ドラゴンクエストビルダーズの感想

 弟が、「めちゃくちゃ面白いよ!○○で××が△△で超アツい!しかも☆☆はもう▲▲で、おまけに◇◇!」
 とまあ何言ってるか分からなかったんですが、実況者だかVTuberがプレイしてるのを見て超楽しかったと。サンドボックス?には興味無かったんですが、そんだけ楽しそうに語られたらついプレイしたくもなりますよね。で、PSV版が400円だったのではじめたら確かにメチャメチャ楽しい。思わず件の弟にLINEしたら「いや俺動画勢だから操作のことは分かんないんだよねwwwでも□□が▼▼になってたのはマジでビビったわ。アニキそこまで行った?」ってネタバレ食らったのでお前さあ……。

○圧倒的に初心者向けの導線

 世間だとドラクエのガワをマインクラフトに被せたものって評価されてそうだし、まあ実際そういう点はあるんでしょうけど、これが大正解。精霊ルビスの導きのままにチュートリアルを済ませ、草原をぴょんぴょん跳ねてるのはスライムだから大したことないな、オレンジの色違いはベスだからやっぱり大したことないな、キメラはギラを使ってくるんだろうな、倒すと羽を落としそうだなっていうドラクエのお約束が下敷きになっているから、初めてのジャンルで「右も左も分からない」ということがなく、ブロックで構成されたアレフガルドはドットの味わいがあって親しみさえ感じる。

 ブロックを自由に積み上げて建物を作る要素も、攻略上必須なものは設計図を渡されるからその通りに置いていけばOK。「2段以上の壁で囲まれた空間・ドア・灯り」が揃っていれば部屋として成立する緩さがあるから、HPを回復させるための寝室を作ろう→寝室のそばに作業所があった方がいいな→旅の扉が近くにあれば探索も捗るな、とプレイしていくうちに自然と改善点が浮かんでくる。それゆえプレイしてくると、「あー失敗した!はじめからやり直したい!」って思うこともあるのだけど、次のポイントがそれに効いてくる。

○4章オムニバス構成(章ごとの引継ぎなし)という潔さ

 RPGだから一つの拠点を大きくし続けて一つの街にするシムシティみたいなものを想像してたのだけど、全4章で章ごとに場所もNPCもガラッと変わってイチからやり直しになる。鋼の剣/鋼の鎧/鉄の盾で装備を固めていても、新しい土地ではこん棒と旅人の服からやり直し、鉱物やそれを溶かすための炉も無いから、切り株を作業台に新たな土地の新たな問題に挑むことになる。

 同じこと繰り返すの?面倒じゃない?って疑問も湧きそうなものだけど、1章は草木生い茂り鉱物資源にも恵まれた土地なのに、2章序盤は木材に加工できそうな立木が無く敵も距離を取るように移動しては射撃してくるリリパットや毒攻撃を使うドロルなど嫌らしくなってくるし、要素としては薬の調合や釣り、園芸によるバラエティに富んだ食材が加わってくる。
 3章は序盤のバランスが特に厳しく、速いペースでりゅうおう軍による拠点襲撃が起きるし、強めの敵が出てくる割に資源は少ないし最序盤は食料が全く確保できないのもヤバいが、NPCを冒険に連れ出すことが可能でこれがまた強い(PCより強力なのでこっちは何もしなくてもいいくらい)ので、NPCをうまく誘導できるような経路作成と立ち回りが重要になる。
 終章はりゅうおうの呪いによって一面が灰色だった大地が、聖水を振りまくことで色鮮やかに蘇っていくところなんかは本当に気持ちいい。最初は拠点に立てるべき旗もなく持ち物もひのきの棒だけだったものが、大地の復活とともに強力になっていく。

 こうしたプレイ感覚だけでなく、各章ラストは毎回特別ルールで拠点全体を巻き込むド派手な戦いになって、勝利しても拠点そのものはボロボロに崩壊してしまうことが多いのも、逆に最後くらいは拠点の損害を気にせず大暴れできる割り切りに繋がっている(章の間は魔物の侵入を常に警戒しなきゃならない状態なので)。

○これぞドラクエって感じの趣味の悪さ

 舞台は「ロトの子孫がりゅうおうと取引した後の荒廃したアレフガルド」ということで、第1章メルキド高地からしてエグい設定や生々しいセリフがポンポン出てくる。
・完全にモンスターが覇権を握っており、人間は敵対種族どころか滅び切ってないことを憐れまれる始末。
・周りが男性ばかりで不安だから個室が欲しいという女性。
・拠点が発展するたび集う住人、その一方で明るい雰囲気にはならず不和ばかりが高まっていく展開。
・しまいにはNPCの中心人物が「自分の街に異分子は不要」と反対住民の排除をプレイヤーに仄めかす。
・かつてメルキドの守護者だったゴーレムはメルキドを護るためにはいがみ合う人間を排除すべきと判断して人類の敵に回り、メルキド市を逃れて最後まで抵抗した人々も辺境の砦で内輪揉めの末に全滅している。

