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ブルペン整理 〜吉井新監督の掲げる継投レバレッジをもとに〜

 まさか千葉に帰ってくるとは思わなかった。
 1月28日澤村拓一の獲得が発表された。彼1人だけでオフの補強はワンランク上がったも同然。
 その数日前、吉井理人新監督は今季の7回8回9回を固定しない方針を取ることを示唆した、
 果たしてどういう起用になるのか。澤村拓一が復帰した今、自分の振り返りという意味合いも込めて、もう1度整理してみようと思います。

☆継投レバレッジとは


 端的にいうと勝利の方程式(7回8回9回)のような固定起用ではなくて、その時々のシチュエーションに合わせて最適な投手を選択して勝利の確率を上げる継投策のこと。
 例えば9回。セーブの付く3点差以内は守護神が投げるが、4点差以上開いたら無理に守護神を投入する必要はないから、他の投手に任せよう。3点差以内でも3連投になってしまうから、今日は別の投手にセーブ締めてもらおう。これもその1つだ。
 吉井投手コーチ時代の千葉ロッテや21.22年とリーグ連覇した高津ヤクルト・中嶋オリックスを皮切りに球界でも徐々にこうした選択は増えてきた。
 しかし今の日本ブルペンは3という数字に敏感であると考えている。3点差・3連投。これがセーブ条件が2点差なら3点差では違う投手になるのか。3連投させないことが目的になっていて勝負どころでカード切るタイミングを逃しているとか。1イニングという固定観念が強くストッパーのような投手も少なくなっている。
 そこをさらに踏み込んで改革していこうというのが今回の狙いだと考えている。

 例えば下位打線から始まるのであれば無理に序列の高い投手に任せなくても良い、本来7.8回に投げる投手だが相手打者との相性が悪いので、この場面は避けよう、突然としたピンチで前倒ししてセットアッパー・クローザーを投入する。
 もっと踏み込むと3点差でもクローザー温存して代役を立てる、無理に球威にこだわらず、確実に3つアウト取る引き出しの多い投手に任せるなど。
 
 固定化している時に比べて相手がどの投手が来るのか頭を悩ませる一面もあるが、早い展開でいい投手を注ぎ込むも、いざ回が詰まって追いつかれた場合、延長戦で本来は使いたい駒が駒切れしてしまった、上手く管理出来ないと行き当たりばったりなどデメリットも生じる。
 そして、これをやる上ではAチーム(主に勝利の方程式)とBチーム(中盤要員や大差、敗戦処理)の実力差を縮めて全員が勝ち試合を任せられるようになる必要がある。

☆昨季の試合から振り返る

 ここでは具体的に昨季の試合を取り上げて、この場面ならこの投手を選択をしていたという自分の見解を混ぜながら実践的なレバレッジを見ていく。この選択はあくまで正しい判断ではなく結果論でもあることをご了承ください。
 
 ◇9.17 対日本ハム(札幌) 
 2-0の8回表に一挙4点で逆転した場面から考えたい。その裏。ロッテは唐川侑己をマウンドに送った。しかし二死後、清宮幸太郎に右安打を許してからアルカンタラによもやの同点2ランを浴びてしまう。その後、同点の9回裏に東條大樹を投入するも死球など乱調でサヨナラ負け。
 
 この時期の中継ぎは崩壊していて誰が投げても抑えられない状態だったのはたしか。益田直也が不調で後ろを外れたのが最もだった。そのため前の試合失点するまで防御率0.00の唐川、今季1年間投げて信頼ある東條に任せるのはセオリーであるが、レバレッジという観点で考えてみる。
 
 前の試合、唐川はインコース甘めのカットボールを上手く回られて楽天・小深田に運ばれた。今回も清宮ーアルカンタラのラインは中途半端なカッターで打たれやすい唐川にとってこのリスクが生じた。東條も9回に投げる経験は乏しい。ましてや同点のため1点も許されないとなると簡単に任せにくい。

 この日勝てば勝率5割復帰、CS争いもまだ望みを繋げるし流れを変えたい。そのためには確実に相手に絶望を与えられる投手。
 上記2人が1イニングにかかった球数(21珠、24球)を2イニングで纏められる力がある。逆転直後で肩の調整は難しいが、いつも少ない球数でアップ完了出来る。

 以上のことからロベルト・オスナに回跨ぎさせてよかったと考えていた。唐川が二死から出塁許したところで嫌な雰囲気を察してオスナを出せるのか、こういう辺りで勝負勘というものが出てくるのだろう。残り10試合切っている状況だからこその勝負手、このために今まで投手管理に気を遣ってきた最後の切り札だったのではないか。

 下位打線から回るため使うのに渋った可能性もあるが、仮に唐川が無失点なら9回オスナだったと思うし、そうであれば勝ち確定演出としてしか彼を使いきれず、本当に欲しい勝ちを手繰り寄せるためのオスナを活かしきれなかったことになる。
 ちなみに、この約1週間後の9月23日の試合でオスナが2イニング投げることになった。

