見出し画像

フォーエバーブルー ルミナスの感想

先日のダイレクトで突然発表されたフォーエバーブルーの新作!マジ?15年ぶりくらいじゃない!?

公式ページの内容が薄いのは気になったけど、好きなシリーズだから「評価が出揃うまで様子見」なんてできるわけがない。伝聞で面白いって聞いたから買うのか?悪評を耳にしたらスルーできるのか?自分の目で確かめ宅はならないか?というわけで事前ダウンロードしておいて、残業せずに帰ったら即起動!そして!

辛いです。フォーエバーブルーが好きだから……。

 さて。
 ゲームの評価軸をどこに置くか、得点をどう付けるかは、まあ人によって様々でしょうし正解なんて決まらないでしょう。

 自分の中にもひとつ、システマチックでときにデジタルなゲーム的面白さと、フレーバーに富みときにゲームの達成条件に影響を与えない作品的面白さ(この呼び方がいいかどうかはともかく)のどちらに軸足を置いているか、という評価基準があります。

 どっちが優れているかではなく、表現したいものが、システムを使いこなす万能感やルールの間隙を突く興奮なのか、その世界に入り込んでしまったかのような没入感やくゆる紫煙の匂いまで感じられるような現実性なのか。

 それによって自分がゲームに臨む姿勢、期待する体験を決定するんですが、それは製作者の想定と自分のスタンスにズレがあると「なんか違うな」という不満、しっくりこない感想に終始してしまうんじゃないかな、という危惧があるからですね。CIVに映画みたいな映像美を期待する、MYSTに複雑で考えがいのある成長要素を希望する、というような。

さて翻って、今回買ったフォーエバーブルー ルミナスはどんなゲームなのか。「潜るたびに形を変えるベールド海」「最大30人のマルチプレイ」……事前の情報からは、やや「作品的面白さ」を重視しているのかな、だとしたら攻略する楽しさよりダイバーの疑似体験を味わうくらいの姿勢でいた方がいいのかなというくらいしか窺えなかったのですが。



ゲーム的面白さの観点から見た不満点


・パラメータもゲームオーバーも存在しないため、育てる面白さも緊張感も無い。
 
・潜るたびに形が変わるというより12桁からなるIDが割り振られていることから、No Man's Skyみたいに膨大な数のマップデータが存在している?マップは細かい差別化がされておらず攻略要素が介入する余地が無い。

・「潜るたびに形が変わる」という言葉から受ける印象よりはるかにマップが広く、端から効率的にローラーしても埋めるのに2時間ほどかかる。

・魚ごとの動きに癖や幅が乏しいため、魚影を見つけたらLボタンで魚種を特定(アンベール)するというこのゲームのメイン動作に駆け引きが発生しづらい。

・魚群をまとめてアンペールしても「種」ではなく「個」単位で判別しているため、アンベールした生物のリストに20匹くらい同じ名前が並んで面白みが無い。

スクロールバーが大漁を予感させるけど全部オニカマス。

・ベールされている魚は青く見え、アンベールで本来の色を取り戻すという設定であるものの、水中の青に紛れて分かりづらいうえ、もともとの体色が青い魚もいて……。

青い熱帯魚なんていくらでもいるのに。

・見つけた生物の体長は少数点下2桁まで詳細に表示されるが、ゲーム進行に全く意味が無いうえ見た目の違いも分からない。

・メインシナリオの内容が薄味(特定の場所まで泳ぐ、特定の生物をアンベールする、Aボタンでお話を読むだけ)な上、進行に必要な条件として課されるフリープレイでのアンベール数が膨大。2時間でやっと1000匹ほど。

2-2のプレイ条件は1,000匹。2-3は2,000匹。何時間潜らせる気だ。

・単純にロードが多く、長い。



 ……ただ、ここまでは不満ではあるものの問題にしてなかったんです。
攻略に躍起になるゲームではなく、ダイバーとして海の生物と触れ合う作品だと思えばいい。自分の立ち位置によって評価は変わる。しかし、残念ながらフォーエバーブルールミナスの不満はそれに留まらないんですよね。

作品的面白さの観点から見た問題点


・ダイバーの動きが硬い。Bボタンによる加速やRボタンの上昇、ZRボタンの下降の動作開始と終わりに遊びがなくキビキビ……というよりカクカク動く。これはプログラムとフレームレート、どちらに原因があるのかは分からないけれど。

