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2019年7月28日 医療観察法反対集会アピール

皆様 私どもは昨年5月に全国「精神病」者集団という名称を変更し精神障害者権利主張センター・絆となりました。その経緯についてはビラがおいてありますのでご覧ください。山本眞理と申します。

私どもの不手際でなんとやまゆり事件3年目の集会が関東も関西もぶつかっているということになり、本当に申し訳ありません。

今年は2005年の医療観察法施行から14年目となりました。すでに現場の精神科医やソーシャルワーカーは医療観察法のある中で養成されそして働き続けてすでに現場の中心となっているのではないでしょうか

そうした中で、医療観察法の審議のさなかに当時の坂口厚生労働大臣が医療観察法と一般の精神医療改革は車の両輪と発言したことがいま現実化しています。

それは医療観察法の一般精神医療への浸透ということです

医療観察法の問題は大きく言って2つあります

一つは精神医療を犯罪対策治安対策として使うということです
そして今一つは「内省プログラム」と称して、対象者の心のなかに、思想信条に医療や心理そしてソーシャルワークが介入し、洗脳人格改造を強制的に行うということです。

医療はそもそもその本質として人の倫理道徳に介入してはなりません。またソーシャルワーカーの第一の倫理も裁かないこと、非審判です。

この2つによって精神医療保健福祉の倫理は完全に踏みにじられたといっていいでしょう。

ところが医療観察法の対象者となると、施設収容であれ、あるいは地域処遇であれ、この「内省プログラム」を強制され、その成績を評価され続け、いい成績をとらないと施設から出られない、あるいは地域処遇から解放されないということになります。この根本的な精神保健福祉の倫理破壊腐敗は対象者を受け入れる精神医療の専門職の中で浸透してきていると言っていいでしょう。

そうした中で先の精神保健福祉法改悪法案は葬ったものの、実態は退院後支援という形で先行しており、しかも巧妙なことに「同意」を要件として進められています。

むき出しの刑法保安処分ではなく、精神障害者の「同意」を取り付ける中で本人にいわば「自発的な隷属」を強いるという恐るべき介入があちこちではじまっています。

精神障害者への精神障害者だけへの退院後支援というものです。

精神障害者の退院後支援というものです。これは法に基づかないので強制もできません。政府も国連健康の権利特別報告者および障害者の権利特別報告者のこの法改悪への問い合わせに対して本人の同意に基づくのだと主張しています。

会場に昨年11月のこの集会での安倍智子さんの発言を取材した記事を配布しています。

この安倍さんの訴えに基づき福岡市はこの退院後支援の事務取扱要綱を作りましたが、同意書書式が作られ掲載されています。

しかしこれは決して、自由なインフォームドコンセントではありません。むしろこの「同意」こそ、恐るべきことです。「同意書」をかざしてとんでもない人権侵害が進められていくと言わなければなりません。

生活保護利用者にとっては何らかの指導がなされたら、それに同意せざるを得ない力の不均衡は当然あります。生活保護利用者ではなくとも主治医に逆らったら、障害年金を切るような診断書を書かれてしまう。あるいは利用している様々な障害者総合支援法の支援も受けられなくなってしまう。そういうおびえから「同意」せざるを得ないことは当然予想されます。何より精神保健福祉法で強制入院中に保健師が押しかけてきて同意を迫られれば退院したいがために同意せざるを得ないでしょう。

すでに京都の精神保健福祉士は公然と、退院後支援を監視管理と考えるのは精神障害者の妄想であると断言しています。

いま精神保健福祉医療総体が精神障害者への保安処分体制を「同意」という名の恐るべき「自発的隷従」をはかるために総動員されていこうとしています。

そもそも人を拘禁するなら拘禁する側に立証責任がある、というのが原則です。精神病院への強制入院は拘禁です。国連恣意的拘禁作業部会は、障害者権利条約の基準に、障害を理由に人を拘禁することは本質的に差別であるとしています。法の名称あるいは目的と関わらず、人が心理的に自由に出られないと感じるならばそれは拘禁であり、高齢者施設障害者施設でも、もちろん精神病院での任意入院でもそれは拘禁です。しかしいま日常的に強制入院はあるし、刑事司法手続きで障害者が拘禁されることもあります。人身保護請求をどのように適用していくかそれがここに邦訳を掲載した原則ガイドラインです。ぜひお買い求めを。配布したビラにあるように、日本はなんと1770人以上を半世紀以上拘禁した上にある社会です。無期囚は毎年1800人ほど、この方達の高齢化と終身刑かを問題にする法律家や人権活動家はいますが、半世紀以上拘禁され続けている精神障害者に心寄せる人はいません。精神保健専門職も無視し続けています。今こそこの現実に向き合うことが精神保健専門職そして人権活動家に求められているのではないでしょうか。

わたしたちはこの流れを許さず、障害者権利条約の完全実施すなわち一切の強制入院強制医療の廃止に向け今後も闘い続けます。参加者にもこの闘いへの参加を切に訴えます。


精神障害者権利主張センター・絆 会員 世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク理事