本当にもうあかんのに、あかんように見えん日記
奈美さんの存在を知ったのは、おそらく数年前。
当時から、興味津々だった。
理由はたくさんあるが、そのひとつに、あからさまに飛びぬけた素敵な文章表現。
そして、家族に障がい者がいるという共通点、さらに、自分の運命を受け入れ、日々前向きに戦っている姿。
これらの要素に、わたしは完全に心を奪われていた。
当時わたしは、家族との関係性を改善すべく、模索していた最中だった。
本当のことを言えば、もう、とうの昔に結果は出ていた。それでも諦められなくて…そんな矢先。
奈美さんの世界は、いつだって温かい。
これが、彼女の素晴らしさのひとつだと思う。
本音で綴られる文章の中にも、根底にある優しい心根を垣間見ることができる。
わたしだったら、怒りという怒りを、周りの人たちに全力でまき散らしているかもしれない。
今年の夏、東京パラリンピックに、奈美さんがコメンテーターとして出演されるという情報を得たわたしは、ワクワクしながら「そのとき」を待っていた。
放映時間内のいつごろ画面に映るのか、いち視聴者には分からない。
何にワクワクしているのかは自分でもよく分からなかったが、その、得体のしれない最高の感情に支配されたまま、わたしの【2021年夏】は幕を閉じたのだった。
ということで、次なるターゲットは書籍。
そのころ、ふと、【もうあかんわ日記が読みたい】という自分の願望に、ちょくちょく気がつくことがあった。
「この感情、また出てきたわー」と、ほくそ笑むわたし。
何度も何度も、わたしがわたしにアピールしてくる。
これはもう、絶対的な「買え」のサインなのだ。
新刊が発売中なので、まずはそちらからでもいいのではないかとも思ったが、わたしがまず欲しているのは、どうやら【もうあかん】の方らしい。(両方買え)
そうこうしているうちに、奈美さんのTwitterで、「もうあかんわ日記が入ってて声出るほどびびった」の一文と、noteの「#読書の秋2021」のお知らせが。
「これはもう、間違いなく飛び込むやーつ!!」
ということで、いそいそと書店に向かった。
やっぱりあった。
わたしの住む田舎の書店にも、間違いなくあった。しかもラスイチ。
こういう些細な出来事にも「運命だ!」と全力で喜ぶわたしはきっと、幸せ者だ。(無かったら、速攻で別の本屋さんに行ってたけどね)
【もうあかんわ日記】
まっ黄色の表紙に、黄みががった中身。
表紙にいる手書きのゆるキャラも、たまらなく好みだ。
この時点で、わたしはもうノックアウトされている。だって、内容が最高だということは、買う前から分かりきっているのだから。
ということで、勢いよく最初のページをめくる。
「やばい…」
案の定、中毒性がある。
ページをめくる手がとまらない。
文章だけでもすごいのに、その文章に負けないほど、岸田家の面々のキャラクターも濃い。まさしく相乗効果。
状況だけ見ると本当にあかんのに、それを喜劇に変えられる強さ。
まさに、チャーミング&ユーモアだ!!
奈美さんは一家の全てを背負っている状況なので、その分、のしかかってくるものが普通の人のそれとは、随分と違う。
だが、それにしても、「トラブルの神様」に愛されているという言葉がしっくりくるような、狙っても手に入らないような事件を容易に引き寄せる「何か」が宿っているとしか思えない。(褒めてる)
どんな困難も乗り越えてという一文が、これほどまでにマッチする人物を、わたしはこれまでの人生で見たことがない。
それはきっと、目の前に立ちはだかる課題と真摯に向き合い、前向きに解決しようとする姿勢だから。
決して、適当にその場をやり過ごすというようなズルはしない。
これからもきっと、「もうあかん…」と呟きながら、全てのことを愛のパワーで乗り越えていかれるのだと思う。
途中、鳩とゴキブリの件では声を出して笑い、最後の方は泣いていた。
この本を読む前と後で、わたしが明らかに変わったことがある。
それは、ダウン症への理解。
最近めっきり「HSP」だったり「ADHD」の方に関心の矛先が向いていたのだが、この本を読むと、ダウン症の本当の姿を、奈美さんを通して少しだけ、知ることができたような気になれる。
弟の良太さんは、思いやりがあり、気が利いて、そして優しい。
健常者だって、できる人が少ないのだから、やはりわたしたちは【知らない】だけなのだ。そこがとっても問題なんだけど。
そんな素敵な一面が知れたことも、わたしの中でかなりの収穫だった。
この本を通して、わたしのように勘違いしている人の意識が1mmでも変わることで、未来はきっと、今より良くなるのではないだろうか。
もうあかんわ日記は、わたしの【お守り本】に認定された。
これからも、なにかにつけてこの「優しい世界」に触れたくなること、間違いなし。
「本当にもうあかんのにあかんようにみえん日記」の日常は、想像をはるかに超える愛の塊だった。
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