システムを別にすればの話であるが。」
これはイギリスのチャーチル首相の言葉ですが、まったくこの通りだと私は思います。



 民衆がわかりやすい政治メッセージに踊らされて誕生したのがナチスです。この事実だけでも、勉強しなくても〜と主張する人達の理屈が如何に頓珍漢かおわかりいただけるでしょう。



ナチスは選挙で選ばれたのです。「簡単でわかりやすい情報」は人間に備わる単純化本能に訴えかけ、判断能力を鈍らせます。
そのような情報には、我々は常に警戒しなくてはならないのです。



 政治は単純じゃない。とてつもなく難しい、それを常に頭に入れ、自分で考え抜いて「政治に参加」してもらうことを、私から全日本国民に向けて強くお願い申し上げたい。

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