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ストレートへの対応力、得点力アップとロッテ打線の底上げ。

こんにちは。
毎回、noteを近々書きますと言いつつも、一月に一回ペースで書き始めは「お久しぶりです」が定式化しております、Syu.です。

実は先日、野手についてのnoteを楽しみにしていますという、ありがたいお言葉をいただいたので、今回、久しぶりに書こうと決めました。

さて、話題を決めなければならないのですが、「ロッテの野手」だけだとテーマとして漠然としすぎています。
実は以前、ロッテ投手陣についてnoteを書いた際、投球の基本はストレートだと述べた事がありました。一番速い球で、力強く思い切り投げられる球だと述べた事があります。それと同様に、バッティングの基本もストレートだと感じます。無理矢理すぎますが、ストレートは必ずと言っていいほど試合中、投じられる球なので、打たない(狙わない)わけにはいかないと思います。

様々な方々のnoteやTwitterを見てると、ストレートへの対応力が得点数に関わってくるのではとの考察を目にします。昨年チーム本塁打が千葉移転後最多の158本、総得点は前年比+100以上となったロッテも、それが関わっているのではないかと感じます。

そこで、ストレートへの対応力と得点数を軸に、井口政権下でどのように野手の層を再形成しているのかを考えようかなと思います。

① ストレート対応力の重要性

前述しましたが、投球の基本がストレートなら、打撃の基本もストレートではないでしょうか。例外はありますが、これを試合中に投げてこない投手は、ほぼいないと思います。

◯プロ野球 平均球速推移
2014年 141.5キロ
2015年 141.9キロ
2016年 142.0キロ
2017年 143.2キロ
2018年 143.6キロ
2019年 144.1キロ

上記からも分かるように、昨今では平均球速の向上が著しく、150キロ台は勿論、160キロ台の球を目にしても不思議ではない時代となりました。また初回からガンガン飛ばす傾向も多く見られますし、終盤になれば、ブルペン陣が力強い速いストレートでどんどん押してくるケースが増えます。このような投手のパワーアップ化に負けぬよう、野手は強いスイングがより必要になってきます。

140キロ台前半〜半ばの平均球速帯は打てるが、一定速度を超えると前に飛ばない… という選手も多く、このストレートへの対応力が1軍選手と2軍選手の差を分けたりもします。

では、ロッテのストレート対応力はいかほどのものなのでしょうか。今回、指標の1つであるwFA という観点から見てみたいと思います。これはストレートに対する得点数の増減を表すものです。

② ロッテにおけるwFAと得点数の推移

2017年: wFA −46.7%     得点数 479 ⑥
2018年: wFA −21.8%     得点数 534 ⑤
2019年: wFA +30.0%    得点数 642 ②

こちらが過去3年間のストレートに対する得点増減と得点数です。失意のどん底を味わった17年と井口監督下での2年間を振り返るという意味合いで、この3年間を取り上げました。

これを見ると、17,18年と大きなマイナス数値を記録していたwFAですが、19年には逆に大きくプラスへと転換しています。それに比例するかのように得点数も毎年増え、昨年は前年から100点以上も上積みしてパ・リーグ2位を記録しています。チームの順位が6→5→4と上がりました。

この事から、ストレートへの対応力と得点数の間にはある程度の関連性があると思います。

では、この3年間でどのようにしてストレートへの対応力に磨きをかけてきたのでしょうか。ここからはストレート対応力というよりかは、チーム打撃全体の改革という視点で取り上げることになるかもしれませんが、いくつか事例を挙げます。

・打撃コーチ

まずは17年を振り返ります。アルフレド・デスパイネの退団により、野手の絶対的コアを失い、開幕から約2ヶ月近くチーム打率が1割台と超低迷、監督からは「ストレートが打てるように…」や「強く振らないと…」といった台詞が発せられたりしました。後半、ペーニャの加入、中村奨吾、加藤翔平の活躍はありましたが、野手をもう一度鍛え直さないといけませんでした。

