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「午後LIVE ニュースーン」の考察と課題について

はじめに


今年、4月から始まったNHK総合テレビの番組「午後LIVE ニュースーン」(以下、「ニュースーン」と表記)をご存じだろうか。
一部では視聴率や内容の面であまり評判が良くないが、私はこの番組はそこまで悪くないと思っている。寧ろ、NHK側の狙いは達成出来ていると考える。

(あくまで、私個人の意見や考察であることに留意。)

そもそも「ニュースーン」とは?

「ニュースーン」は、NHK総合テレビで午後3時10分から5時57分まで放送される、NHKの番組の中でも長尺な番組となっている。
途中、ニュースやみんなのうたで中断する時間もある。

今までの5時台に放送されてきた「ゆう5時」(月~木・東京発)「きん5時」(金・大阪発)の後番組として放送時間枠を拡大してスタートした。

ただし、これまでの5時台の番組と同じく国会中継や大相撲などスポーツ中継がある際は短縮ないしは休止となる。

「ニュースーン」のねらいは?

2024年2月14日のNHKメディア総局長会見のプレスリリース資料によると、

NHKの取材力とネットワークを活かして、最新のニュースや暮らしに役立つ情報を中継なども交えながらわかりやすくお伝えする番組です。記者やディレクターが取材・制作の裏側を語る、“顔の見えるジャーナリズム”を目指します。


引用資料 山名 啓雄 メディア総局長 2月定例記者会見 要旨 1P

https://www.nhk.or.jp/info/pr/toptalk/assets/pdf/soukyoku/s2402.pdf

とある。

ではなぜ、放送時間を拡大する必要があるのか?これならば5時台だけでもいいのでは?と思う方もいるだろう。

各種記事では、このように報じられている

緊急報道に対応することはもちろん、報道番組やさまざまな人気番組のエッセンスを見やすく紹介していく。

 オリコンニュース NHK、平日午後1時~6時“生放送”に 『午後LIVE ニュースーン』新設
https://www.oricon.co.jp/news/2314448/full/

総合チャンネルは、午後1時の定時ニュースから同7時の「ニュース7」まで、基本的にニュースを中心とした生放送の番組編成とし、災害などの緊急報道に柔軟に対応できるようにするという。

朝日新聞 NHK総合、平日午後はニュース中心の生放送編成に 情報番組も新設
https://www.asahi.com/articles/ASS2G6SV4S2GUCVL00X.html

そう、「緊急報道対応」なのだ。

2023年度のNHK総合平日午後(通常時)では、1時台に大阪発の生放送「列島ニュース」、2時台から4時台まではニュース除き再放送。5時台に生放送番組が組まれる形だった。金曜日は「列島ニュース」のほかに、大阪発の「京コトはじめ」が基本生放送だった。これでは、2時から5時の間に緊急のニュースがあっても対応が遅くなる。

緊急報道対応の中でも1番は、「NHKニュース速報テロップや特設の緊急ニュースを入れるほどではないが、早く報道したいニュース」への迅速な対応を目的としているのではないかと思う。

2時台に関しては、1時台に編成している「列島ニュース」(各地のお昼のニュースを再構成して紹介などする番組。)を拡大する事で対応している。

「ニュースーン」のタイムテーブル

(日によりコーナーの順序が入れ替わる、休止する事もある。)
ここは正直飛ばしてもらって構わない。後述して気になったら戻ってきて見ていいと思う。

3時台
・オープニングトーク
本日のメッセージテーマの紹介など

・ニュースのおかわり
過去に放送されたニュース映像を使い、そのニュースについて解説していく。

・お天気マルシェ
月曜・金曜の3時台と全曜日の5時台に実施。
月曜・金曜の3時台は久保井朝美さん、5時台は黒田菜月さんが担当。(後者は「首都圏ネットワーク」中継のある場所から中継。)

・ミニ番つまみぐい
過去に放送された番組をダイジェストで振り返る。

・かけつけLIVE
アナウンサーがスマホを使って撮影しながら中継する。17時台にも実施。

・おまかせ中継
アナウンサーが何も知らされず中継場所へ行き、番組スタッフから出される「ミッション」(お題)をクリアしていく中継。(番組表では「台本のない中継」と記載されることもある。)16時台中盤、17時台終盤にも実施。

