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箱根駅伝 〜日本体育大学への思い・振り返り〜

 あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。今年1本目の投稿は、いつもの野球関連のnoteとは違って、駅伝がお好きな方向けの内容となっています。

 1年の始まりと終わりを同時に告げる箱根駅伝。それは自分にとって、もう1つの趣味。昨日をもって、1年間が終わったような気がして、無気力になりつつあるのは毎年の恒例行事。

 その駅伝好きな方々でも絶滅危惧種に値する、自分が好きな日本体育大学についての思いを述べようと思います。ときおり厳しい言葉を投げかける場面がありますが、言葉遣いには注意いたします。この言葉で選手たちが萎縮したり、走ることへの恐怖心などが芽生えて欲しくはないので。

☆今回の戦略 

 往路は絶対エース・藤本珠輝くん(3年)を2区、近年の日体大の弱点だった3区にセカンドエースの大畑怜士くん(4年)を配置。1区は秋口に28分台を複数回マークした高津浩揮くん(3年)。

 これには驚いた。3大駅伝はおろか、過去20キロレース未経験の選手を1区に配置するのは、日体大では初めてに等しく博打であった。4区にアップダウン、単独の展開が強い1年生・分須尊紀くん。5区山登りに11月の激坂王で適性を見せた吉冨純也くん(2年)。1区の出遅れを藤本が挽回し、その流れを大畑が引き継いで加速。シード範囲内で堪えるプランだった。作戦は合っていたと思っている。弱いチームなりに工夫はしていた。

 実際、緩やかに流れは作れていた。ハイペースとなった1区高津は9キロ過ぎから遅れるも、一時20秒弱離れていた順天堂・平駿介(3年)との差を6秒に縮めて藤本に繋いだ。よく順天堂の2区・三浦龍司(2年)と並走できる位置で渡したね。

 その藤本は500m地点で三浦に追いついてから並走。ハイペースで前を追い、横浜駅、権太坂のポイントをいずれも区間6位で走破。誰よりも力強い腕の振り、表情が映えていた。体質改善にも注力しており、体も引き締まっているのが伝わった。最後の7.9キロは序盤突っ込んだ分、伸びきらなかったが、キツい登りで東海、明治を置いて合計5人抜き。1時間7分21秒の区間10位と好走した。

 3区は大畑。3大駅伝初出場だが、怪我から立ち直り4年目はトラックシーズンから本領発揮。関東インカレでは強者揃いの中、10000mで9位と入賞手前まできた選手だ。最初の7.6キロは区間16位。後ろから順天堂・伊豫田(3年)ら実力者が突っ込む中、ヒヤッとした入り。しかし、次の茅ヶ崎までの6.7キロは全体4番目のタイムでカバー。これは帝京大学・遠藤大地(4年)より速いタイム。前述の突っ込む走者に惑わされることなく冷静にビルドアップ。最終的にこの区間9位で走り切った。日体大の3区区間一桁順位は5年ぶり。流れは作れている。

 惜しかったのは4区5区。4区分須は序盤はキロ3分とやや抑えすぎた入りも、後ろから追いついてきた東農大二高の先輩にあたる神奈川・小林政(2年)の後ろにつきペースを整える。酒匂橋で明治・小澤(3年)も追いつき3人の集団になるも、中継所では1番最後に到着。
 しかし、旧小田原中継所手前では、この3人の集団の前に出て引っ張る場面もあったようだ。1年生でこうした積極的なレースは光るものがある。先輩方でも実践出来ているとは言い難いのだから…。将来、日体大を引っ張る存在になって欲しい。ラストでちぎられて、神奈川・明治とはやや遅れてのリレーとなったが、それでも63分31秒。1年生としては及第点の走り。来年はあのような場面で、差を広げて1番に帰ってくることが分須の仕事だと思うから頑張れ。

 5区の吉冨も芦ノ湯までは狙い通りの区間12位前後を推移するも、芦ノ湯以降は大失速。これは昨季の山登りと全く同じやられ方。少し前で並走出来そうな神奈川・山﨑、失速気味の山梨学院・成毛を交わしかけるも振り切られた。4区も5区もここを詰めれば、付いていけば流れが来るという展開で掴みきれないのが多い。
 単独走の苦手な日体大にとって今回は2区以降、誰かと走れる、少し前にターゲットが見える恵まれた往路だっただけに、もったいなかった。

 復路のスタートは監督から藤本・大畑と並んで3本柱と称され、山下りに意欲を見せていた盛本聖也くん(3年)。しかし、明らかに走りが崩れていた。ここで流れが完全に切れ、繰り上げを覚悟せざるを得なかった。7区期待の2年生・漆畑徳輝くん、8区の3年生・九嶋大雅くんはそれぞれ区間19位。戸塚で繰り上げスタートを喫してしまった。