オフに井口監督が就任すると、まず打撃コーチに金森栄治氏の招聘に成功しました。

金森氏と言えば、球をよく見て引きつける、ポイントを後ろに置く指導を施すことで有名です。障子の襖を開ける感覚(をイメージして)といったように、日常生活における例え方も上手く、井口監督も現役時代、この金森氏の教えで野球人生が変わったと仰っておりました。

実は金森氏は10年にロッテが日本一を達成したときも打撃コーチでありました。前年リーグ最下位だったチーム打率は.275に大幅アップし、708得点と共にリーグ1位を記録しました。しかし、当時は翌年から低反発球が導入されたとこにより、この理論が仇となってしまうのですが…。

6年ぶりに復帰した金森式でまずは、打撃アプローチの改善に取り組みます。

表① 2017年, 2018年とのアプローチ比較

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上の表は見づらくて申し訳ないのですが、2017年と2018年の打撃アプローチ(Plate Discipline)の比較です。上段が17年、下段が18年です。青数値から赤数値に変化した部分に着目すると、O−Swing%(ボール球スゥイング率)が31.2%から24.2%に、三振率が10.2%から7.5%へと減少し、Contact%を78.3%から82.5%へと上昇させました。

この結果、三振が1099から888とリーグ最少にまで減少し、四球数は387から474と前年から約100弱も増やして、また、(Z)Contact%(コンタクト率)も上昇し、アプローチを改善させました。

それでもチーム打率.247(4位), 本塁打78(6位), 534得点(5位) と主要項目は数値を伸ばすのに苦しみました。オフに金森氏は退団となりますが、中田翔、筒香嘉智を育てた大村巌氏が一軍コーチに昇格、また、河野亮氏も就任しました。河野氏は「強く振るイメージを」と入閣当初仰っていて、その手腕に期待がかかりました。

そして、ロッテ野手の打撃を大きく後押しするものが誕生します。

・球場の新設、改修

ロッテは19年シーズンからホームランラグーンを設置して、収益を上げると同時に、8年連続で二桁に留まっていたチーム本塁打数の増加を図りました。結果的に、チーム本塁打は158本と大幅に増加、それに伴い前述の通り得点数も伸びました。

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(画像 千葉ロッテマリーンズ 公式サイトより)

このラグーンでフェンスが最大4mも手前となって外野が狭くなり、フェンス自体も低くなりました。その為、弾道が高くないライナー性の打球でもスタンドインが可能になりました。
これによって、自分でもスタンドインが行けるのでは…と思うようになったり、強く振れば入るという意識付けが行われたかもしれません。

昨今ではフライボール革命の余波が流れ、バレルゾーン角度30度前後、速度158キロ以上のライナーは8割以上がヒットとなり、その打球がフェンスオーバーする可能性も高くなる)に入ると好結果が導かれる科学的な証明も行われてます。

また、以前異様に広かったファウルゾーンがベンチ隣に新席を作ったことによって狭くなったことも、打者にとっては好転したかもしれません。

球場が狭くなったので、相手投手は例年よりも「慎重に攻めないと…」という感情を抱いたり、窮屈な配球になったりしたと思います。しっかり腕を振って投げないと…という心理を読みとってストレートを打った打者が多かったかもしれません。

これだけだと本塁打を増やした理由でストレートへの対応が上がった証拠がないと思われますが、肝心なのは、強く振ろうという意識やバレルゾーンを意識した打撃を身に付けてファストボールに対応したと言うことです。

・データ班との連携

強く振ろうという意識付けが浸透したら、次は“どの球を狙うのか”ではないしょうか。バッテリーは投手の持ち球、相手の特徴、試合状況などを総合的に判断して配球を組み立てます。球を操れる側が頭を使うなら、打者も何が来るか、どの球を狙うのかと頭を使うのが必要です。

