一時帰国の楽しみ ~古本ショッピング~

別に今のニュージーランドの生活に大きな不満があるわけではない。寧ろ年々順応している。それでも実感するのは、住んでいる場所によって得られるものは違う、ということ。ライフスタイルも全く違っていただろうということ。

日本でないと得られないことは沢山ある。だから時折帰りたくなる。


ここにひとつ、一時帰国で楽しみにしていることのひとつをご紹介したい。


ひとりで一時帰国をした際に、日本人のパートナーから本のおつかいを頼まれていた。東京に滞在している間に道の途中で本屋を見つければ飛び込んで探してみたけれど、どこにも売られていなかった。2018年に出版された本だ。これは2019年のことだった。1年前に出版された本が店頭にない。滞在中に見つかるといいんだけど。

その後、地元のお気に入りのカフェに出掛けた時のこと。そのカフェは数はそれほど多くはないけれど、素敵な本をさりげなく並べている居心地のいい場所。たまに訪れると、ラインナップがさりげなく変わっている。そこで、とても面白くて繰り返し読みたい本に出会った。それは2014年に出版された本だった。ハードルが上がった。

そうして私の本を手に入れるというミッションが2つになった。

あちこち本屋を回ってみたけれど、結局2冊とも店頭で見つけられなかった。アマゾンありがとう。

彼のおつかいの本も面白くて、ニュージーランドへ戻る前に私が先に読んでしまった。いまだに時折開いている。

この体験で身をもって知ったのは、店頭における書籍の展開の速さ。自分にとって面白い本でも、次から次へと新しい本は出版されるので店頭から姿を消してしまう。そういえば、実家に住んでいた頃の私は、朝日新聞の記事の下の方に掲載されている新刊の広告を見るのを楽しみにしていたな、と思い出す。どんどん新しいのが掲載されるから見るのが楽しかったのだ。同じ広告を見るのは退屈だった。

地元の図書館に立ち寄ると、読んでみたい本がずらりと本棚に並び、もっと時間があったらと願う。それらは決して最近の本ばかりではない。

ちょっと潔癖なところもあった私だが、こういう経験やら、捨て活をする中で感じたお金の使い方の反省点もあり、古本屋で本をまとめ買いしてニュージーランドへ持って行くことにした。かつては新品の本に飽きたら古本屋で売るだけの「売る専門」の顧客だったが、今度は古本を買う側にもなることに。

スーツケースに詰めやすいように、文庫本限定。10冊まで。と、ルールを設けた。

そうして、次の一時帰国の際に、以前仕入れた古本を古本屋へ売りに行き、そして新たな古本を仕入れる、という私のルーティーンが出来た。よっぽど気に入った本は手元に残している。

この流れで私の本棚で大切にされている一冊が、『恋人たちの時間』(落合恵子・著)という昭和に出版されたものだ。

世の中には本が溢れかえっている。時間や場所が離れているゆえに、一生出会うことのない本も沢山ある。なんとなく開かない本も沢山ある。そんな中、自分の中に発見や喜びをもたらしてくれる素敵な一冊に出会えるって、奇跡だ。


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