 ◇7.20 西武(ZOZOマリン)
 8-4の9回表。4点差あるので代役を立てて抑えるのだろう。西野勇士あたりか。
 しかし、この日は益田直也がコールされた。一瞬、疑問だったが、この回は山川穂高・外崎修太・中村剛也から始まるため一本ソロが出る可能性もある。打順の並びとペナントを見ると首位・西武と勝てば2.5差に詰まるので優勝争いにピタリと背走する状況をキープしていきたい。
 セーブ条件外のため益田を温存させるのは当然な一方、彼を投入する意図も理解出来た。その狭間の場面を9球で片付けた益田はプロである。ここで求められるのはローコストで料理すること。本人は余計な疲労を溜めず、チームの勝利も手に出来る。まさに最高の形となった。 
 これがランナー溜めて20球以上費やしたら、頭を悩ませるところだったが。

☆今季のブルペン整理


 ここからは実際に今季のメンバーに当てはめて考えていきたい。キャンプ以降、序列は大きく変わると思う。
 現在のリリーフ陣をおさらいする。個人的に対象となる7.8.9回を現段階で投げられそう(投げてもらわないと困る)投手たちをここでは取り上げ、どんなときに使いたいか考えてみる。

(西野勇士)
国吉佑樹・東條大樹・小野郁・唐川侑己
ペルドモ・澤村拓一・益田直也

 本当はもっといるが、あくまでも参考のため抜粋させていただきたい。
 固定するしないに関わらず軸になるリリーフはまず決めないといけない。
 まず澤村・益田のベテラン勢だろう。彼らが8回9回、そこに新外国人のペルドモや連続無失点続くときは唐川侑己・一昨年クラスの国吉佑樹あたりが7回になるか。

◇澤村 拓一 
 とにかく澤村拓一の獲得でブルペンの格はワンランク上がった。
 ピンチで空気を変えられる澤村には8回を軸にしつつ中軸相手、途中だろうが最もキツイ場面で投入して、そのまま跨がせる役割も期待したい。
 
◇益田 直也
 益田は基本上手くシンカーで整えて真っ直ぐをさしていくタイプなので9回を軸にしつつ、シンカーの状態が悪く拾われそうな左打者が回ってくるとき(オリックスの福田・西野・T-岡田やソフトバンク牧原・中村晃)は澤村or膝元にスラッター投げ込める国吉佑樹と使い分けたいか。

◇国吉 佑樹
 その国吉は7.8.9回を状況に応じて任せられる力を持っている。先に澤村拓一を投入して、剛腕がいなくなった… というときに備えてストックしておける役割もある。とにかく澤村とのコンテンダー組勝ちパターンで当球団のトレード価値の高さを証明して欲しい。

◇小野 郁
 
また3点リードがある場合は小野郁にセーブ状況を体験させていくというのもアリだ。上記のメンバーは来季34.35歳。若返りではないがこの3年間多くの投資をしてきたであろう小野にはそろそろ重要な局面を行けるくらいにはならないと。7.8.9回のローテ要員には入りたい。

◇東條 大樹 
 東條大樹は佐々木千隼のように昨季の反動が発生する可能性があるので慎重に扱いたいか。
 変則でブレーキの効いたスライダーはこのブルペン陣でアクセントになるため、先発・小島和哉がチェンジアップで浅村栄斗あたりを手玉に取ってから真反対の逃げるスライダーで誘わせるような打者や先発タイプを鑑みての起用にしてみるといいのかな。

◇唐川 侑己
 
唐川侑己。彼は年間どこかで故障するから1年計算は出来ないが、調子いいときは序列上げて8回などもオッケー。基本は「ここ三振いらないけど8球程度で片付けて攻撃の流れが欲しい」といった場面で持ち味が活きるので、その回に投入するのが良さそう。
 カッター主体だが対左の伏兵に上手く回られることが多いので、その際はペルドモのチェンジアップに頼るもいいのか。

◇ペルドモ・西野勇士
 
そのペルドモはゴロ主体の投球なので3つアウトが欲しい9回の2.3点差。一、三塁のピンチで併殺、弱いフライが欲しいときにツーシームを使っていけるのが理想かな。西野勇士は先発との両睨みということで考えているためカッコにした。シーズンに応じて足らない部分を埋めて欲しい。

☆まとめ・最後に

 1点リードの8回表一死ランナー二、三塁ならば澤村に任せる、二死ならペルドモでゴロ奪取。3点リードなら益田ではなくて小野郁。ここはサクッと味方にリズムをという場面では唐川。
 このように場面と特徴を整理して投手を選択していこうということだ。
 繰り返しだが他にも投手はいるし、開幕までの序列も変わる可能性は大いに高い。

 これをするにはヤクルト・オリックス・ソフトバンクのように全員が勝ちパターンで投げられる、球の水準が見劣りしないようにしていかないとならない。
 そのうえで今まで以上に管理に気配りしていかないとならない。登板数もそうだが球数、ブルペン内での肩作り経緯はしっかり見ていかないと。
 
 再び吉井が現場に戻り、熱血漢の黒木が入閣と07年に揃って引退した2人が16年の時を経て千葉でタッグを組む熱い展開。次は果たしてどんなブルペン起用で球界の先端を進むのか注目だ。

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