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「ヘラクレスの栄光3 神々の沈黙」の感想

 問題はあるけれどストーリーの良さで全部許せる名作、ということは前々から聞いてたんですが、プレイしてみてなるほどその通りだなとは思いました。
 RPGにおいて、蘇生させる魔法やアイテムの存在は「物語上の死」を描く際、常に頭の痛い問題だった。「ザオリクしろよ」「フェニックスの尾使えよ」というツッコミを入れたいプレイヤーは見て見ぬふりを強いられてきたのだけれど、この疑問へのアンサーとして「主人公は不死だが普通の人は生き返らない」という設定をうまく絡めてストーリーに落とし込んでるのが素晴らしい。こういう、システムと設定とストーリーがしっかりマリアージュしてるのは別媒体ではありえない、ゲーム独自の楽しさなので、それだけでワクワクしますね。

 さてそんなヘラクレスの栄光3、遊ぼうと思えば今でもSwitchでG-mode移植版、プロジェクトEGGではオリジナルが遊べるので、気になる人どうぞ。1992年の段階でこれをやったのか、という衝撃の演出と展開は実際に体験しないと分からない没入感があります。
 けど一方で現在のRPGに比べるとUIやバランスの点で我慢できないポイントもありそうなので、今回の感想はどこがどう悪いかを中心に書いていきましょう。ただこのゲーム、ちょっとggっただけでも「ストーリーはいいけどほかは全部駄目」みたいな論調が引っかかるので、2022年の視点ではなく1992年当時の、30年前のゲームとの比較で擁護できる点は擁護したい。それで「これなら我慢できそう」と思ったら是非プレイしてください。
 えっ……30年前……?

まずはストーリー以外で良かった点

・BGMはループ短めだが良曲あり
 とくにフィールドとトロイ地方の街の曲は名曲だと思います。

・序盤の多人数PTはインパクト抜群
 最初に仲間になるのは最大HP10の妖精が9人。フィールドではちゃんと9人が主人公のあとに付いてくるし、戦闘では9人まとめて最大HP90のキャラとして行動する。そして現HPが80以下になると1人死んでしまい、最大HPも変動してそれ以上には回復出来ない。フィールドでも1人減った状態になる。
 ハイライトは主人公+奴隷9人+老人という11人で下水道を進むシーン。こんなPT見たことない。

・雰囲気ある敵モンスター
 グラフィックは当時のスクウェア等に比べると見劣りするけどしっかりアニメーションするから臨場感はあるし、不気味な敵が多く見せ方も上手い。

メガテンとは違う解釈で迫ってくる人面蛇    「まくろきもの」はネーミングも素敵   

ストーリーの問題点

・序盤が地味
 主人公は何も分からない、不死の仲間も記憶喪失なうえ、「どうして魔物が増えたのに神様は助けてくれないんだ」という街の人々が発する不安は「大地(ガイア)を傷つける人間をゼウスが見捨てた」という回答が説明書開いてすぐのページに載っているため物語を牽引できない。
 結果としてプレイヤーはよく分からない世界を、やや冷めた状態で流されるままに次の街へという感覚になってしまう。

・後半の動線が弱い
 何をすればいいかはちゃんとしてるんだけど、どこへいけばいいのかがよく分からないことが多い。「東の方に逃げていった」など大まかな方向は示されるもののワールドマップが広く、世界地図がゲーム中に存在しないうえエンカウント無しで自由に移動できる乗り物は最終盤まで手に入らないのがキツい。

・ラストダンジョンの短さ
 わずか1階層。奥で横を向いてるキャラを単なるNPCかと思って話しかけたらラストバトルがはじまったのには面食らった。

システムの問題点

・移動速度
 遅いとは思うけど、当時のSFCと比べてそこまで酷いわけでもないです。1992年というとロマサガ、FFV、ドラクエVの年(どうかしてるラインナップだ)。ダッシュが使えたFFVはともかく、ドラクエVと比べたら責めるようなことでもないね。

