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過去、現在、そして未来へと歩き続ける

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話し手:安藤 百合子さん
ふまねっとサポーター札幌支部事務局長。現在もふまねっと運動のさらなる発展と普及のために、ふまねっと教室を実施してくださっている。

聞き手:岩野 黎音
北星学園大学文学部心理・応用コミュニケーション学科3年在学中。「プロジェクト実習」という授業の一環でふまねっとを取り上げさせていただいた。
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「ふまねっと」に関わるきっかけ

 ふまねっとに関わるようになったのは13年前です。きっかけは、私もともとナースで、ケアマネージャーもやって訪問看護師をしていました。ケアマネージャーと兼務してですけれども、体調を崩して、55歳の時に早期退職しました。その後に、何か貢献することがないかと思って探していて、「健康生きがい作りアドバイザー」っていうのが、現在も全国的な組織であって、その資格を取りました。
 何年かそこの団体で活動していたところに、10個年上の看護婦仲間であり、組織の運営の仲間でもある方から、「インターネットでね、見てみると、ふまねっとっていう運動があって、これ私達の意識とちょっとぴったりだと思うんだけど、一緒にやらない?」と言われ、やりましょうという意気投合をして、かでる2・7でサポーター養成講習があったときにその方と2人で受講したというのがきっかけです。まだふまねっとの本部が札幌ではなく釧路にあった時代に取りました。その後、札幌に本部が引っ越してきて、13年前に札幌支部を立ち上げようかとサポーターの仲間と意気投合をして、同好会という形で1年ちょっと活動して、その後に支部を結成しました。


今も歩き続けている理由

 例えば患者さんでも入院していても、その個人の身体というか人間性というのを大事にして、その方が生活できるかどうか、それから入院しても外来に来ても、その生活が維持できるようにするのが医療だと思っています。
 例えば退職した後も、高齢者が元気に地域で活躍したり生活したり自立したりできる、そしてお仲間作りができるということが大事だというふうにずっと思っていて、そのために健康生きがい作りアドバイザーの資格を取り、傾聴の学習もしました。そういうことが、ふまねっとの根幹に関わる基本的なスタンスと一致するので、ふまねっとにずっと関わっています。
 ケアマネージャーも5年間やりましたが、例えば高齢者がそこに同居しているけれども、若夫婦の生活がきちんと維持できて、将来的にも生活できるために、ケアマネージャーとして高齢者に何ができるか、そのようなスタンスで5年間、ケアプランを立ててきました。そのあたりが、すごくふまねっとも相通じるものがあるというふうに私は思っています。
 私がもう74になるのですけれども、ふまねっとに関わることで自分も楽しめて、地域にも貢献できてという、二重の喜びがあるので、これはとってもいいなと思っています。


心の健康も保て、めまいの発作もなくなった

 訪問看護とケアマネの兼務の仕事をしていて、頻繁にめまい発作を起こすようになりました。それで入院を何回も繰り返し、勤務してから夜点滴をして、翌日また勤務に行くっていうようなハードな仕事を繰り返していました。しかし、この13年間、ふまねっとをやったおかげだと思っているのですけれども、心の健康が保てて、ストレスが解消されてめまいの発作が起きなくなりました。だから健康にもすごく私は良いと確信しているのです。


普及の難しさ、昔と今

 最初はふまねっとの普及をするためにいろいろな地域、私の地元の地域でもふまねっとをやりましたが、10年ほど前というのは、高齢者の意識も全然違いました。介護保険が始まってあまりたってなくて、そのぐらいのときだと「高齢者が介護をお金で買って受けるのが当たり前」「高齢者は若い人が支えてくれても当たり前」という意識がすごくありました。老人クラブがあるのですけども、そこへふまねっとを持っていって紹介してみせて、やりませんかって言っても、「お茶っこ飲んでお菓子食べて、お喋りをしているのが楽しい老人クラブで、麻雀も自分でして楽しめるから、そんなふまねっとなんていうようなものわ、面倒くさいものは関わりたくない」と、そういう意識だったのです。しかし、今13年経って、老人クラブも「やってくれないか」というところまでたどり着きました。
 やはり10年ほど経つと、高齢者の意識が、「自分で自分の身を守らなければならない」というふうに少し変化をしてきているのではないかと私は思います。身をもって体験していると、自分自身もそう思いますし、高齢者の置かれている立ち位置が、変わってきているな・・と。そういう状態であって自分がどうしなければならないかということを高齢者は考え始めてきているのではないかと思うのです。だから、ふまねっとの周りの社会環境が、10年前とはずいぶん変わってきているな、というのが私の印象です。
 昔はあまりふまねっとに対する知識というか、考え方もあまり取り入れるということのなかったところも、段々と介護予防センターも取り入れてきているということを、身をもって感じます。


