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ドラゴンクエストヒーローズの感想

 なんもやること無いな~と思いながら新しいゲームを起動してはなんか違うなと電源を落とし、別のゲームをはじめては面倒そうだなと開始10分でセーブせずやめる。1週間で試したゲームの数は実に8本。で、9本目にプレイしたのがこれです。


ゲームスタート

 ドラクエ特有のどこか愛嬌のあるモンスターと街の人々との日常を切り取った平和なムービーからあっという間にモンスターが狂暴化、親衛隊長である主人公は暴れだしたモンスターを倒しながら王様を救うため城へ向かう、という流れで即チュートリアルのアクションステージへ。えっ、もう?といささか面喰いながらも画面下に表示される左スティックで移動、Bでジャンプという分かりやすい操作説明通りにキャラを動かすとモンスターがPOP。ナビゲーターの言う通りYを連打!Xを連打!で派手なアクションとともに敵がまとめて吹っ飛ぶのは気持ちいい。

 少し進むとますます多くの敵がいて、やっぱりガチャ押しアクションでまとめてなぎ倒して王様を救出。すると街の広場に巨大なドラゴンが出現の報。ああ、ボスステージかと納得して正面からバシバシ斬ってたら炎で焼かれ、2回目の挑戦ではできるだけ正面に立たないことを心掛けて無事にドラゴン退治。ひとまず城は危機を脱したが世界の様子が気になるから見に行こう!というところでOP。

 正直、ドラゴンクエストの「序曲」ってロト直撃世代に特攻だからズル過ぎるんですよね。トランペットが吹き鳴らされる前奏がはじまってレティス(ラーミア)らしき巨鳥が飛んでいった時点でああ、もうこれはプレイしよう、って思いましたもの。プロローグや世界観の説明を引っ張らず、いきなりピンチ!いきなり無双!って導入になってるのもよかった。ドラクエブランドということで設定やお約束が共有されてる成果とはいえ、ずっとムービーが続いたりウロウロさせられたらゲームのメインパートに辿り着く前に投げちゃいますものね。

 男主人公のcvは松坂桃李、女主人公の声は桐谷美玲。ネットでは棒扱いされてたけど、どちらも問題なし、違和感なく物語に没入できました。アフレコが上手い下手の話なら、アリーナの中川翔子の方がアレだし、そもそも個人的にはテリーやヤンガスの方が声のイメージが合ってないんだ。

 ゲーム部分は拠点で買い物やセーブなどの準備→戦場への遠征を繰り返す形になるのかな。まだチュートリアルなのか、スキル習得、操作PTの変更、モンスターの召喚などが少しずつ解放されていくから混乱も無いし、操作の複雑さもかなり抑え目になっていると感じる。

 不安なのは戦闘の前後に挟まる長めのロードと、まだ5戦くらいしかしていないのに既に「やってること毎回一緒だな」という飽きの予感が忍び寄ってきていること。予感というよりは確実な未来という受け止め方をしている状態なんだけど、これから大逆転の興奮体験ができるんだろうか。不安。

調和の祭壇崩壊まで

 さて。異世界から迷い込んできたアリーナ・クリフト・テリーに、ヤンガス・ゼシカ・ビアンカ・フローラが仲間入りしてPTが賑やかになってきたところでこのゲームの問題が次から次へと持ち上がってきた。まあ楽しい。悪いゲームじゃないと思う。でも良作と言うには……という感じ。

あのキャラが3Dで動きまくる!は素直に楽しい

 まず、ゲームのテンポがところどころ悪い。戦闘中はそこまで気にならないんですよ。とんでもない数の小型モンスターが動き回ってても、それらを必殺技でまとめて薙ぎ払っても全然処理落ちしないし、次から次へと現れる敵への対処に没頭できるから「5分だけプレイしよう」とはじめて、気が付いたら10分経ってたなんてこともちょくちょく。

 ただ、拠点から戦場へ向かうまでのロードが約15秒、戦場から拠点に戻る際も操作可能になるまで15秒程度かかる。ここで熱が冷めちゃうんですよね。PT入れ替えもメニューからではなく拠点の酒場で行うことになるし控えメンバーは買い物や装備の変更もできないから、新しい仲間が加わったし適当なステージで使用感を試すか……なんて気にもなりづらい。

 戦場での足の遅さもネック。後述するようにたくさんの敵を相手に一騎当千する無双アクションというよりタワーディフェンスの要素が濃いから、遠くにPOPした敵を倒しに行くのに移動スピードの遅さがキツい。せめてキャラごとに差異があったり特技でダッシュが使えるキャラでもいれば違っただろうに(一応アクセサリーで移動スピードUPの星降る腕輪も作れるが、作成難度も手間もかかるうえ劇的な効果があるわけでもない)。
 