・高いエンカウント率
 キツい。ただこれも当時のRPGの中では普通かやや高い程度に収まるかな。尚、テンポは悪くなるものの非消費アイテムの一部を使用することでエンカリセは可能。

・まともに相手すると大変なザコ戦
 PTの人数が1人や2人のときでも容赦なく3匹以上の数で出てくる上にザコのHPはこっちのレベルに連動して上昇する仕様っぽいので一撃で倒せることはまず無い。そして敵は状態異常や前列・後列移動でこちらの攻撃機会を潰そうとしてくる。さらに仲間はAIで行動し、HPが減れば回復を、状態異常になれば消耗品を使ってでもその解除を優先するので……。あと一撃で倒せる相手でもそっちを無視して仲間を助けるもんだからむやみに戦闘が長引く。だからといってAI→マニュアルに切り替えても、レベルが低いうちは仲間からの信頼度が低いため満足に言うことを聞いてくれない。
 結果として、仲間(手数)が少ない、信頼度が低い序盤の戦闘はテンポが悪くなりがち。中盤に差し掛かる頃には便利な全体攻撃アイテムが買えたり仲間も言うことを聞いてくれるようになったり、最大5人までPT人数も増えるしそもそも状態異常を仕掛けてくる敵が少なくなるのでこの問題はほぼ解決する。というか序盤のバランスが厳しいですよこのゲーム。剣での攻撃が届かない後列に下がってひたすら仲間を呼びつづけるクモラの物量に押しつぶされるのは誰もが通る道。

・フィールドで迷いやすい
「北に街がありますよ」というメッセージを頼りに北上するにも、不死の存在たる主人公は高台から飛び降りたり浅瀬を潜って進んだりできるものだから、取り得る経路が単純ではない。そこに高めのエンカウント率(と、序盤は長めの戦闘時間)が加わると戦闘終了後には来た道目指す先を忘れていることも。まあこれは自分の記憶力が衰えてるせいかもしれませんが……。

・フィールドの可視領域が小さい

左から、Final Fantasy V、Romancing SaGa、ヘラクレスの栄光3

 写真を見てもらえれば分かってもらえる通り、ヘラクレスの栄光はフィールド画面の右端にコリント式の石柱がデザインされているため約1キャラ分だけ画面が狭くなっている。たったそれだけと侮るなかれ、高さの概念があるだけでフィールドは迷路のように入り組んでしまい、一気に迷いやすくなっている。

・「もちもの」欄への不満
 アイテムはPT共有(FF式)だがスタック不可で48個しか持てない。流石に現在装備しているものは別カウントだが、アイテム欄が埋まった状態だと装備を外すことも出来ない。このゲームはザコが「さびた○○」という装備をドロップし、終盤の街にいる磨き師に渡すことでランダムな装備品を入手できるというお楽しみがあるのだけど、そのために道具欄が圧迫されがち。
 この問題を解決するために序盤からフィールドにアイテムを「埋めて」おいて、後で同じ座標を調べると掘り返せるシステムだが、これはこれで場所を忘れたり掘りにいくのが面倒だったりする(そのため、有料の回収屋も存在)。中盤を過ぎる頃には預かり所も使用できるけど、これが根本的な解決に繋がらないのはイベントアイテムはもう使わないものも含めて売ったり捨てたり埋めたり預けたりが一切できないことに起因する。つまり防止の為なのかもしれないけどこれはどうにかしてほしかった。
 また、並べ替えができずアイテム名の多くがひらがなorカタカナ+ひらがな(「アテネのかぶと」など)なため、アイテムを選ぶ際に紛らわしいことが多く判断がワンテンポ遅れるのも快適性を損なう。

