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<悪魔城ドラキュラ語り>リヒター・ベルモンドの話

悪魔城ドラキュラシリーズに登場するリヒター・ベルモンドについての語りです。タイトルの絵は私が描いた24歳リヒターです(笑)。

リヒターは歴代の主人公枠ベルモンドの中で、唯一公式に闇落ちしてしまう悲劇のキャラクターなのですが(ソレイユも闇落ちしますがサブキャラなので……)、何故彼だけが闇に染まってしまったのだろう、闇に魅入られてしまったのだろうと考えてみた結果、彼はあまりにも純粋に「正義」であり、「光」でありすぎたのではないかなと思いました。
私が妄想する悪魔城伝説のラルフは、ソニアと吸血鬼の彼とのハーフ……ダンピールだと思っているので、その産まれも生い立ちも元来聖魔光闇を併せ持つ存在であり、彼の子孫であるクリストファーやシモンからも若干の『光と影を併せ持つ存在感』を感じるのですが、血の輪廻版リヒター(19)からもクロニクル版リヒター(19)からも、リヒターからはほとんど影を感じません。
単にキャラクターデザインのせいかもしれないのですが笑)、リヒターは性格も気質もまっすぐで純粋だしそれが外見に滲み出ているし、彼は今まで生きてきた19年間……月下に続く流れの中では24年間、本当にどん底に陥るような挫折や苦しみ悲しみ、絶望を味わうことなく生きてきたんじゃないかなあと思いました。
ラルフは人々に忌まわれながら生きてきたし、クリストファーやシモンからも「闇に紛れて闇を討つ者」みたいな影を感じるのですが、リヒターの代ではベルモンド一族は紛れもなく『吸血鬼を祓う聖なる戦士の一族』であり、彼はその一族の正統な後継者として、何一つ恥じることなく恐れることなく迷うことなく生きてきたんじゃないかなあ。そして、あまりにも清らかすぎ、あまりにもまっすぐに過ぎたために、逆に、心に侵入してきた暗闇に抵抗しきれなかった……。

そして考えてみればリヒターは、ドラキュラと『会話』をした際、『一瞬返答に詰まっている』んですよね(血の輪廻版)。リヒターはまっすぐな性格だから魔王の問いかけに素直に答えてしまったのかもしれませんが、思えば彼はあの時点で、魔王の問いに口ごもった時点で闇に魅入られ、心の隙間に入り込まれていたのかもしれないなあと思いました。ドラキュラと『会話』しているベルモンドはリヒターだけではありませんが、魔王の問いに戸惑いを見せたのは彼だけなんですよね。
考えてみれば、リヒターと共に戦ったマリアはドラキュラの問いに「難しい事はわかんない!」って言って答えてないからなあ(笑)。闇からの問いかけには無闇に答えてはいけないんだなあ……。

リヒターが闇に囚われてしまったのは、彼があまりにもまっすぐすぎたと言う部分もあったと思いますが、時代の流れや『吸血鬼と言う存在がこの世から消えていく』ことによる、自分の存在意義の崩壊的なものもあったんじゃないかなと思いました。時代は流れて教会や神の力は薄れ、信仰と迷信が支配する世界から理性と科学が支配する世の中へと変わっていく。「悪魔城ドラキュラ」の世界では悪魔や魔物は迷信ではなく実在していますが、文明の発達により今まで魔物の領域である「深淵」が人の手であばかれてゆき、今まで畏れ崇めていたものは、次々と白日の光の下で正体を晒されることとなる。闇を退ける者の代名詞であったベルモンド家は、闇が世界を支配していたころにはその力ゆえに必要とされ、求められていた。でも世界から闇が急速に消えてゆく中、彼……リヒターは、『もう自分達は必要無くなる』と言うような不安に陥っていたのかもしれないですね。
その証拠という訳ではありませんが、月下での城主リヒターははっきりと「ドラキュラが存在していれば自分の戦いは終わらない」と言っています……。

リヒターはあまりにも「ヴァンパイアハンターたるベルモンド一族」でありすぎて、それ以外の生き方ができなかったのかもしれません。狩るべき獲物がいなければ狩人は不要と言う事実を、認めなけれな行けないのだけど認められなかったのかもしれない。
聖者でも英雄でもない、何者でもない自分に耐えられなかったのかもしれないですね……。



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