 2章はリムルダール島。
 周辺を湖に囲まれた美しい街は湖がすべて毒の沼に変わり、疫病で滅びつつある。見渡す限りの毒の沼にぽつんと浮かぶ荒野、土壁を作るために地面を掘ると毒の沼が湧き出てくるビジュアルは衝撃。
・行き倒れの患者を粗末なベッドに寝かせ献身的に看護するNPCたち。その甲斐もなくNPCの名を呼びながら腐った死体となり襲ってくる患者をこの手で叩き斬らざるを得ない趣味の悪さ(以降、フィールドを徘徊する腐った死体も生前の何事かを呟いて消滅する)。
・そもそも腐った死体になる病はりゅうおう由来のものではなく、疫病による死を乗り越えるために人間が作り出したものと判明(実験を繰り返していた研究者も最後には怪物化)。
・その研究者が邪法の研究にのめりこんだのは、この地でプレイヤーに医学の手ほどきをしてくれる老医師が「死に逆らうな、受け入れろ」と繰り返し説いていたことに反発したため。
・その老医師は自分の孫娘が病に罹ると態度を急変させ「何とかして孫を救ってくれ」とプレイヤーに哀願する。

 3章はマイラ・ガライヤ地方で、魔物から故郷を取り戻すために炎の魔力と氷の魔力を融合させ爆発的な出力を取り出す研究に没頭していた男が研究の失敗から徐々に精神を病んでいき、ついには研究を完成させるため倒すべき魔物に魂を売ってしまった哀れな過去が訥々と語られる。

 そして終章ラダトームは見渡す限り灰で覆われ髑髏と骨が埋め尽くす不毛の大地。その片隅ではりゅうおうから世界の半分をもらったロトの子孫が、「セカイノハンブン」の看板が掲げられたあばら屋で精神の均衡を保てなくなっている様子が描写される。
 ルビス含め誰も彼を「ロトの子孫」とも「勇者」とも呼ばず、言葉少なに「とある戦士」とだけ言及するけど、プレイヤーはそれまでの各章で眠りに落ちるたび、その戦士が街の人から親しまれ、お城の期待を背負い、世界の希望を一身に受けながら旅立ち、りゅうおうの居城へ辿り着くまでの様子を夢で追体験してるんですよね。
 EDでは「彼は本当に世界の半分を欲したのではなく、ただ『この選択をしたらどうなるのだろう』という好奇心に抗えなかっただけなのかも……」とか妙にメタいことを言われたりてるのも、プレイヤー心理に訴えかけるようでドキリとさせられる。

○気づきが楽しいゲームデザイン

 敵が強い、クエストで長い距離を移動する、起伏が激しく上り下りが大変、毒の沼や溶岩に行く手を阻まれる……。
 直面する状況に対して、プレイヤーの取れる手段が多いのが嬉しい。ゲームをはじめたばかりの頃はナンバリングの癖が抜けなくて、回復アイテムを集めて強敵と正面から殴り合ったり、遠くへ行くにも薬草や食料をしっかり準備。山を避けて迂回したりブロックを積み上げて道を作ったり。でも、ある時気づいたんですね、敵を倒しても特にレベルは上がらないから無視していい、戦う時にも有利な地形を自分で作ってそこに追い込んでもいい。長い距離を移動するときは作業台を持ち歩けば途中に小屋を建てて休める。山越えが面倒なら山を崩したりトンネルをブチ抜いてもいい。ダメージが痛い毒沼や溶岩は埋め立ててしまえ。

 そしてこれらの閃きも、プレイヤーがゼロから思いつくのを期待しているわけではなく、道端に打ち捨てられた廃屋が建ってたり山の中腹に横穴が開いてたり、言葉にしないまでもフックになるようなヒントがきちんと用意されてるのが丁寧。

 街づくりでも、1章で魔物が侵入してくるたび拠点が壊されて悔しい思いをしたので、2章は町の周りを壁で囲って。それでも侵入を完全には防げなかったので、3章では周りを囲むように塹壕を作成。まあこれも結果として街の地下がボロボロになったり溝に落ちたNPCが街に戻れなくなったり魔物と戦うためのフィールドが狭められたりといった問題があったんですが、こういった創意工夫がダイレクトに反映されるのは楽しい。
 

○音楽最高

 基本的に全部過去曲のオーケストラアレンジなんですが、
1章の拠点の音楽は大好きな4の街
2章の拠点は3の村で流れる曲、フィールドは「勇者の故郷」(4の5章前半)でブチ上がる。
3章はフィールドが「遥かなる旅路」(2前半)で拠点は3の街。
終章の前半拠点は4のほこら、フィールドは前奏付きで3の「冒険の旅」で否応もなく奮い立ちますね。で、各章ボスの戦闘は「栄光への戦い・生か死か(4戦闘曲)」ですよ。全体的に3と4優遇されてるなあ!そして竪琴を作成すれば原曲に変更もできちゃう。気遣いの達人。

○ここはもう少し......