・ネットdeアラカルト
NHKのネット上のコンテンツについて、コント調で説明するコーナー。

4時台
・NEWS日替わりプレート
マーケット情報や記者が選んだニュース(経済中心)を解説していく。

・旬の番組テイスティング
最近放送された番組、される予定のをダイジェストで紹介する。

・蔵出しセレクション
NHKアーカイブスに保存される番組をダイジェストで紹介する。
・おまかせ中継

・おとりよせ@○○(○○には都道府県名が入る。ほぼ南関東)
首都圏向けの番組で放送された特集を放送。

5時台
・ニュース
最初にニュース2項目を紹介、スタジオでの解説も交えながら取り上げる。
その次にヘッドライン形式で数項目程度取り上げる。

・お天気マルシェ
(・スタジオからの天気解説)
・かけつけLIVE

・とくもり!SHOWTIME
大谷翔平選手を中心にスポーツニュースを取り上げる。

・トクシューン
毎月大きなテーマを決めて、それに沿った内容を伝える特集コーナー。

・トークシュン(木曜のみ)
芸能人へのインタビューコーナー

・おまかせ中継

・エンディング
次回予告など

随時、メッセージ紹介などを挟む。


「ニュースーン」の番組構成の考察


タイムテーブルを見てお気づきだろうか。

①「過去番組や過去ニュースの映像の再利用が多い」
②「既存リソースを生かしている」
③「中継コーナーが多い」

①について
主に3-4時台のコーナーは過去に放送された番組やコンテンツをアプローチを変えてダイジェストで紹介しているコーナーが多い。

②③について
関東向け「首都圏ネットワーク」終盤に「おでかけしゅと犬くん」コーナーがある。その中継コーナーの人員をそのまま「ニュースーン」の中継コーナーで使う。
中継コーナーも、専用の機材ではなくスマートフォンを利用して中継するコーナーや台本なしの新たなアプローチによる中継がある。

コストをある程度抑えながらも、アプローチを変えて飽きないようにしているのが特徴的である事が分かる。

前述した事で「つまらない」「単調」と思う方も多いだろう。15時台・16時代はもともと再放送であった。
それを加味しても「生放送だけど再放送。再放送だけど生放送。」と言うのは私個人としては感じる。
元々再放送枠だった時間帯は、再編集を施した番組(純粋な再放送ではない)とスタジオパート生放送の融合で、再編集の番組を流している途中でも場合によってはすぐにスタジオに切り替える事が出来るので、日々発生する緊急報道に対応しているのだ。

とは言え、「NEWS日替わりプレート」「旬の番組テイスティング」のコーナーでは記者や製作者が出演し裏側を語る。
「蔵出しセレクション」では著名人が過去放送された番組に関してコメントをする映像が流す事もある。
経済を取り上げる事も多いので、暮らしに役立つ情報も伝えているので、メディア総局長会見でも触れられていた事を達成している。

この事からも、この番組を始めたのは視聴率目的ではなく緊急報道対応目的だと言う事が分かる。
スポーツや国会中継を優先しつつも、ない時はその対応のためにニュースーンを放送。

緊急報道と言ってもある程度段階があると考える。かなり重要なニュースでは今まででも比較的早く再放送を中断して緊急でニュースを伝えたり、定時ニュースを拡大して対応していた。
『「ニュースーン」のねらいは?』でも述べた、編成をいじる必要性はあまりないが速報で入ってくるニュースに都度対応出来る。再放送に近いコーナーを休止してもその映像は次回以降でも使える。

実例を挙げる。
4月3日の放送では、番組序盤にこの日に起きた台湾での地震を伝え、3時半頃から当時の静岡県川勝知事会見の中継を15分程度伝えた。
これも、2023年度の編成だったらどうなのか。柔軟に編成対応していたかと言われると何とも言えない。

視聴していて、「ニュースーン」が始まっていたから、対応出来たと言ってもいいだろうと思える案件が意外と多い。

少なくとも、各種報道や公式プレスリリースで紹介されていた内容や目的は達成しているのだ。

「ニュースーン」今後の課題など

その、「ニュースーン」の強みが弱みや課題に変わる事もあるだろう。


・アプローチを変えたり、アイデアや工夫(再編集、情報の付加)で乗り切っていて、途中で尽きてしまわないか
ある程度省力化する代償と言ってもいいだろう。
「おまかせ中継」でも、お題(ミッション)が1つ出ていたのが複数出るようになる事も増えてきたと感じる。ただこれは、国会中継などで短縮した時の事も考えて柔軟に対応出来るようにするのもあるだろう。

・スタッフの労力
アイデアや工夫もだが、短縮が多い番組でありその分編成変更による労力はあるだろう。短縮になると1番影響があるのは中継コーナーだろう。「おまかせ中継」「かけつけLIVE」は事前に中継先と打ち合わせしていると思うので、中継の回数が減って内容変更や、突然中止となる事もあるだろう。
その内容変更を見込んで、おまかせ中継のお題を複数用意する事もあると思うがそれも負担になっているかもしれない。
また過去に短縮になり、4:51からの放送になった際は「おまかせ中継」を始める段階でヒントがある程度与えられる事もあった。

・視聴習慣のつきにくさ/番組の継続性
これは「ゆう5時」「きん5時」「シブ5時」などにも言えるが、短縮や休止が多い関係上どうしても視聴習慣がつきにくく、視聴率に繋がらない。
前述した事には反するが、(公共放送なので視聴率を気にしなくていいと思うが)実際は気にしていてもおかしくない。
過去にも複数回、NHKは午後に3時間の生放送枠を展開した事があったがそれも5年以内に終了もしくは放送時間短縮となっている。その過去があり長続きするかがとても不安である。

さいごに

私は、最初は「ニュースーン」に否定的であった。過去の二の舞になるのではないかと思ったからだ。
実際、ほぼ毎回視聴してみて、肯定的な意見に変わった。

平日午後の長時間生放送編成でまた失敗するのでは?思う人も多くまだまだ批判は多いだろうが、長期的に今後も番組を見守っていきたいと思う。

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