ロッテでは、18年オフに総額2億円規模を投資して「チーム戦略部」を設立し、選手育成、獲得、戦略などあらゆる分野でデータ活用を進めていくことになりました。

☆(https://www.google.co.jp/amp/s/www.sanspo.com/baseball/amp/20181227/mar18122705020002-a.html) ロッテ、2億円投入「チーム戦略部」新設!データ野球で目指せアストロズ(サンケイスポーツ、2018. 12.27)

ここでデータを収集し、相手チームの分析も行わていると思います。
この成果が如実に現れたのが、昨年6月19日の広島戦(マツダ)だと思います。実はこの試合、私も現地に赴いておりました。

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この日の先発、大瀬良大地は18年セ・最多勝とリーグを代表するエースであり、そうチャンスは多くないので、直球と高めに抜けたカットボールに絞って1発を打つパターンが勝てる策か…と勝手に目論んでいましたが、なんと、その大瀬良から、ソロ4本を放ち、6対3で勝利を収めました。

翌日の新聞(日刊スポーツ)には行木チーフスコアラーが「真っすぐかカット、どっちか絞らないと難しい。予定通りだった」とコメントしておりました。

☆(https://www.google.co.jp/amp/s/www.nikkansports.com/m/baseball/news/amp/201906190001285.html )ロッテが大瀬良4発KO!新設戦略部がデータで丸裸(日刊スポーツ、2019.6.20より)

前日、試合前に思い描いてた形がまさにそのまま現れたとは驚きました(証拠がないため、後出しジャンケンと言われたらそれまでだが)。しっかりとデータ班が狙い球等の分析を行って、機能した証拠だと思います。

本拠地のみならず、ビジターゲーム、また、対戦機会の少ないセ・リーグのエース格相手にも、効果を発揮したのではないでしょうか。

ここまでを少し纏めると、

アプローチを改善→球場が狭くなり、フェンスが下がる→強く振れば入るのでは…自分にも飛ばせる可能性があるのでは… →強く振る意識を持つ、バレルゾーンを意識→狙い球をより明確化する

といった一連の流れがあったのかもしれません。一目見て分かる要素ではないですが、少しずつ段階的に改善して野手の土台を築いているのかとも思います。また、レアード 、マーティンといった外国人野手の存在も相乗効果を生んでいたことに思います。

③ 個人に見るストレート対応力

ここからは、規定打席に到達した選手を焦点に当てて見ていきたいと思います(中の人、デルタには課金してないので、把握出来るものが、これしかありません、ご了承ください)

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この表を見ると、昨年wFAが10%以上を日本人だけで3人が記録しています。17年は0人、18年は井上晴哉1人だったことを考えると、対応力が上がってるのではないでしょうか。

トップの数値を出したのが、鈴木大地で+13.1%、18年は0.6%という数値だったので、大幅に上がっています。昨年、彼がキャリアハイの成績を残した1つの要因だったかもしれません。主に強い直球を武器とするセットアッパーが出てくる、試合終盤の8回以降の打率は.321(延長含む)を記録しており、3度のサヨナラ打を放つなど、その貢献度は言うまでもないでしょう。

ストレートに強い、なおかつ終盤に存在感を発揮できるという観点からも、彼の退団が痛いという事が分かるかと思われます。

次点に名を連ねたのが、中村奨吾です。
打率は.285から.232と大きく下降してしまいましたが、wFAの項目に関しては前年の2.8%→12.8%と、こちらも10.0%向上し、ストレートに強さを見せることでチームに貢献してくれました。

18年の中村は打率に拘って、思い切り振れないときはあったと自己分析しており、それがwFA の数値も低めに出てしまったのだと思います。

昨年は、試合前練習のアクシデントや下半身のコンディション不良に悩まされたが、上記の動画にある開幕直後の4月のソフトバンク戦では、日本のエース、千賀滉大から150km/h超えの直球を2打席連発するなど、そのポテンシャルは折り紙付き。万全に整え、チームの先頭に立って欲しいです。