 ちなみに主人公はルーラで戦場内のチェックポイントにファストトラベルできるが、これもあらかじめチェックポイントで2~3秒ほどAボタンを押しっぱなしにして登録しておかなければいけないうえ、登録地点の判定が狭く、敵がたくさんいる場所だと見落としがちもしくは呑気に登録してる状態じゃないということで使い勝手が悪い。さらに言うならルーラ不可のマップも普通にある。

 クエストも受注だけで1秒近いSEが流れ、報告はSEに加えて達成スタンプ演出でテンポを削ぐが、これはまあ難癖のレベルか。

 ほかに気になるのは同じ展開の繰り返しが多いこと。賢者見殺しツアーと揶揄されたドラクエ8でさえ見殺しに至る経緯は種類があったものの(それでも当時はウンザリしたが)、今作も世界お助けツアーとでも銘打つべきレベルで展開が一緒。
 モンスターが街を襲っているらしいから助けに行こう!街の外周でモンスターを発見したから倒す!街の中もモンスターでいっぱいだから防衛対象を守りながら倒す!そのさなか知り合った異邦人(シリーズキャラクター)と協力してボスモンスターを倒す!ありがとうございます王様自らが助けに来てくださり感激です、なんの王として当然のこと、別の街も心配ですね、よし次はそこに向かうぞ!私たちも元の世界には戻れないし協力します。

……の流れを世界の主要都市すべて回るまで4回連続で行う。現在の進行状況だとツアーも終わってW主人公の片割れがPT離脱、実は主人公は事件の黒幕に対抗できる一族の末裔だったという事実が明かされたものの、それまでは本当に退屈な脚本だと思ってました。

 あとは脚本の粗というか、この世界は通常のDQ世界と異なり人類と魔物が永く共存してきた平和な状態(黒幕が言うにはどうも光の女神に魔物の本質が歪められた状態らしいが)なのに、OPで魔物が急に狂暴化したことに戸惑いつつも即殺スタイルでガンガンぶっ倒していくってのは話が早くて助かると感じた一方で、いやお前ら逡巡とか懊悩とか無いのか……?という気にはなる。魔物と共存していたというのが設定上の話でしかなくて、ストーリーやステージの内容に落とし込めていないのは勿体ない。

 あとはなんといっても、戦場を走り回って無双するゲームかと思いきや四方八方から攻め寄せてくるモンスターから対象を防衛するマップがやたら多い構成なのに、ステージクリアごとに何とか拠点は守り切ったがさらに奥に魔物が入り込んでるから急いで先へ進もう!でもまずは拠点に戻ろう!という矛盾した脚本、拠点に戻ると仲間たちは酒場でくつろいでたり素材集めで別のステージへ行くことに何の制限もないデザインが致命的に噛み合ってない。前述のロード時間も相まって、「急がないと街が危ない!→15秒のロード→拠点へ戻ってリザルト表示」という流れで次のステージへ進む気勢をすっかり削がれてしまう。

 それ以外にも普通に進めていればお金に困ることが一切無いうえ、テリーの剣を除いて武器種が使いまわせないから新しい装備が売り出されるたび上位のものに買い替えていくだけの買い物も楽しくない。
 この罠に陥ってるゲームそこそこ見かけるけど、装備品をメンバー間でやりくりしたり攻撃力は低いけど付与効果が強いから使い続けるみたいなことができないならお店そのものが不要では。

 一方でアクセサリーは敵ドロップやステージクリア報酬、ちいさなメダルと交換で手に入るレシピと、主に敵から入手する素材で作成。アイテムごとに初級・中級・上級とレシピが分かれており上のランクほど効果は大きいが素材も希少、作成が大成功すればランダムなおまけ効果が付与されたり同種のアクセサリー同士を合成しておまけ効果を累積させたり……とやりこみ勢向けの要素がいっぱい。効果も定番の防御力UPからマホカンタ効果や対ルカニ・対マヌーサドロップ率UPや有翼モンスターへのダメージ増加など様々で工夫しがいがある。キャラクターごとに3つまで装備できるから役割分担もできていいことずくめに見えるが、魔物からのドロップだけでは全然新しいものが作れない。
 多くのアクセサリーがコモン素材+レア素材の組み合わせで作成できるのだけど、初期から解放されてる弱めのレシピはともかく、それ以外のレシピに必要なレア素材はドロップ率が渋いうえそもそもドロップする魔物がゲーム後半登場の可能性もありそう。まあこの辺りは周回前提かもしれないし完全にやりこみ要素として捉えてもいいかもしれない。今のところ、サイドクエストをこまめに潰してれば各ステージの到達レベルを上回った状態でメインシナリオに挑めるバランスになってるっぽいので。

