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天地を喰らうⅡ諸葛孔明伝の感想

無理のあるルビ

 天地を喰らうのゲームって、FCで出てるRPGとアーケードで出てる(メガドラ辺りに移植されてるかな)ベルトスクロールアクションどっちもあるうえ、どっちも面白いから偉いですね。実家の最寄りのゲームセンターがバスで50分の場所だったので、中学生の頃たまに友達と街に出ると1プレイ100円でプレイしてました。ゲーセンで遊んだのはもっぱら天地を喰らうとストライカーズ1945Ⅱだったなあ。 それはさておき、RPGのⅡ、副題『諸葛孔明伝』の方はとにかく「武将戦」「袁術戦」のBGMが超有名なので、プレイしたことないけど曲自体は聴いたことある、って人も多そうです。
 自分も無印はリアルタイムでプレイしたものの、Ⅱは手つかずでした。発売当時の1991年ってGBでは前年暮れにSaGa2秘宝伝説が発売されたり、SFCもいよいよ名作や大作が出はじめたり、円熟期を迎えたFCもラグランジュポイントとかメタルマックスが発売しててとにかく百花繚乱だったんですよね。同じ理由でスルーしたギガゾンビの逆襲もいずれ買いたいんですが、鬼のような値上がりを見せてる……。

 では、いくつかに項目立てて感想を述べていきましょうか。と途中まで書いてたんですが、とっちらかったので推敲は諦めました。noteは1行あたりの文字数が少ないし行末が揃わないし画像は並べて貼れないし、この辺どうにかなりませんか。

1.「三国志のRPG」にアジャストしたゲームデザイン

 当時の普通のRPGなら「街で情報収集」→「イベントが発生し、困っている人を助けることに」→「ダンジョンでキーアイテムを入手」→「困りごとを解決」→「次の街へ」となるところ、「城or関で情報収集」→次の「城or関を攻略」の流れでバンバン進むから非常にテンポがいい。ダンジョンに関してはいわゆる洞窟もあるものの、峻険な山越えや古戦場など、城へ道筋としての意味合いを含むものが多いのは面白い。

 また、しっかり本宮ひろ志タッチだと分かる顔グラ付きでのやりとりがイベント戦で挟まるのは燃える要素。中盤の山場である赤壁の戦いでは曹操の大兵力が火計や100万本の矢による支援でどんどん削れていくのを実際の戦闘で表現するなど見せ方も上手い。落ち延びた先で趙雲・張飛・関羽が曹操の行方を塞ぐも最後には関羽が情を見せ曹操を逃がしてしまい、首検分の場に現れた功無き関羽を糾弾する孔明とそれを止める劉備・・・いや待て待て待て。流れどころか細部の台詞に至るまで横山光輝三国志まんまだよこれ!

絶対に笑ってはいけない矢集め          横山ファン大爆笑の赤壁  

 他にも荊州南部平定で零陵を攻める際に城外に出た金旋を城郭からキョウシが矢で討つ場面とか、横山パロディどころか大丈夫かこれって場面がちょくちょくある。いや展開としては盛り上がるからいいんですけど。

 オリジナル要素ももちろんあって、邪馬台国で大蛇を退治したり、孔明のピンチに呂布が颯爽と駆け付けるところは笑ってしまった。そもそも原作まんまだと当然バッドエンドなので北伐以降は完全ifシナリオ。苦しめられた陳倉も普通に落とすし、天候を操って曹操の罠を潰したり曹丕が司馬懿に裏切られて非業の死を遂げたり、「死せる孔明生ける仲達を走らす」の格言をアレンジしてシナリオに組み込んだり、司馬懿が石兵八陣で蜀の進行を防いだり。

  目を疑う展開              やたらイケメンな曹丕

 この時代だから派手な演出は無いもののイベントの数は豊富だし、火計で兵が壊滅するさまを実際の戦闘画面で表現したり執拗な追撃を一歩ごとの強制エンカウントで表現したりと工夫を凝らしてるのが嬉しい。脇を固めるキャラも水鏡先生や華陀はともかく吉平や黄石公まで顔を出すマニアックさ。 残念な点として、完全に三国志演義を知ってることが前提みたいなノリで進んでいくから言い回しも古めかしいしストーリーも「あれ?袁紹どうなった?」とかユーザー置いてけぼりになりそうだなってところ(まあ横山三国志からして官渡の戦いはばっさりカットだが)と、チャート進行を補完するためか町の人の台詞がちょくちょく説明的に過ぎること。「そろそろ馬良さまのところへ戻りましょう」とか、「長沙を攻めるのはほかの3つの城を落としてからの方がよいでしょう」とか言ってくる町人は何者なんだ。