・拠点に魔物が侵入すると教えてくれるんだけど、メッセージが表示されるだけだからターゲットがどこにいるか分からずに対応が遅れてしまう。これが壁を破壊してくるブラウニーとかだと放置できないから大問題。とりあえず拠点を出て外周をぐるり一周する間に施設を破壊してる後姿を視認したり、ばくだんいわが「メ」とか唱えだしてたこともあったな。せめて拠点にいるモンスターは全体マップで赤点表示してくれるとよかった。

・ドラクエらしく時間の経過で朝・昼・夕・夜が移り変わっていきロケーションによっては美しい景観も楽しめるのだけど、夜がマジで真っ暗なので作業や移動には全く向かない。
 どころか夜になると高速でこちらを追尾してきて殴ってきたり魔法で狙ってくるゴーストが厄介。1体だけならまだしも、逃げながら対処しているうちに何体も出てくるとウザいことこの上ない。特に各章序盤は命にかかわる程度の攻撃力を持ってるし、削られた状態で夜を越すと昼の間の行動にも支障が。倒しても建築素材をドロップしない(低確率で食材やキメラのつばさの材料を落とすことはある)から旨味も無い。
 どうも昼7分に対して夜の時間は3分らしいのだけど、体感もっと長く感じるので7:2くらいにするか、せめてラナルータ相当の消費アイテムが欲しかったなあ。素早く拠点に戻ってベッドで寝るにしてもなぜかNPCが自分のベッドを横取りしてる……。
 夜の時間帯の対処は、むやみに動かず殴ってきたゴーストだけ退治する→常に動き回ってゴーストの攻撃を全回避→素材を持ち歩き夕方になったら現地で簡易宿泊施設を建築して休む→最終的に山肌に穴を掘って朝まで埋まるという風にだんだん対処がスマートというか雑になっていきましたね。

・メニュー展開と便利ボタンがどっちも○ボタンなのでキャラやオブジェクトが重なってると行動が暴発する。ベッドから起きてアイテム整理しようとしてまた寝ちゃったり、旅の扉を使いたいのに近くの人に話しかけちゃったり。余裕もって広めにスペースを確保しようにも、このゲーム拠点の敷地面積はそこまで広くないからどうしてもコンパクトシティになっちゃうんですよね。

・ピンチの時、横ボタン連打で手持ちのアイテム・素材を選択して△ボタンで使用するのが間に合わないケースが多い。ここはショートカットを登録しておいて、LかR+○×△□の組み合わせで一発使用できるようにしてほしかった。

・3章の洞穴はところどころ床が「ひびわれ土岩」で構成されてて、乗った瞬間に一段落とされる。ビルダーズのマップはある程度ランダム(章選択時に自動生成)なため、ひびわれ土岩が縦に並んで配置されていることもそこそこある。こうなるとPCが上方向に1段しかジャンプできない仕様もあって、乗ってしまったらその場ジャンプでの脱出は不可能。周りの土を掘ってスペースを確保し土台を置いてから脱出することになるのだけど、スペース確保の段階でもう1段下に落とされるともう滅茶苦茶。状況を確認しようにも一度周りが土壁に覆われるとカメラが超アップになってしまうので何が何やら分からない。3章はNPCを連れ歩くことが多い章だけど、NPCが立っているところにはブロックを置くことができないのも混乱に拍車をかける。結局手も足も出ず飢え死にするだけならまだしも、連れていたNPCはその場に取り残されてしまうからあらためて救助に向かわなければならない。これだけは本当に勘弁してほしかった。

・可視領域が狭い(カメラをどう動かしても画面にキャラの占める割合が大きめ)と感じるけど、PS4版の画面見たら広々してたのでこれはvita特有の問題っぽい。
 多くの敵を相手にするシチュエーションだと周りの状況を確認しながら立ち回るなんてことが不可能なので、ぐるぐる動き回ってモンスターがこっちについてきてるのを確認してから振り向いて斬る、みたいな追手を撒く時の緋村剣心ムーブをしなきゃいけない。これに上空からの攻撃や遠距離からの魔法なんかが絡むと、発射音だけで回避しなきゃならなくなる。

このまま続編やると飽きそうだから、少し間を開けてからプレイしたい。

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