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人を想う時間

先週、およそ10年ぶりに、母の実家の徳島に帰省した。
数日の滞在の間、母と祖母と一緒にいろいろなところに出かけた。
変わらない自然。
緑色ってこんなに眩しかったっけ、と驚く。
シャッター街だらけの、すっかり人が減った街。
祖母は変わらず好奇心旺盛で、気持ちの元気な人だったけど、
すっかり歩くのがしんどくなり、耳も遠くなっていた。
本人もそのことにとても不便を感じていて、そんな彼女を今一番励ましているのは、愛猫のしろだった。

10年間。
それにしても、私はそんなに長い間、
祖母に会っていないことに、全然気がついていなかった。
大学を出て、仕事を始めて、新しい世界の中で、日々を生きるのに、
必死で、夢中だった。
でも、確かに昔、20歳目前だった私はもう29歳になっていて、
同じく70歳を過ぎたばかりだった祖母は、80歳を超える年齢になっていた。
時間は駆け抜けていく。
私がぼんやりしている間に。

身近な人を想う時間。
それが大切なことなんて、言う間でもなく分かっているのに、
慌ただしい日常の中で、つい後回しにしてしまったりする。
家族だから、友人だから、私が忙しいことを分かってくれるかなって、
そのうち落ち着いたらゆっくり連絡しようかな、会おうかなって。
つい、甘えてしまう。
"そのうち" なんて、そう簡単に来ないのに。

でも、そんな私のような人にとって。
例えば、結婚という人生の節目は、
流れていく日常の中で立ち止まって、
丁寧に、大切な人たちのことを考えるための絶好の機会にできるのだと思う。
身近な人のことを思いやること。
その気持ちを何かの形で表すこと。
私はまだ結婚していないけれど、その時が来たなら、大切にしたい。
そして、他の誰かにとっても、そのきっかけを作る仕事をしたい。

そう考えてみると、私が今お手伝いしている、
たくさんの人を集めて、お披露目をするという形での結婚式は、
あくまで方法の一つにすぎなくて、
絶対ではないなと、改めて思う。

贈り物をする。
手紙を書く。
写真を撮る。
食事をする。
旅行をする。

人生の節目を迎える二人にとって、周囲の人たちにとって、意味があれば、それがほんのちょっとしたことでも、全てが"結婚式"になる。

人と人が心を交わす時間を持つための、様々な方法を、私はこれからも考えていきたい。
それはいつか、"結婚式"そのものを仕事にしなくなったとしても。

心をふわっとさせる、美しいものを作る人たちと、一緒に進もう。

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