・面倒な魔法の取得方法
 各地の神殿を訪ねることで神様の加護を受け、規定のレベルに達するとその神様が司っている魔法を覚えるというシステムは面白さを感じなくもないけど仲間が増えるたびに取捨選択の余地なくはじめから神殿を回り直すのは単に手間が増えるだけ。しかも街から離れたところやダンジョンを抜けた先にポツンとそびえてる神殿もあるもんだから……。アテナはバフ、デメーテルは回復、アレスは炎系攻撃魔法とか系統を整理した上で加護を受けられるのは最大3柱まで、とか決められたらゲーム性が出たかもしれない。

・探索の楽しみをスポイルした信頼度
 街の壺やタンスを調べることができるのはドラクエ同様だけど、それを手に入れると仲間の信頼度が下がる=命令を聞きづらくなるというシステムのため、街を探索する楽しみが減っている。手に入るアイテムも薬草のような価値の低い消費アイテムばかりのため、途中から探索そのものをしなくなってしまった。

バランスの問題点

・レベルアップで上昇するステータスが完全ランダム
 レベル2になったとき、HP3MP2という上昇で、そのときは何も思わなかったんだけど、2→3のとき、HP/MPだけでなく他のパラメータまで上昇してビックリしましたね。概ねレベルアップごとにHP/MPは1~10、力・素早さ・知性は0~4上昇するらしいです。あれ、最初の成長むちゃくちゃ酷くない?

・すばやさ、ちせいの効果を実感しづらい
 乱数の影響が大きいのか、素早さに結構な差があるメンバーでも行動順序がやや安定しない。また知性は魔法ダメージではなく状態異常への耐性や復帰確率に影響するらしいのだけど、効果の程が分かりづらい。一方で最強の武器の攻撃力が50とかなので、力は与ダメへの影響が大きい。

・キャラごとの性能差が出づらい
 原則、全てのキャラが全て武具を装備可能。得意な武器種は決められているけど、各地の修行場で得意武器を3つまで変更・上書きできるので。極端な話、防具をカチカチに固めて最強の店売り武器であるアルテミスの弓(2回攻撃)を3人くらいで撃つことになる。

・属性相性が極端
 クリアレベルでも最大HPが200弱くらいなのに複数人に100以上のダメージを与えてくる炎やふぶきを吐いてくる敵がいる一方、属性攻撃を軽減する装備は……あるにはあるものの、素通しか無効かだけ。ボス前にきっちり対策していけば苦戦することはないし、逆に対策してないとほとんど何もできずにやられることも。
 全属性無効の「はじゃのよろい」や全体に全属性無効のバリアを張る「ゼウスのよろい」が手に入ったら、あとは戦闘中に防御力UPのバフを重ねがけすればかなり楽になる。ただ、ラスボスは全体ダメージ+属性相性消去の攻撃を仕掛けてくるから大変。

問題点を乗り越えてプレイするために

 それでもやっぱり後半~終盤にかけての伏線回収と呆然・愕然とするしかない展開は、既プレイの自分さえやり直したいと思う可能性があるのでtipsを残しておきます。

・序盤は1~2匹で出てくる敵だけ狩る
・ダンジョンでは道具使用でエンカリセができる「レイオスのにっき」を10歩ごとに使う
・アテネでどうのゆびわが買えるようになったらトロイ山~トロイ道中で多数出現するザコを狩ってレベリング
・防具はドリスコスでししのけがわ、新アテネのアテナシリーズは買うがそれ以外は無理しなくていい。武器は序盤きりさきのつめを頼りに、中盤以降はりりょくのけん、後半はアルテミスのゆみを撃つことになる。
・魔法はパウ、パウラ(回復)、スパラー(攻撃力UP)、ガルダー(全体に防御力UP)、ノアルーン(ルーラ)、ダケープ(リレミト)を覚えていればなんとかなる。
・装備の道具使用効果はどうのゆびわ(全体攻撃)、ゼウスのよろい(全体に全属性無効付与)、ぎんのゆびわ、アルテミスの弓(攻撃回数を増やす)、みかくしのかぶと(全体に防御力UP)を覚えていれば十分。

このとぼけたペルシャ感、まさにバルバロイ


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