私家版・プロ野球ユニフォーム史 2004-2020 Vol.10
【西武ライオンズ→埼玉西武ライオンズ②】
・サード(2013〜2014・2019)
球団名が埼玉西武ライオンズとなったのは2008年。所沢だけでなく埼玉県全域をホームとする球団の姿勢は次第に強まり、2013年にはSaitamaのロゴが入ったサードユニフォームが生まれる。千葉ロッテマリーンズとのライバルシリーズ(埼玉・千葉シリーズ)を中心として大いに活用された結果、2015年からビジターユニフォームとして使われることになる。(※画像はビジターユニフォームの項を参照)
しばらく空位だったサードユニフォームだが、2019年に新たに登場する。ネイビーの地で左袖だけが水色の左右非対称。胸のロゴはSeibu、その上に小さくSaitamaと入っている。どことなく大人びた雰囲気のデザインでありながら、歴代のライオンズを象徴する黒(西鉄)、青(西武)、レジェンドブルー(埼玉西武)の3色を襟と袖口のラインに入れた野心作でもある。
強豪と呼ばれる球団のユニフォームはいつもシンプルで誇りをたたえている。ライオンズはサードユニフォームにおいてもその伝統を守りながら、「山賊打線」と呼ばれる野蛮な攻撃力を秘めて牙を研いでいるようにも感じられる。
・イベント(2007・2008・2012・2014・2015・2019)
ライオンズのイベントユニフォームはいずれも球団・親会社のカラーを守りながら、個性的に発展している。
2007年のサマーユニフォームは前が青、後ろが白という変則的なカラーリング。背番号の下から伸びる赤いラインが特徴で、獅子の牙を表現している。
2008年の交流戦ユニフォームは青を基調として両肩に大きな白い星がついている、通称「テリーマンユニフォーム」。東北楽天ゴールデンイーグルスのTOHOKU GREENなどをデザインした大岩Larry正志氏が携わっている。余談ながら、この年の末にM-1グランプリにてお笑いコンビ・オードリーがブレイク。マンガ「キン肉マン」への愛が深いふたりで、所沢市出身の春日俊彰は応援大使としてのちにイベントの盛り上げ役として球場に駆けつけることになる。偶然ではあるが、縁があったのかもしれない。
西武鉄道創立100周年となる2012年には、車両のカラーリングを模した緑・青・白のユニフォームが公募作品から選ばれた。メットライフドームへ向かう途中に西武鉄道の車体を見て、このユニフォームを思い出すことがよくある。
2014年に登場したのは、マスコットのレオ・ライナを通じてなじみの深いマンガ家、手塚治虫の作品「ジャングル大帝」のユニフォーム。濃い青のアニマル柄に猛々しいロゴと背番号のフォントが印象的。炭谷銀仁朗の応援歌にもあった「ジャングルを追い詰めろ」とはいったい何だったのか、謎は解明されないままだ。
続く2015年には再び西武鉄道の車両のカラーを起用。しかしこのイエローユニフォームは着用した試合で1勝もできず、ゲンの悪さから早々に封印の憂き目に遭ってしまう。この後、特別なイベントは2016年からライオンズフェスティバルズに集約されることになる。
2019年にはこども支援「SAVE THE HOPE」の運動へ賛同し、その意思を表明するためオレンジユニフォームを着用。球団の歴史をさかのぼると、西鉄ライオンズ時代の1968年以来、実に50年以上の時を経てオレンジ色がユニフォームに採用されることとなった。
2020年、チームの愛称がライオンズとなって70周年となるシーズンに記念となるユニフォームが登場。襟にはライオンズブルーとレジェンドブルーのライン。袖口のラインはさらに凝っており、右袖は太平洋クラブ、左袖はクラウンライター時代の異なる赤が加えられている。左袖に入るレオのマークには西鉄・太平洋クラブ・クラウンライター・西武・埼玉西武の「5つのライオンズ」を意味する5色のラインが飾られている。胸のロゴと背番号は所沢移転時のユニフォームのフォント。 背番号はライオンズブルーからレジェンドブルーへのグラデーション。コンセプトとしては昨年のベイスターズの70周年記念ユニフォームに近いものがある。これだけぎっしりと要素を盛り込んでいながら、デザインの邪魔になっていないのがすばらしい。
・ライオンズフェスティバルズ(2016・2017・2018・2019)
夏休み期間のライオンズの大型イベントは、2016年からライオンズフェスティバルズと冠されるようになった。この時期の西武鉄道は沿線住民の集客のため特別に力が入り、駅構内から車内にいたるまでイベントの広告一色に染まる。
まず2016年に着用したのは、狭山丘陵の緑が湖面に映りきらめく風景を連想させる、通称「エメラルドユニフォーム」。2017年は赤く燃える炎をデザインした、通称「炎獅子(えんじし)ユニフォーム」。2018年は青空に舞う夏風のイメージの、通称「獅子風流(ししぶる)ユニフォーム」。この3年間のカラーは、球団の応援歌でもある松崎しげるの“地平を駈ける獅子を見た”の歌詞になぞらえたものでもある。おそらく偶然などではなく、しっかり準備してきたのであろう。球団のプロデュース能力は讃えるべきだ。
令和元年となる2019年は新時代の王者をつかむコンセプトの、通称「令王(レオ)ユニフォーム」。鱗のような模様は獅子のたてがみ、そしてライオンのLの字を表現している。なんといってもこのユニフォームといえば、サヨナラ弾となる400号ホームランを放った中村剛也が強烈なインパクトを残している。
このイベント開催中の期間はシーズンのターニングポイントとなる試合が多くなる。球場の楽しさ、野球のおもしろさをファンに伝える役割の一端も、このユニフォームたちが担っているのかもしれない。
【西武ライオンズ→埼玉西武ライオンズ③につづく】
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