高齢者を高揚させることができる

 魅力はやはり、知らないところに行ってふまねっとをやると、そこでふまねっとを通じての仲間意識、高齢者同士の交流をすることによって、同じ立場で共有できる、ちょっと話をすると「そうだよねそうだよね」と、その一対一でも一対多でも同じ境遇のものをすぐに共有できる。それがすごくいいと思います。人の言っていることが理解できて、相手も私の言っていることを理解していただけるという、言葉のピンポンができるのは、ふまねっとのとても良いところだと思います。
 地域で介護施設の入所者にもふまねっとをやっていました。今コロナだから中止していますが、杖をつくとか車椅子でいるとか、それからもう家族が面会に来なくなった人がいて、そこで5、6人多いときは8人ぐらいで、ふまねっとをサポーターと2人でやっているのです。そしたら杖をついている人、耳の不自由な人、歩行器で歩いている人もやりたいって言ってやり始めたが、危険だからと職員からストップがかかったことがありましたが、そういうふうに高齢者を高揚させることができる。そういうものもふまねっとの、魅力だなというふうに再認識しました。
 地域の西区病院というところでは、大きい会議室をただでお借りして、そこに40名近くの人が口コミでみんな集まってきて、ふまねっとを月に3回やっていました。そうすると、そこの人たちも休むことなく、病気になって休んでもまた退院したら来る、それから隣の人に声をかけて手繋いでくる、そういう感じで、ふまねっとの終わった後はみんなおにぎりを持ってきて、「ちえりあのホールでおにぎり食べながらおしゃべりするのはすごい楽しみなのよ」と。ふまねっとをすることも楽しいけど、おしゃべりタイムで友達5、6人のグループをところどころで作って、時には食堂へ行ったり、喫茶店に行ったり、言ってみればお仲間作り、一人暮らしの人がすごく多くなってきているので、1週間全然喋らなかったけどふまねっとに来て初めてお喋りはできる、という人がたくさんいて、それで「あーこういうメリットもあるんだな」というふうにずっと思っているところです。


「ふまねっと」を通じたコミュニケーション

 コミュニケーションというのは、傾聴とすごく合致するところがあります。人の話をよく聞く、人の立場にすぐ立ってお話ができる。上から指導者がいて、指導者がワーワー言って、それを一目散にやる。
 私はフラダンスをしていて、フラダンスでもお師匠さんがいてお師匠さんの言っていることを必死になって覚えて、その次のときには覚えてまた次のワンステップ上に行くというのが当たり前ですけど、ふまねっとは、いつ来ても、初心者でもできるというところに良さがあって、すぐにお仲間の中に新しい人がすっと入っていける「いらっしゃい」と、「よろしくお願いします」で皆さん拍手して、「OKOK」と引き入れてくれる、そういう手軽にコミュニケーション、手軽にお仲間作りができます。
 どこから来ても、それからお金のあるなしにも関わらないですし、それから運動ができてもできなくてもOKですし、例えば身体的にお耳がちょっと不自由でもOKですし、杖ついてもできるということでコミュニケーションがすぐに取れる、高齢者同士、すぐに交流ができるっていうところが、コミュニケーションの気楽さ、容易さというのが、ふまねっとの特徴だと思うのです。


歩き続けた先の願い

 札幌は豊平とか厚別とか、手稲も奥の方でだんだんと高齢化率が高くなってきて、そういうところで、もっともっとこのふまねっとが地域に手軽に根ざしていけるということをすごく願っています。
 十勝とか池田町とかはふまねっとがすごく広まっています。私達は札幌にいる人間なので、札幌というのは高齢者が楽しもうと思ったらジムがあったり、水泳をしようと思えばプールで高齢者のサークルがあったりいろいろしますよね。ただ札幌は高齢者の楽しみが、たくさんあるので、ふまねっとに来ないのです。地域は高齢者が楽しもうと思っても、できることが数少ないですよね。だからふまねっとに対する魅力も多くて、人数も多くなってきていると思うのですが、それを札幌でもそうなればいいなというのは、私の願いです。だから各地域とか町内会で必ずふまねっとやっているよ、というところまでたどり着ければいいなというふうに思っています。そうすると、高齢者の健康寿命も延びて、健康な人も多くなって、自立した高齢者ができていくのではないかなというふうに、ほのかに期待をしています。


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