 最後に、序盤の持ち物制限がひたすらストレス。前述のとおりアクセサリー作成には魔物が落とす素材を用いるのだけれど、手に入る素材の種類に対してストレージが狭すぎる。売ったり捨てたりしてくださいとは言われるけれど、レア素材は捨てづらいし簡単に手に入る素材は捨ててもどうせまた拾っちゃうだろうし、そもそもどれが要らない素材なのか判断がつかないから頭を抱えてしまう。特定のクエストをこなすと容量が増えるとはいえ、最初から所持制限なんて取っ払っちゃえばいいのに……と思いますね。

(イラッ)

 なんか随分と欠点や問題点をあげつらった気がするけど、面白くないわけでもましてやクソゲーってわけでもないんですよ。ただ、やること一緒なんだよなあとか起動しても戦場に向かうだけで長いロードが挟まるんだよなあとか考えるだけで億劫になるのは否めない。

クリアまで

 進行状況が一気に飛んだ気がするけど、いや仕方ないんですよ。ビアンカが圧倒的な強キャラというかぶっ壊れで、最後まで苦戦しなかったから書くことが無い。遠距離から五月雨撃ちがロックオンレーザーみたいな挙動で雑魚を4~5体まとめて蹴散らしボス相手にも数発ヒットするうえクリティカルがそこそこ発生してそのたびにMPが回復するから遠くから撃ってるだけでほぼ完封できる。
 攻撃範囲だけで見れば主人公のれんごく斬りの方が広いけど、ビアンカの場合はサンダーボルトで一定範囲に多段ヒットするバリアを張れるうえ、これがキラーマシンみたいな機械系モンスターを一時停止させるデイン系魔法の特性を持ち、正面からの攻撃を防ぐさまよう鎧にもお構いなしにダメージが通る。体力が低いのは弱点だけど、逃げ回ってるうちに味方がなんやかや戦ってくれることもあったり。敵の射程外や向こうが気づいていない地点から適当に五月雨撃ちしてるだけで勝てるのはゲームの面白さを損なってましたね。
 じゃあ縛れやというのはごもっとも。仲間になったときはそもそもビアンカになぜ弓……という気持ちはあったけど、今ならビアンカといえばグリンガムの鞭よりケイローンの弓ですよね!って言えるわ。

弓の達人……そうかな……そうかも……

 他に使ったキャラは雑魚散らしには向かないけど大型モンスター相手に分身→空中でMPが続く限り攻撃コンボが繋がり続けるテリーも強い。ゼシカは硬直が長いセクシービームをはじめ技が使いづらいものの、仲間にしてるとCPUがハッスルダンスでHP回復をしてくれるのがいいですね、必殺技のマダンテはダメージが高いものの、自分で操作するキャラではないなと思いました。正直誰を使ってもクリアはできるんでしょうが、ビアンカとテリーが抜けて強すぎる感。

 一方でストーリーは最後まで一本調子というか、起承"順”結って感じ。魔物が暴れだした原因は世界樹に封印されていた闇の竜が復活しそうだから。闇竜に対抗するための光の腕輪を探して光の巫女の啓示を受け、闇落ちしそうな世界樹を治すためのアイテムを手に入れ、世界樹を治したものの既に闇竜は復活していたため、光の腕輪と仲間の絆で勝利。非常にきれいな流れ。
 ……と言いたいところなんですがね、「光の腕輪はどこにあるんだ!」ってずっと探してるのに実は一緒にいた仲間が持っていたとか、腕輪が真の力を発揮する理由付けとか信じられないほど半端。

探しものは眼の前(のホイミスライム)にありますよ王様

 「仲間の絆」というのも終盤唐突に強調されるようになるけど、それまで触れられていなかったのに「俺達には仲間の絆がある!負けるもんか!」って口々に言いだすのは、あれ?必須シナリオ飛ばした?って不安になる勢い。総じてシナリオの出来は微妙ですね。微妙っていうか落第点だわ。おかげで、正直セットになってる2にまったく手が伸びない。ドラクエのオールスターゲームなのにシナリオ、クロスオーバーや掛け合いに全く期待できないし、パッケージ見る限り7からガボとマリベル、6はハッサンが新規参戦っぽいが……。

いや唐突に主張しはじめて戸惑ってるのはプレイヤーもなんだよね……

 あ、男主人公のアクトが細かいことも長々と講釈垂れる軍師型で、女主人公のメーアが細かいことは言いっこなし!の突進型。この2人のコンビはドラクエというよりアニメっぽいというか他のJRPGっぽくてとても良かった。そこだけは手放しで褒められる。
 ただ、この2人のやりとりもライターの筆力不足で本当に毎回同じ展開なんだよなあ。ドラクエってFF以上にシナリオ重視の作品だと思ってるから残念です。

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