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7 Days to End with Youの感想

※ネタバレには一切配慮してません

 昨年のニンテンドーダイレクトで知って、面白そうだからプレイしたいと思いつつ他のゲームを優先してたら機を逃してしまったところにいっせいトライアルが来てくれてありがたい……。1週クリアまで4時間、それから全要素開放までにもう5時間。ただし2~3週目で4.5時間くらいかかったし、なんならゲームよりノートにメモしてた時間の方が長い。アイディア勝負のワンテーマ低価格ゲームらしいまとまりとボリュームで素晴らしい体験でした。


内容 説明する

 記憶を失った自分を保護してくれた謎の女性と、小さな家で7日間を共にするアドベンチャーゲームなのだけど、最大の特徴は女性の使っているのが未知の言語だということ。会話や行動をヒントに推定を重ねていってストーリーの全体像を把握するのがゲームの目的で、クリアに必須のフラグなんかは無いから適当に過ごしててもEDに辿り着くことはできるけど、それだと女性が何言ってるかサッパリ分からないから、最後までなんじゃこりゃって感想になっちゃう。ストーリーの理解には単語を知ることが必須。

はじめは異世界転生ものだと思ってました

 単語の推定はかなり地味な作業。家の中のポイントを選択すると一緒にいる女性が「それ」に対してコメントしてくれる。

ポイントしてる範囲が示されるのありがたい

 こんなふうに本棚の本をチェックしたところ、一番目の単語は両者に共通しているから恐らく『本』なんじゃないかな、そうなると残り2つは『色』や『数』を表してるんじゃないかなと想像できる。ただ、ひょっとすると『太さ』かもしれないし、指示代名詞かもしれない。メッセージウィンドウの左上に出てる文字列は『女性』か、この女性の個人名だよねというメタ的な推定も成り立つ。使えるものはどんどん使うぞ。

 こちらはベッドをポイントした際のメッセージ。これはもう、『ベッドで休む?』しかないでしょう!と安直に決めつけようとしたものの、ピタッと手が止まる。意味としてはそれで合ってると思うけど、『ベッド』『休む』なのか?『あなた』『休む』や、『寝る』『~したい』、『もう』『寝る』の可能性は?と考えはじめると何が正しいのかサッパリ分からない。
 そもそも自分はこの世界の単語はもちろん、文法だって知らないのだ。日本語みたいに主語や目的語が明確な場合に省かれるタイプの言葉だったら?単語を構成している謎の記号は単純なアルファベット置き換えなのか?母音-子音で構成されるタイプ?無いとは思うが語頭や語尾の変化で話者の属性や時制を表現するタイプだと手に負えないぞ。

 他にも推定の材料として本の表紙からタイトルを連想したり、料理を手伝って自分の理解度を確認することができる(失敗して女性が渋い顔をしたならレシピの読み方が間違っている)。それでも難易度はかなり高く、1週目はよく分からないまま打てる手が付きて右往左往している内にタイムリミットが来てしまった。
 それを受けて2週目は、確定と思われる単語とよく分からない単語をノートに書き出して地道な換語作業。このゲーム、自分の単語帳をいつでも開くことが出来て、単語を選択するとその単語を耳にした場面に飛んでシチュエーションや別のどんな単語と使われたのかを確認することができるので、とにかく単語を書きまくって推定される英単語に置き換えていくのだ。

 そう、謎の記号がアルファベットに対応して英単語を表してるってことは1週目からアタリが付いてたんです。『鏡(MIRROR)』や『本(BOOK)』みたいに同じアルファベットが並ぶ特徴的な単語はこの世界でも同じ場所に同じ記号が来ていて、その考え方だと『赤』を表してそうな単語が3文字、『緑』を表してるであろう単語が5文字で○△◇◇▽と、3文字目と4文字目が同じ記号になっているので。
 対応関係が一対一になっていない(一つの記号に対してアルファベットは複数の候補があり重複も多い)から作業には時間がかかったけれど、自分なりの単語帳ができると大佐になった気分。

読める!読めるぞ!

 そして解析が進むに連れ物語の隠れていた面が明らかになっていく。

物語 本当の

 はじめ、記憶喪失と見せかけて異世界転生ものだと思って遊んでたんですよね。毎日見る夢も、戦争のこととか水中から何かを求めて手を伸ばすような記憶とかがあって、戦争で命を落とした人が転生して浜辺に打ち上げられてたところを女性が保護したとかそんな感じかなって。5日目の夜に尋ねてくる謎の男も、異世界人の噂を聞きつけた官憲かなとか。
 ただ、それだと日に日に体調が悪くなっていって7日目にはもう目も開けていられずに絶命する主人公の描写がしっくり来ないんですよね。記憶喪失にしても異世界転生にしても。そこで女性の家の2海にある実験室のメモを解析していくと……『頭or髪の毛』『HUMAN』『たくさんの』、『BLOOD』『HUMAN』『たくさんの』、そういえば割れた鏡に自分の姿は映らなかったものの肌は浅黒く見えたし、生命の樹が表紙になってる本が置いてあったり、女性がOPから『MEET』『もう一度』って言ってるのは……これ転生は転生でも異世界じゃなくて錬金術とか反魂の類じゃないですか!
 そして隠し部屋の先で決定的な証拠を目撃してしまう主人公。

ダストシュートとその周りの血が……

 恐らく主人公と女性は恋人同士で、戦争で命を落とした主人公を復活させるべく生贄を捧げて奮闘してきたんでしょう女性は。それを愛と見做してすべてを受け入れるか、その罪を一緒に終わらせるか。選択によって分岐するEDの中には本当に異世界転生(記憶を持ったまま現代に転生した2人が出会うような匂わせ)もあったりして、もの哀しいながらも読後感は良かったですね。

機能 否定/良くない

 ただこのゲーム、単語からそれが使われたシチュエーションにジャンプできるのはいいんですが、個人的にはバックログも欲しかったところ。というかこのゲームの仕様でバックログが無いわけ無いだろと思って無駄に色々探してしまいました。
 ほか、メニューはAボタンで決定して深層へ、Bボタンを押すと一つ前の段階に戻るという仕様なんですけど、単語入力の箇所だけ、Bボタンが「編集せずに戻る」ではなくて「消去」になるんですよね。単語を調べるつもりが操作ミスで入力画面になって、反射的にBボタンを押すと今まで推定してた単語が消えるという……switchの標準仕様とも結びついてそうだけどなんとかならなかったんですか。
 あと、タッチ操作に対応してないのも残念だった。所謂クリックアドベンチャーはパッドだと操作しづらいんですよ。steam前提なんだろうけど、CS機で遊ぶ際の配慮が欲しかった。

まとめ

 プレイ感覚は『Return of the Obra Dinn(オブラディン号の帰還)』に近いものがありました。さっと遊べて後に引かないところなんかは忙しい社会人にピッタリ。
 相手のことを理解したい!と同じ文章を何度も読み直し想像するのも、脳の普段とは違う部分を使ってるようでとても刺激的だし、ヒロインの赤毛の女性が健気で献身的で服装もエッチで……黒のノースリーブハイネック、いいですよね。
 次は一緒にいっせいトライアルに来た『storyteller』やりましょうか。チェックしてた『The Longing』も割引になってるし、どこから手を付けるか迷っちゃいますね。

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