 往路16位、復路19位、総合17位。戸塚中継所で通算3度目の繰り上げ。第98回大会は終わった。

☆低迷の要因

 ここからは近年の日体大における低迷の要因を述べたいと思います。しかし憶測が多いです。私は関係者ではなく、ただの1ファンでございます。それを踏まえた意見であることをご了承いただきたいです。
 ここ近年の低迷は指導者の交代、不在も響いてスカウトが悪くなったことが最大の要因ではある(この理由は今回省略させていただきます)。やはり上層部が安定しなければ、進路を選ぶ選手、学生たちはもちろん敬遠しがちになり、親御さんも安心して日体大を勧められない。きちんとした指導体制の構築は大前提である。2020年7月に玉城監督が就任して、この問題はひとまず解決出来たと思う。このような条件、環境下の中で、日体大に進学してくれた選手たちには、自分で言うのもおかしいが本当に感謝している。

 それと同時に新興校が台頭し、高速化の流れに拍車がかかってしまい完全に取り残されてしまったという印象。とくに出雲駅伝でそれぞれ優勝した國學院大学、東京国際大学。昨年の箱根駅伝で往路優勝を果たした創価大学。

 この3校は近年の躍進が目覚ましく、今後も駅伝界を引っ張ることだろう。特に第96回大会で初めて箱根シードを獲得した東京国際・創価は中央大学時代に選手・指導者として活躍した創価・榎木監督、東京国際・大志田監督が当時の中央大に浸透していた勝者のメンタリティたるものを注入している指導的部分も大きい。それに加えて国際化を打ち出している、近年の日本の大学の傾向も受けて、人気も出ているのかもしれない。駅伝での留学生登用もその一環だと思う。

 大学のブランド力=スカウティングという構図は比較的根強く、日体大のように専門的な大学は将来、生きていく選択肢の可能性を広げるという観点からも悩ましい一面があるかもしれない。そこに体育大学特有の古き体質が現代性にも富んでいない。日体大を選ぶ理由の1つに上がりやすい体育教員志望だが、教員の採用率も低下しているのが現状だ。

 そして近年は学生の身体能力、シューズの機能性向上によりレースの高速化が著しくなっている。大型でストライドの大きい選手も以前と比べて増えてきた。低重心でピッチを刻む選手が多い日体大にとって、これが足枷になっている。
 ちなみに日体大が箱根駅伝で好成績、シードを残す年は向かい風、暑さなどタフな気候下でのレースが多く、ここ近年のような好コンディション下になると、戦力的にごめんなさいというのが本音である。今回も半ばそうだった。
 要するに上層部の不安定さからスカウティングが悪化したタイミングが悪く、現代の駅伝界の流れに伝統性が淘汰されかけているのである。本当に復活への道のりが険しくなっており、このままでは伝統が途切れかねないと不安を抱いている。

☆走力的課題

 でも今回の走り(特に復路)はそれ以前の問題。こんなこと言いたくないけど本当に残念だった。心底がっかりしてしまった。
 毎年同じ課題だよね。駅伝になると1人で走れない。 1度抜かれたら、そのまま。そして次の走者も引きづられる、突っ込んで耐えられない。
勝ち切る走りが出来ないし、その走りを高校時代に知った選手も不在なのがね。
 持ちタイムは伸びても大舞台でのメンタル面が欠けてるからタイム相応の走りにならない。

 スカウトでは単に持ちタイム、伸びしろの目利きだけではなくて、高校時代の大舞台経験値、当該高校の主力として君臨したかというのも重要だと感じる。特に強豪校で培ったメンタル、走りというのは、叩き上げで伸ばしてきた持ちタイムには現れない力があるのではないかと、ここ数年の日体大の選手の走りや持ちタイムから仮説を立てている。とはいえ、大学で飛躍的に伸びた選手が立派であることは忘れてはいけない。心で走るとでも言えるだろうか? そこが欠けているとは思うかなぁ。成功体験を得た選手も少なくなっており、その個々の積み重ねによってチーム全体で勝てる走り方?が浸透していかないというか…。

☆古豪復活へ

 自分が初めて、このチームを見たのは順天堂大学にいた山の神、今井正人さんと並走していた北村聡さん(当時3年)の山登りだった。これが第83回大会だったようだ。あれから15年。

 ここ数年は憂鬱な年明けばかりが続いていて、もどかしい。当時の監督交代から、こうなる未来が見えていたと分かっていても。

 今回の箱根もシード権は厳しい、無理かもと分かっていても、少しでも可能性を広げられるように… って色々オーダーとかは考えてはいたものの、この惨状を見せつけられては、自分は今まで一体何をしてきたのか、という気持ちが強い。

 いつから襷が繋がれと願うチームになったのか。このまま終われないよな? 悔しいよな?

 指導体制が整い、下級生のスカウティングが地道に改善されているのも分かるので、もうしばらくは温かく見守っていきたい。まだ辛抱の時期が続くことも知っているから。

 来年度は学生長距離界を代表する藤本くん世代の最終年。幸いにも、この世代は日体大が最後に箱根シード権を獲得したとき(総合4位)にスカウトした学生たち。小粒ながら戦力は揃っている。特に誰よりも勝ちにこだわる藤本くんに悔しさばかりを味わって卒業して欲しくない。

 今回、初めて他の注目チームに贔屓を変えようか一瞬、頭をよぎったこともあった。
 それでも、1度好きになったこのチームを諦めるわけにはいかないんだ。好きになったチームがいいチームだった。今更、後にも引けない。
 挫折も栄光も詰まった74年連続で繋ぎ続けてきた伝統の白襷。1月2日・3日に輝きを取り戻すそのときまで。私は待っている。



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