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「AI+(AIファースト)企業」を支援・加速する日本IBM

2024年8月8日、古巣である日本IBMの記者説明会に参加した。「デジタル変革のためのAIソリューション」フレームワークの発表がポイントだ。簡単にいうと、IBMが長年得意としているIT部門のためのAIソリューションだけではなく、ビジネス全体のAIソリューションも提供していくことを示している。


🤝 IBM、MicrosoftやAdobeなどの戦略的パートナーと共に企業のAI変革を促進

プレス発表向けの資料の中に含まれていた以下↓ページにIBMの本気度を感じる。紫の枠を見て欲しいのだが、戦略的パートナーとしてマイクロソフト、Adobe、SAP、Salesforce、AWSなどが含まれている。お客様企業の変革のためには自社製品以外でも良いと思ったものを積極的に提案していく姿勢が見られる。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

私がIBMに所属していた2000年頃は、提案する製品は自社製品、もしくは買収してから自社ブランドとして提案していくことが正攻法のような時代だったので(例:IBMのRational買収 , 2002年)、そのような過去のIBMの視点を有する私から見るとこの図はかなり新鮮味だ。

日本IBM「IT変革のためのAI」に関しては、例えばトヨタ、東京海上日動システムズなどと組み生成AIを活用した開発・運用環境の効率化は既に発表している。今までのIBMの強みであるIT部門からのAI変革は既に開始し、実績も出始めているのだが、今回の発表の中ではIT部門に閉じずに企業の全社AI変革を促進していくのを目的としている。

なぜ今なのか?それはビジネスとテクノロジーの最新トレンドに関する詳細な分析と洞察を提供しているIBM Institute for Business Value (IBV)の調査結果で生成AIが本格活用段階へ進んでいることが見えてきたからだ。以下のデータの項目の「生成AI活用はもはや夢物語ではなく現実である」に62%がYESと答えているが、この数字は今後さらに増えていくことだろう。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

⚔️「攻め」と「守り」のAI戦略策定

今回発表された「ビジネス変革のためのAI」は、IBMグローバルに蓄積された各業界/業務のAI知見を活用していくという。印象的だったのは「攻め」と「守り」の両方における戦略を、企業とともに考え、組織づくりも含めてプロセス推進していくという点だ。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

生成AIが市場を賑わせはじめた2022年末からIBMはもちろん、マイクロソフト / ChatGPTなどの生成AIプレイヤーの発表を聞いている中で、IBMは首尾一貫して「守り」の重要性を伝えている。ガンガン生成AIを使っていきましょう!というよりはAI倫理委員会の設置、企業に安心して使ってもらうためのAIに重点を置いてきている。その「守り」を固めたIBMが、グローバルの知見や戦略パートナーと組み、企業のニーズに合わせて(トライアル?本格導入?導入部署はどの単位?etc) AIによる企業変革が支援できるようになったことが当プレス発表会のポイントとして受け止めている。

📕 宮崎銀行、京都大学、パナソニックグループ AI活用事例

既に「ビジネス変革のためのAI」は各領域で進んでいる。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

事例1) 宮崎銀行:融資稟議書作成

属人的で業務負荷の高かった融資稟議書作成時間を95%削減したという宮崎銀行の生成AI導入事例はインパクトがある。しかも既存の実証済みIBMソリューションを活用したことにより約2ヶ月で開発完了したという導入までの期間の短さにも驚かされる。テクノロジーの進化に合わせて、かつては数ヶ月、数年かかっていた業務フロー改革がスピーディーに行われていることを実感させる事例だ。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

事例2) 京都大学大学院:難病情報紹介AIアプリケーション

一般的には馴染みのない医学専門知識へのアクセスを生成AIを活用し平易な日本語で行えるようにする当アプリケーションは、患者やその家族が自分の状況を素早くアクセス可能にすることにより不安軽減につながる。医学などの専門領域の情報はパブリックなOpenAI ChatGPTの返事では信憑性が担保されない中で、信頼できるデータベースに、わかりやすいコミュニケーションインターフェイスでアクセスできることは今後の医療のあり方としてデファクトになってほしい事例である。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

事例3) パナソニックグループ「ワンストップ人事サービス」

人事関連の情報の煩雑さを生成AIチャットボットとメタバースの活用により実現している当事例は、自治体にも導入してほしいサービスだ。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

私はIBMでエンジニアとして、ibm.com/support グローバル検索の仕組みを作っていた。グローバルのIBM基礎研究所の方々と検索エンジン開発から、検索に引っ掛けるための社内の情報の一元化(各部署の各担当者がバラバラに入力・管理していた情報をibm.com/support の一つの検索窓から検索させるために項目名や入力フィールドを統一させるなどの徹夜の涙ぐましい努力も行った)を担当していたのだが、今回の " with 生成AI "のソリューションの数々を見ていると、サイボウズのコマーシャルのようにあの頃の自分を涙ながらに「おつかれ、いままでのオレ」と言ってあげたい気持ちに溢れてくる。

🥇 AI+(AIファースト)企業の変革を支援

記者説明会の最後にはIBMは「AI+(AIファースト)企業」への変革を支援するというスローガンも発表された。

IBM デジタル変革のためのAIソリューション 記者説明会資料より2024年8月8日

私たちが今当たり前のようにインターネットを使っているように、当たり前にAIが使われるようになる時代に突入している。しかも、宮崎銀行の事例にあるように導入スピードも早まっている。さて、それではどこから始めれば良いのだろうか?

記者説明会同日である2024年8月8日にIBVレポート「生成AIを制する、 CEOが知るべき 8つの観点〜PoC迷宮から脱却し、 ROI最大化を勝ち取る」も公開されている。このIBVレポートにはCEOが具体的なアクションを起こすためのティップスも掲載されている。人材とスキル、顧客体験と従業員体験、オープンイノベーションとエコシステム、サステナビリティー、サイバーセキュリティー、「責任あるAI」と倫理、プラットフォーム、データ、そしてガバナンス、テクノロジー投資という項目ごとにCEOが知るべきこと、CEOが実行すべきこと、そのアクションガイドが掲載されているのでCEOはもちろん会社に所属するどのレイヤーの方々が見ても会社に求められていることを考える手助けとなる。また、リサーチャーやAIビジネスに関わっている方もIBMのAIビジネスの考え方は参考になるだろう。

参考までに、以前 The Pollinators でお話を伺った日本アイ・ビー・エム株式会社 コンサルティング事業本部 サステナビリティー担当 槇あずさ氏が担当しているIBVレポート サステナビリティー章では生成AIが理想を実現するために有効であるという視点で解説されている。(以下、1ページだけ拝借させていただき紹介することをIBVレポートのプロモーションと捉えて許していただきたい)

生成AIを制する、CEOが知るべき8つの観点


全ての企業がAIを導入した先に待ち受けている未来はどのようなものなのか?煩雑な作業から解放された未来の私たちはどのような新規ビジネス、新規事業をおこしていけばいいのか?IBMが提唱するAIファーストの動向も追いつつ、その先の未来も考えていきたい。

未来が一気に近づく感覚を得た記者説明会のレポートは以上である。

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