そして、昨年キャリアハイの1年を送ったのが荻野貴司です。本人もストレートに強さを見せましたが、実はチーム全体のストレート対応力向上に努めた選手でもあるのではないかと考えています。

荻野が出塁すると、相手バッテリーは“足”を警戒します。遅めや外角低めの変化球を使うとその分、時間のロスが生じて走られるリスクが伴います。また、走らなくても、様子見で外したりすればカウントも悪くなります。その為、ゾーン内に速い球が投げ込まれる可能性が高まります。

そうして狙い球が絞りやすくなった場面で昨季、荻野の後ろである2番での出場機会が多かった鈴木大地や、途中加入だったレオネス・マーティンが仕留めるといった形を作った(作れた)ことで得点が増えたと思います。勿論、本人の力もありますが、前述の鈴木大地のwFA が高い数値を記録したのは、荻野の影響もあったのかなと思います。

話が逸れますが、足という観点を見ると昨季二桁盗塁を記録したのは岡、中村奨吾もおり、中でも岡は、盗塁成功率.929(14ー13)と驚異的な成績を残し、主に試合終盤の代走で相手にプレッシャーを与えてくれました。岡の出塁、足が終盤力を高める場面は多かったと思います。

一方、前年22.4%を記録した井上晴哉は7.4%と下がってしまいました。ただ前年は、井上の前を打ってた、3番中村奨吾がこの年、塁に出たらほぼグリーンライト(自分の判断で盗塁を行うこと)状態でした。結果的に39盗塁を決めました。繰り返しになりますが、そこで配球が速球主体となるケースが多かったことも反映されたと思います。

また昨年の井上は、春先から絶不調に陥っていた為、本人の打撃的な問題で数値を落とした可能性はありますが、本来はストレートに対して強い打者だと感じます。昨年、8月の仙台での楽天戦で延長10回、相手ストッパーの松井裕樹から一振りで決勝点を叩き出したように、このチームには彼の打棒が欠かせません。この一発はこれぞ4番に相応しいかったです。

鈴木大地が抜けた今後は、中堅から右方向へも鋭く打球が伸びる貴重なファストボールヒッターとして打点を稼いで欲しいです。

全体的にチームの中心選手たちは、しっかりと対応力を見せたという事になるでしょうか。

上記以外の選手では清田育宏が夏場はバテましたが、5月の好調時や終盤の展開でストレートに強さを見せていた気がします。こうしたストレートへの強さを見せたこともあってか、昨年は彼らを軸に試合終盤に粘りを見せる展開が多かったように思えます。今季も粘りのロッテを披露してくれると他球団のブルペン陣は怯えるかもしれません。

④まとめ、今後の展望

 ここまでを纏めます。

・ストレートへの対応力が得点数アップに繋がる。千葉ロッテもその傾向がある。
・18年に打撃アプローチを改善
・19年の球場狭化、データ班設置→意識付け、狙いを絞る、外国人野手の存在
・コアがしっかりとストレートに強さを見せた一方で、鈴木大地の退団がどう響くか
・これらの影響もあり、昨季は速球派の増える試合終盤の粘りが増えた

という形にでもなるかと思います。

今年はエース格の投手に強く、足もある福田秀平の加入で、また新しい打線のスタイルを構築することになるかと思います。

若手には平沢、安田、藤原、山口と数年後の中心選手となるべく存在が集ってます。彼らがしっかりと振る意識、対応力を身につけ、一振りで流れを呼び込む選手となってもらいたいですね。

一方で、球場狭化2年目ということで、相手投手の攻め方も力強くなってきたりします。そのため、余計にファストボールへの対応力が求められるのではないでしょうか。今は中々練習も出来ない状況ですが、自分の中でイメージをし、再開後はそれに負けじと振れる力を蓄えられるようにして欲しいのかなと思います。

まとまりのない文章でしたが、最後まで読んでくださった方々、ありがとうございました。開幕の日まで、中の人はドラマ三昧になるので、何かオススメのドラマがあったら教えていただけると幸いです。(笑)





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