2.先進的なシステム

 ・高速移動
 序盤のいわゆる「関羽千里行」イベントで操作キャラが劉備から関羽に移るが、持ち物欄を開くと『せきとば』が。装備すると移動速度が大幅に上がり、ファミコンRPG屈指どころかSFCでも91年段階でここまで移動が快適なゲームは見当たらないレベル。おかげでフィールドはそこそこ広いのに拠点同士を0~2回程度のエンカウントで行き来できる。

・LV、MP、魔法等を個人ではなくPT単位で管理
 たくさんの味方でPTを編成するタイプのRPGは長期離脱や入れ替え等でしばしば味方キャラ間のLV格差が問題視されるところ、このゲームはLvUPの対象を「劉備軍」として全体化することで個人のレベルを排除。
 それによってRPGにありがちな、Lv差があるからPTが固定化する、特定の場面でしか強くないキャラを育てたくない、という問題を解消しMPと魔法種類の共有(さらに攻撃回復の魔法は上位のものを覚えると下位のものに上書きされるから、徒らに数が増えることもない)で、5人PTでも把握すべき情報を極力抑える斬新なシステムを破綻なく纏めているのは素直に驚き。

 さらに使える魔法(策略)や陣形も指定した『軍師』が習得しているものをPT全員が使用可能。では策略や陣形以外のどこで武将の個性を描くかというと、直接攻撃力に関係する武力、策略の効果量や成功率に関係する知力、行動順に関係する素早さや、装備可能な武器、平地や山など特定のロケーションで能力が上がる得意地形などで差別化が図られている。なんで馬謖の得意地形が山なんですか。
 
 軍師によって三国志でお馴染みの陣形を組んで戦えるのも面白い。策略同様、軍師によって使える陣形は異なるが、素早さUPの「はくばのじん」や、攻撃力UP防御力DOWNの「ほうしのじん」、攻守のバランスに優れた「ぎょりんのじん」や、孔明専用で生門に指定した武将以外は攻撃を無効化する「はっけのじん」などニヤリとさせられるものが多く、三国志演義や光栄のSLG版をうまくRPGに落とし込んでいる。

 ……ただ、せっかくのシステムにも関わらず、武将の個性の描き分けに成功しているとは言い難い。

 まず、序盤から仲間にいる関羽・張飛・趙雲が戦闘要員として強すぎる。これは三国志演義のストーリー的に仕方ないことではあるが、関平や周倉、魏延らはどうしても四番手五番手になってしまう。そもそも編成を行える施設が中盤まで出てこないから、結構な期間PTが劉備・関羽・張飛趙雲関平(周倉)でほぼ固定なのも惜しい。もし武将間の相性による能力UPや協力攻撃なんかが実装されていればまた違ったのかもしれないが、そこまでやるとFCに盛り込めるボリュームではなくなっちゃうか。
 使用する武器も剣刀槍斧弓などに分かれていても武器種に特徴が無いためフレーバー程度の意味しかないけど、これも要素を増やすとFCのRPGとしては複雑になりすぎるからこのままでいいのかもしれない。
 軍師システムも、武将が習得する策略や陣形に差異が少ないため、「この戦術を使いたいからこの武将」が成立しない。中盤以降の軍師は馬良か孔明のどっちかで固定になる。

3.戦闘の面白さ

 戦闘の特徴はHPを意味する「兵士数」が攻撃力にも関わってくる点。これは納得できるポイントだし、「武力タイプの武将は放置すると危険だがある程度削れば怖くない」「味方の猛将は兵士数をケアしてないと全力を発揮できない」という、従来のRPGとは異なるプレイ感覚になる。

 先制攻撃のメリットが大きいこと、戦闘で一番危険なのは開始直後であるということで、ターンが進むほど楽になっていくのはゲームデザインとしてどうなんだと思わなくもないけど、兵士数が1なのに武将の特技が発動すれば一度に4000人とか倒してしまう三国志IXみたいなのはちょっと……って思ってたので(でもイベント戦闘だろうがランダムで敵の奇襲からはじまるのは辛い)。

 個人的に、序盤-中盤-終盤で強い行動が変わるのが面白かった。
 兵士数も少なく強い策略も使えない序盤は離間の計で相手を足止めしながら地味に削り、敵の兵士数が大幅に増加する中盤は縛殺の計や離反の計でダメージに依らない一発を狙い、攻撃系策略のダメージがインフレする終盤は撃石の計でガンガン削る。

 赤壁が終わると呉が完全にフェードアウトするとか持ち物がキャラごとの管理ではなく「パーティーで何番目に加入したキャラか」で管理されているという非常に大きな問題はある(例えば猛達と黄忠を編成所で外し、イベントで関羽が抜けた場合、それから加えるメンバーの装備と道具は順に孟達・黄忠・関羽のものとなる。装備できない武器を持ってると攻撃力はゼロ)ものの、全体としては意欲的かつ良く出来たRPGだった。

出ると良かったんだけどね……

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