・マップは似たような地形が続き、製作者が用意したとっておきのロケーションや計算された配置による感動を得づらい。沈没船や熱水噴出孔のような"映え”もあるが、設定に裏打ちされたものではないため、その場所にそれが存在することに対する説得力やドラマが無い。

・流氷が浮かぶ海の底でカジカ(川魚)とチョウチョウウオ(熱帯魚)が一緒に泳いでいる。いや舐めてんのかマジで。こういった雑な配置が「作り物の世界」っぽさを強め、秘密の海でのダイビング体験というフレーバーをぶち壊しにしている。

・魚も現実に居るものばかりじゃなく、◯◯の変異種、なんてものがポンポン出るうえそれっぽい解説まで付いているから、自分の中で現実とファンタジーの目盛りをどこに合わせたらいいか困る。

「呼ばれている」(要出典)

・マルチプレイの空虚さ。Switchオンラインの機能を使うマルチプレイが前提になってはいけないという判断のためか、同じマップで別々に探索を行うという緩い繋がり方しかできない。その割に公式は「最大30人のマルチプレイ」を推してたし、目玉の様に扱われたエモートを利用した写真撮影もまずエモートが揃わないんじゃないかって疑問。簡単な「手を振る」エモートさえ10,000ポイントかかるし、エモート自体かなりの数がある。さらにこのポイントだけど……(下へ続く)

緩いゲームなのにコミュニケーションツールをアンロック式にするのはいかにも悪手

・エモートの解放や装備の色変更、シールを貼ったりというカスタマイズにかかるコストが膨大で最早やりこみの域。海底に落ちている宝物を集めてポイントを獲得、そのポイントと引き換えることになるのだけれど、その宝物の価値が100~5,000ポイント程と幅広い割に(多くは3桁)、それぞれコストが重い。具体的には4時間ほど潜って3万ポイント集まり、2万ポイントのシール1枚と引き換えたくらい。

「そこ」に「これ」が落ちている背景が全く無いから達成感に乏しい

・宝物に深い設定があるわけではないから収集に楽しみがない。背景に魅力を感じないならその行動の本質はホームレスの空き缶拾いと変わらない。

・膨大な魚のデータはメインシナリオの進行を担当するアシスタントAI音声による読み上げに対応……これはこれで好きな人がいるかもしれないけど、AI然としたおかしな抑揚を聴くと萎えるので自分は即OFFにしました。メインシナリオでも同じ調子で世界の危機を訴えてくるのが苦痛。ゲームの場合ワード単位で報酬が発生する(らしい)声優さんを使わなかったのは経費削減のためですかね。

「カリギュラ」でバーチャルアイドル"μ"を演じた上田麗奈さんに読んでもらえたら……

・ご都合主義でつまらないシナリオ。謎の海ベールド海に存在する世界樹と呼ばれる巨大なサンゴ、かつて繁栄していた古代民族オアンネス、オアンネスが残したツクモ盤と呼ばれる光放つ不思議な石板。こういったファンタジーな設定に対し、ダイバースーツに身を包み表情が作れないうえ喋らない主人公と陽気な先輩ダイバーに進行役のAIという話が広がらない面子、戦闘やピンチを表現できないゲームシステム、環境音メインの控えめなBGMが組み合わさった結果、極めて平坦でご都合主義的な展開が繰り広げられる。

急に出てきて深堀りされることもない先輩。当然、興味も持てない。

総括


 つまり誤解を恐れず言ってしまうとフォーエバーブルールミナスは、できることや考えることが少なく退屈で、雰囲気に浸るには設定がおざなりで、進行にかかる負担が大きい割にお話は面白くないし、かけた時間に対して得られる報酬のバランスは悪いというゲームということになる。設定は雑だがゲームとしては面白いか、退屈だが心地よい世界に浸れるかのどちらかだったなら評価のしようもあるのにね。

 一応、褒めるところはあります。500種を超える魚のデータは膨大だし、グラフィックも頑張ってる。効率等考えずに自由に泳いで魚と戯れる体験は悪くない。
 ただ見つけた魚は基本的に一期一会になってしまうため、自分だけの水槽を作ったて魚を中に入れて眺めたり、自分で海を作成して(サンゴ礁の規模や海底洞窟などの地形を配置するかどうかなど)潜ったりできればなあ……と惜しい思い出いっぱいです。

  少なくともピラルクとリーフィーシードラゴンを見るまではプレイを続けるつもりなので、今日書いたこの記事を無かったことにして手首グルングルンできる日が来ればいいなあとも切に願ってます。切に……。

大好きなミノカサゴ。見た目グロいから記事のサムネイルに使うのは我慢。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?